人型ロボは男のロマンだが異形型もそれはそれで
ガンダム好き。やっぱ人型っていいよね、男のロマンだわ。
ZOIDS好き。機械生命体とか燃えるに決まってんだよなぁ。
AC好き。装備考えるのホントすこ。ネタアセンもガチアセンも等しく尊い。
結論:ロボはいいぞ。
はい、てなわけでやってきました『インフィニティ・レムナント』通称IRの世界。
見てくださいこの荒廃しきった世界。廃墟が立ち並ぶ旧市街地で怪しげな工場やプラントがガンガン黒い煙吐き出してますね。いやー、大気汚染大気汚染。体に悪そうったらありゃしません。環境が死んだ世界で生きていくには地球を死体蹴りし続けるしかないというどん詰まりの体現っすな。
IRの世界観はロボゲーでよくある、行き過ぎた戦争で世界が殆ど滅んだ世界。劣悪な環境で作業するために、前時代の遺物であるレムナントと呼ばれるロボットを掘り起こして使ってるわけだ。ほぼロストテクノロジーであるレムナントは新規機体が作られることは珍しく、その辺に散らばっているパーツをかき集めて修理して使ってるってわけね。
そんな、本来作業用ロボットであるレムナントが軍事転用されるのに時間はかからなかった。つーか、前時代に終焉を告げたのがそもそも大量殺戮用のロボットだったわけだし、当然っちゃ当然。レムナントはそれらを何とか動くようにしただけ。
さて、この世界におけるプレイヤーとはズバリ傭兵。武装レムナントで決闘の代理から施設破壊から何でもやるわけだ。昨日の敵が今日の味方だったり、その逆だったり。依頼内容と依頼主を選別することで特定のエンディングを迎えたりできるらしいが、さて。
一通りチュートリアルを終わらせ、パーソナルスペースへと送られてきたんだが、いやースゴイ。
ハンガーに初期機体として選んだ、全長10メートルほどでやや細身の人型レムナントが格納されているんだけど、ド迫力だなぁー。なんか意味もなくワクワクすっぞ。やっぱロボはロマンだわ。さっきまでこれに乗って置物相手に操作練習してたんだよなあ。
コクピットもやたらとボタンあったりトグルスイッチあったり、かと思えばタッチスクリーンあったりもうなんだこれ状態。しかもコクピット内も自由にカスタマイズできるそうですよ奥様。
「ここが俺のガレージ、俺のレムナントか。……で、普通に青も立ち入れるんだな」
「フレンド限定だけどね。パーツ盗んだりできないし。合意の上での譲渡や売買ならできるけど。それはそうと初期機体はフロンティアを選んだんだね。遠近揃った装備で中量級の人型、ザ・スタンダードって感じだよね」
右手にアサルトライフル、左手にはレーザーブレード。背中には翼のような形でブースターが一対生えていて、右腰にはやや小ぶりなハンドガンが、左腰にはレーザーライフルがマウントしている。
絵に描いたような人型ロボットであるこのフロンティアは、初期機体として選べる4機のうちの一つ。とりあえず困ったら選んどけと言わんばかりの見た目だったので選んだ。四つ足のケンタウロスみたいなのと悩んだが、どうせ最終的にはカスタマイズされて影も形もなくなるだろうしどうでもいいかとなった次第だ。
「で、ここからどうすればいい?」
「とりあえず現時点じゃフレンドコードをリアルで教え合える人以外会えないし、アリーナまでシナリオ進めよう。そこまで行けばランカーの彼女とも接点持てると思う。それに試合に勝たないと話を聞く耳持たないみたいだし」
確かに。友人の優芽が言ってダメなのに、ほぼ他人の俺らが話しかけても門前払いだろう。いきさつは事前に話すにしても、試合に勝たないと説得は無理臭いよな。
妹の頼みだからやるけど、引きこもり系女子高生に説得を試みるとか考えただけでも吐きそうなんだけど。説得自体は優芽がやるそうだけどそこまでもっていくのに無言で挑戦状叩きつけるわけにもいかないし。
