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聖都魔術学院に革命を

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 皆が固まる中、ストラスが小さく呟く。


「……そういう解決方法で良いのか」


 ストラスがそう言うと、固まっていたローズがふっと息を漏らすように笑う。


「……私も自分で変わり者だと自覚していたけれど、貴女はもっと変な人ね。本当、面白い人」


 そう言って笑うローズに、皆が顔を見合わせた。


「……と、とりあえず、魔術学院に行きましょうか」


 何故かエライザもまるで話を変えようとしているかのように話題を振ってくる。不思議に思いつつ、本日の予定は魔術学院に行くことだったと思い出した。


「そうですね。では、全員で魔術学院に行きましょう」


 私がそう言うと、アイル達も喜びの声を上げる。


「やった!」


「今回はじっくり見て回れますね」


「楽しみ!」


 素直に喜びの声を上げるアイルに、大人達は笑いながら頷いた。





 ディアジオに直接許可をもらい、更には学院長たるバルブレアにも好きにして良いと言われている為、私は一先ず初級の魔術の講義を見てみることにした。ちなみにローズは学院に行くのは止めておくと言って王城に残っている。


 学院に着くと、ストラスやエライザは自分の得意な魔術の講義を見てみたいと言い、コート達は講義に参加してみたいと口にした。その為、それぞれじっくり講義を見て回り、コート達には実際に講義を受けてもらうことにする。


 一方、私はせっかくなので各教室での講義を受ける生徒の様子を見て回ることにする。


「どうでした?」


 講義が終わったら生徒に内容について感想を求めることにした。今は初級の土の魔術の講義中を受講したコートの所に来ている。周りには近くで講義を受けたアイルとストラス、エライザもいる。


「魔術の基礎はやはり同じですね。ただ、実践が少なく、知識ばかり教えている印象を受けます」


 コートが控えめに答えると、アイルが肩を竦めて首を左右に振った。


「単純に教えられる先生が少ないですよ。なんででしょう? 中級以上の魔術が使えたら初級魔術は普通に教えることが出来そうだけど」


 不思議そうにそう質問するアイルに、ストラスが代表して答える。


「問題は研究のレベルだ。研究が進んでいないから生徒に教える際に細かな部分まで説明することが出来ない。説明が不十分だから、まだ知識や魔術の感覚が薄い生徒には理解が出来ない。結果、上級まで使える魔術師が増えない。悪循環だな」


「フィディック学院については各国から魔術への探究心が高い教員が集まってますし、グレン学長が実践での学習を推奨していますから、とても良い研究環境なのでしょうね」


 エライザもストラスの意見に同意を示した。


 成る程。逆に考えるなら、研究や学習の仕方を変えれば魔術の理解は深まるということだろう。


 それならば、変えるべきは教員からか。


 そう思い、バルブレアを訪ねて一つお願いをした。その内容に、バルブレアは目を輝かせて「面白そうだから見学にいこう」と言われた。とりあえず要求は承認されたようだ。


 場所は聖都で最も広いとされる広場を提供してもらった。昔は闘技場だったらしく、周囲に頑丈な石壁もあり、とても今回の目的に適していると思われる。地面は踏み固められた土と砂利のようで、小規模な魔術ならば問題なく使えるだろう。


 広場の入口近くにはバルブレアとアウォード、クラウンの三人が立ってこちらを見ており、私の後方にはストラスやエライザがいる。遅くなるかもしれない為、シェンリー達は王城へと先に帰らせている。


