おい、いつから親友になったんだよ
ラスタール村。
その入り口にて。
突如現れた王国軍の兵士たちに、レイミラ第二王女は一歩も引いていなかった。
さすがは、かのレイファー第一王子に厄介視されるだけはある。レイミラの胆力は、一般人のそれとは格が違う。
――あれなら、僕が手助けをするまでもないだろうか。
「ギルドの意向については、先ほど本拠地から通達があったばかりでしょう」
レイミラはなおも冷たい声で言い放つ。
「構成員も《黒い石》もこちらで預からせていただきます。それがすべてです」
「……そうですか」
フォムスは一瞬だけ目を瞑ると、鋭利な眼光を僕たちに走らせた。
「黒の石については仕方ありませんね。ギルドは巨大な組織ですから、その意向を無視することはできません」
「…………であれば、他になにを?」
「なあに。簡単なことです」
フォムスは口の右端だけを吊り上げると、さぞ愉快そうに笑った。
「前述の通り、《黒の石》はとても危険な代物。いつ暴発するかもわかりません。ここは住民の方々の安全を考慮し、我々が近辺を監視させていただきたく思います」
「…………」
数秒間だけ黙りこむレイミラ。
「なるほど。そういうことですね」
あくまで無表情を貫くレイミラだが、その微妙な変化を、僕は見逃さなかった。
怒っているな。
間違いなく。
フォムスにしてみれば、影石の引き渡しを拒否されることは想定のうちだったはず。
だから村の近辺を監視することで、僕たちの動きを封じるつもりだ。
こればっかりはギルドに拒否権はない。あくまで建前上は村人の安全確保だし、そもそもここはアルセウス王国の領土。ギルドがとやかく言える範疇を超えている……
「フォムス閣下。それはあなたの判断ですか」
「いいえ。レイファー王子殿下の命でございます」
「お兄様の……」
「特に――」
フォムスの嫌らしい目線が僕を捉える。
「聞くところによれば、そこのマクバ殿が《黒の石》を確保しているのだとか。彼の護衛を最優先とさせていただきたいですな」
――なるほど。
これは牽制だ。
アルセウス救済党の本拠地がバレたことで、レイファーは間違いなく僕の動きを警戒している。
だから僕を監視することで、それを防ごうとしているんだ。早急に軍が動いたのはそのため。
――レイファー第一王子……思った以上のやり手であると言わざるをえまい。
どうする。
なにか良い抜け道はないか……
僕がそう考えた瞬間――
――――――
受諾。受諾。
女神より下記の伝言が届けられております。
チートコード操作を用いて、「%$####&」を発動してください。お願いします。
――――――
「は……」
見覚えのあるメッセージが視界に浮かび上がってきた。
この土壇場で、あの意味不明な能力を使ってほしいということか。
「いったいなぜ……?」
まったく意図が読めないが、あの女神のことだ。大事な意味があるに違いあるまい。
スキル発動。チートコード操作。
選ぶ能力は――%$####&。
心中でそう唱えた瞬間、僕の隣に薄い靄が発生した。
どうやら何者かが現れるっぽいが――いったい誰が……
「なっ……!」
そしてその人物を見たとき、僕は思いっきり目を見開いた。
「あ、あなたは……!」
「ふぅ。久々に解放された気分だな」
「な……!!」
「おいおい、あれって……!!」
「嘘だろ……!?」
さっきまで沈黙を貫いていた兵士たちでさえ、闖入者の姿に驚きの声をあげている。
「ふふ。こうして話すのは初めてになるかな。アリオスよ」
国の創始者たる初代国王――オルガント・ディア・アルセウスは、僕を見てきさくに笑う。
「ま、まさか……あなたは……!」
「なあに。こういうときこそ余の出番というもの。任せておけ、親友よ」
おい、いったいいつから親友になったんだよ。
「な……なな……!!」
そして当然のごとく、フォムスもぎょっと目を見開いていた。
「う、嘘だろう……! あなたはまさか……!」
「武器を収めよ者ども! それが余に対する礼儀か!!!」
「イ、イエス・ユア・マジェスティー!!」
なんと。
オルガントの熱気により、すべての兵士たちが即座にひざまずいた。
「は……はは……」
やばい。
あれはやばい。
オルガントは歴史上の人物だし、常識的に考えれば、誰もが彼の正体を疑うはず。
だが――それさえも許さないほどの圧倒的な風格がオルガントにあった。
「あ、ありえない! どうして初代国王様が……!!」
いまだ放心するフォムスに、オルガントは低い声で告げる。
「そちらは機密事項とさせていただこう。そなたたちがなぜ、黒い石の正体を知っているのかと同じようにな」
「ぐぬ……!!」
表情を歪めるフォムスだった。
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