表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/448

迷宮最奥の女神像

 ゴブリン王、普通のゴブリンの倍の大きさはあり、武器も棒の代わりに剣を持っている。

 その周りにはゴブリンが5匹いるおかげで、ゴブリン王の凄さがよくわかる。


 こいつは絶対にあれだ。見た目の劣る友達だけと一緒に行動することで、自分を際立たせようとする奴だな。

 友達を友達と思っていないタイプだ。


 ゴブリン王とゴブリンの間に元から友情の関係はないだろうが。


「スラッシュ!」


 相手は動く気配がないので、早速スラッシュを使ってみた。だが――スラッシュはゴブリン王に届く前に――扉の付近で消滅。

 ゴブリン王とゴブリン達はニヤニヤして俺を見ていた。


 なんでだ?


「プチファイヤ!」


 MPが十分にあるのを確認して、今度は扉の外からプチファイヤを放つ――がこちらも扉の辺りでプチファイヤが消滅してしまった。


【イチノジョウのレベルが上がった】


 魔法を使ったことにより見習い魔術師のレベルが7に上がったのはいいが。やっぱり遠距離攻撃が通用しない。


 今度はアイテムバッグから、盗賊から貰った弓矢を取り出して矢を放つ。

 矢は、やはり扉の境目で停止し、その場に落ちた。


「ご主人様、申し訳ありません、気を失っていたようです……ボスへの攻撃は、ボス部屋の外からの攻撃は無効になります」


 目を覚ましたハルが説明をしてくれた。酔うのも早いけれど醒めるのも早いな。

 

「ですので、中に入ってからでないと攻撃が通用しません。また、中に入ると10秒後に扉が閉まり、中の魔物を全員倒すか、私たちが二人とも死ぬまで扉は開きません。なので、一緒に入りましょう。ちなみに、ボスも私達が中に入るまで攻撃をしてきません」


 あぁ、確かにゴブリン達は俺を凝視しているが、一歩も動こうとしていないな。そういうことなのか。

 危ない危ない、ハルが目を覚まさなかったら一人で入るところだった。

 とりあえず、落ちた矢は回収しておく。


「じゃあ、せーの、で入るから、俺が左のゴブリンから、ハルは右のゴブリンから攻撃をしよう!」

「はい」


 作戦が丸聞こえだと思うが、まぁゴブリン相手だし別にいいだろう。あいつらが俺の言葉を理解していない可能性も高いし。

 そして、俺は「せーの」と言うと同時にボス部屋に入り、


「スラッシュ! プチファイヤ」


 とスラッシュを使い、ゴブリンを1匹撃破。と同時に、右手を前に出して唱えたプチファイヤでももう一匹を撃破した。

 レベルアップコールは来ない。経験値が入るのは全ての戦闘が終わってからか。


 その間に、ハルは3匹のゴブリンを倒していた。流石は速度特化の獣剣士だな。ゴブリン王は剣を抜き、こちらに攻撃してこようとするが、遅すぎた。ハルが一人で倒せるのも頷ける。


 俺の剣がゴブリン王の首を斬り落とした。

 それで終わり。わずか10秒の勝負。スラッシュの再使用時間を待つ必要もない。これなら一人で入っても問題なかったな。


【イチノジョウのレベルが上がった】

【剣士スキル:スラッシュがスラッシュⅡにスキルアップした】

【見習い魔術師スキル:水魔法を取得した】

【職業:見習い錬金術師が解放された】

【職業:拳闘士が解放された】

【木こりスキル:伐採が伐採Ⅱにスキルアップした】


 よし、拳闘士が解放された。早速木こりを拳闘士にしておこう。

 それにしても、無職のレベルが本当に上がりにくくなった。ボスを倒しても1しかレベルアップしていないのか。


「ご主人様、獣剣士のレベルが3になりました」

「おぉ、おめでとう」

「本来は、初心者迷宮でレベル3になろうと思えば早くても3日はかかるのですが、これも御主人様のおかげです」


 いや、俺のおかげじゃなくて、あくまでも天恵のおかげなんだけどね。

 あと、辺りには魔石とゴブリン棒、そして、剣が残った。

 ゴブリン王が使っていた剣か。


「ゴブリンソードですね。滅多に落とさないのですが運がいいです」

「良い武器なのか?」

「ゴブリンを服従させる力がある魔剣です。剣としての性能はあまり良くありません」


 それは、便利なのか? ゴブリン王を倒せるのなら、ゴブリンをわざわざ服従させる必要もなく瞬殺できると思うが。

 まぁ、貰っておこう。使い道がなくても売れるだろう。


「では、ご主人様、奥の部屋に行き、女神の像に祈りましょう。そこでクリア報酬を貰えます」

「え? 女神の像?」


 部屋の奥の扉が開いていた。

 そして、俺はそこで見た。


 女神の像を。


「成長の女神コショマーレ様の像です」

「……忠実だなっ!」 


 思わず叫んでいた。

 目の前の像は、どう見ても俺に天恵をくれたオーク女神様だった。

 え、普通、こういう女神の像ってかなり美人に仕上げるものじゃないの?


 偶像崇拝もここまで来たら嫌がらせだろ、とか思ってしまう。


「そういえば、異世界からこの世界に来られた方は全員、女神様のご尊顔を拝見することができるとか。ご主人様はコショマーレ様から天恵を授かったんですか?」

「……あぁ、このオー……女神様から取得経験値20倍を貰ったんだ」

「やはりそうなんですね。コショマーレ様は、成長の女神。豊作の女神でもあり多くの方から信仰されています」


 豊作の女神か。確かに、豊作になってもらわないと食べ物に困るもんな。

 豊漁の女神も兼ねているのか? と訊いたら、それは別の女神らしい。


「子供みたいな姿の女神様もいたんだが、知っているか?」

「子供の姿をなさった女神様は二柱いらっしゃいます」

「金髪ツインテールの女神様」

「それでしたら、トレールール様ですね。享楽の女神様です。楽に生きることを良しとし、ギャンブルの女神でもあります」


 あぁ、確かに遅刻してくるあたり、マイペースだったな。神自ら楽に生きている感じだ。必要経験値1/20というのも自分で戦わずにパワーレベリングをしてもらうときに便利だから与えることができたスキルなのだろう。


「で、この女神像に祈りを捧げたらいいわけか」

「はい」


 よし、まぁこの女神さまのおかげで、本来なら死んでいるはずなのにこうして第二の人生を歩むことができたわけだし、心を籠めて祈ろう。


 俺は膝を突き、両手を合わせて女神に祈った。


 すると、突然意識が朦朧としていき――


「よう、久しぶりだね」


 目の前にオーク……じゃない、コショマーレ様がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ
OSZAR »