 と、しばらくして教員達がぞろぞろと入ってきた。入り口に立つバルブレア達に驚いたり挨拶を交わしたりしながら、二十人ほどの教員が広場の中心に歩いてくる。


 教員達は私のことに気がつき、怪訝な目をした。


「……これは、何の集まりでしょうか」


「我々に何の用が……」


 質問されて、私は軽く頭を下げて口を開く。


「急な御呼び立て、申し訳ありません。メイプルリーフ聖皇国の皇帝、ディアジオ陛下より依頼があり参りました」


 そう前置きすると、ぴたりと皆の動きが止まった。国のトップからの依頼と聞けば無視は出来ないのだろう。


 不安そうな者、疑わしそうに見る者、様々な反応が返ってくる。それを軽く見回しながら、本題に入る。


「今日集まっていただいたのは、僭越ながら私が皆さんに魔術の応用や研究の考え方について教える為です。予定としては二週間、毎日勉強会をするつもりですので……」


 説明をしていると、不意に中年の男が眉根を寄せて口を開いた。


「ちょっと待ってくれ。こっちはあんたの実力も知らないんだ。フィディック学院の上級教員らしいが、そんなに若いのに俺達に教えるほどの魔術師だとでもいうのか」


 男がそう言うと、他の教員からも似たような意見が出る。


「確かに、まずはそちらから魔術を見せるべきだろう」


「我々に魔術の指導をするという名目で、メイプルリーフの魔術を盗むつもりじゃないか?」


 そんな声を聞き、私は手のひらを見せるよう片手を挙げた。


「ご安心ください。メイプルリーフの魔術ならば多少学びました。なので、私が教えるのは基本的に新しい魔術ばかりです」


 そう告げると、途端に押し黙る。他国の者同士でお互いに魔術を教えるといったことが一般的ではない為だろうか。半信半疑ながら、興味津々といった様子だ。


 しかし、一人だけそれでも納得していなそうな表情の者がいた。


 白髪の入り混じった小柄な男だ。少し垂れ気味な目で、こちらを睨むように見ている。その男は目が合うと、深い溜め息を吐いて口を開いた。


「……私は上級教員のヒネクだ。こちらからも質問があるが、良いかね?」


「どうぞ」


 答えると、ヒネクと名乗る男は突然魔術の詠唱を始めた。どうやら氷の魔術のようだ。周りの者達も慌ててヒネクから距離をとる。


氷の尖塔(アイススパイア)……!」


 ヒネクが魔術を行使すると、私とヒネクの中間ほどの位置の地面が白く凍りついていき、先が鋭利な氷柱が地面から突き出てきた。


 三階建ての建物にも匹敵する巨大な氷柱に、同僚であるメイプルリーフの教員達の方が驚きの声をあげる。


「流石はヒネク殿」


「これだけの魔術、他国でも中々使える者はいまい」


 そんな声を聞き、私も頷いて答える。


「確かに。とても優れた魔術だと思います。しかし……」


「しかし? しかし、何だと言うんだ」


 私の言葉に、怒気を孕んだ声が返ってきた。最初から想定していたが、言葉では納得しないだろう。


 そう思って口を開いた。


「しかし、詠唱の時間や、魔術発生の時間が勿体ないと思います。氷の大塔(アイスタワー)


 言いながら、無詠唱で氷の魔術を行使する。直後、先に立っていた氷柱を内部から破壊し、一回り大きな氷柱が出現した。


 クラウンの時と似たような状況になった。既視感を感じて微笑みながら、私はヒネクを氷柱の傍から見た。


「まずは、無詠唱での魔術行使を教えたいと思います。その習得が出来た人は、魔術具の研究について教えます。いかがでしょうか?」


 確認するようにそう尋ねると、ヒネクと一緒に、他の教員達も目を丸くして固まっていた。


 その向こう側ではバルブレアが豪快に口を開いて笑っていた。




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[良い点] 最新部までササーっと拝読しました。文章読みやすくて内容も楽しませて頂いてます。グレン学長が一番のお気に入りです! [気になる点] 別の感想にもあったかもしれませんが、学園や研究所、行政府な…
[一言] 作者様の別作品から来ましたがこれ、読むことに夢中になり時間を忘れますね。 読み易く簡潔で尚且つ豊かな描写でもったいなくて読み飛ばすことも無く素晴らしい。 個人的な感想としてはランキング上…
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