優芽も一日二日でどうにかなるとは思ってないみたいだし、俺たち側にも日常生活がある。まあ、明日から大型連休で一週間ほど暇だけど。
ひとまずはゲームに慣れて対人戦をしても恥ずかしくない程度にならなくては。少なくとも、イキり初心者がランカーに喧嘩売ったくらいで済むくらいにはなりたい。相手してる側が「うわぁ……」ってなるほどの下手くそでは話しかけるのも恥ずかしいし。
「パーツ集めるのにもお金かかるし、アリーナ前に稼ぎミッションがあるから、そこを中心的に回ってカスタマイズの幅を広げよう。当然、シナリオを進めたりしないと強力なパーツは手に入らないしね」
青の言葉に頷く。
まあそりゃそうでしょう。初期装備がは〇れメタルの剣の勇者がどこにいるってな。だんだん強くなっていくからゲームは楽しいんだ。買ったばかりのゲームに最初からチートコードぶっこむ奴はそれもうゲーム楽しんでないから。そういう趣旨のゲームもないこともないけど。
つーわけでシナリオ進めまっしょい。青は一通りシナリオ終わらせているので、一足先にアリーナで情報収集してくれるそうな。いやなんかすいませんね、うちの妹が。
解散した俺たちは、それぞれ行動を開始した。目指すはアリーナ、対人戦の本拠地。うっ、持病の知らない人とコミュニケーションとりたくない病が発作を起こしそうだ……。
廃墟が立ち並ぶ荒れ果てた市街地。かつてはたくさんの車が走り、大勢の人間が忙しなく行き来していたであろう道路に人影はない。
その誰もいない道路にズシン……ズシン……と重量物が道路を僅かに沈ませながら移動する音が聞こえる。
音の発生源は全長10メートルを超える巨大な人型のレムナント。右腕にはマシンガンと思われる銃を持ち、銃口を視線に合わせながら周囲を警戒しつつ、半壊したビルの森を進んでいる。
その歩みはまるで何かから隠れているかのよう。背部に存在を主張する推進器が火を噴くこともなく、牛歩の如き遅々とした速度である。
メインカメラとレーダー及び各種センサーを搭載した頭部は周囲の音や熱源と言った情報を集める重要な部分であるのだが、この機体はその頭部の右半分が吹き飛ばされている。
見ればボディのあちこちに銃撃の跡が残っており、左腕は肘から先がない。そのダメージと行動から、この機体が戦闘状態にあることはだれの目にも明らかだった。
建物の間を縫うようにして移動していたその機体が十字路に一歩踏み出した瞬間、高速で飛来した弾丸が胸部に直撃。胸部中心に位置するコクピットを撃ち抜かれることこそ無かったが、もともとダメージによってバランスが悪くなっていたボディが衝撃で大きく揺らぐ。
反射的に推進器を噴かそうとしたものの、二度三度とどこからか放たれた弾丸が両脚を撃ち抜いた。
自立することもままならなくなったレムナントはついに膝をつく。そして十秒ほどの沈黙の後、一条のレーザーが正確にコクピットを狙撃。数秒の沈黙の後、レムナントは爆発炎上した。
炎上するレムナントからかなりの距離を隔てた廃墟ビルの屋上。そこでは、四対の脚と人型の上半身を持つ、巨体を誇る人蜘蛛形のレムナントが狙撃銃を構えていた。
その巨体と比較してなお大きいスナイパーライフルを左腕部に、右腕部で保持しているのは同じような大きさのレーザー式スナイパーライフル。
反動を抑えるために八足それぞれが床に打ち込んでいたパイルを引き抜く。屋上に八つの穴が新たに増えたが、いまさらそれをどうこう言う者はいないだろう。
ぐるり、と周囲を見渡し、敵機の反応が無いことを確かめてから狙撃の構えを解き、移動の妨げになる二丁の大型狙撃銃を蜘蛛部分の背中に固定する。
あくまで移動の補助でしかない最低限のブースターしかないため、ガションガションと音を立てながら八足のレムナントは垂直にビルの壁面を下りていく。速度はともかく、走破性は高い様だ。
武器も持たず黙々と高層ビルを降りるその姿は、撃破した相手には興味もないと言うかのようだった。