卒業まであと僅か、双子の弟(※ガチムチ)と中身が入れ替わりました。
※なろラジ作品です。
【使用キーワード】
紙飛行機/卒業/ルームメイト/寝言/散歩
「私達、」
「入れ替わった?」
私ビビと双子の弟ロンの身体は入れ替わった。森へ散歩に出掛けた際に、弟が祠のお供えモノに手を出した後のこと。
「これは呪いに違いねぇ!」
「バカー! どうしてくれるの?!」
学園卒業まであと三ヶ月。
タウンハウスから通っている私はいいが、騎士科の弟は寮。
弟はルームメイトの魔法騎士、エディに手紙を書くと言う。
【勉強をし過ぎて体調を崩した為、フォローよろしく】
「事情は話さないの?」
「気を使わせるだろ」
魔法で紙飛行機にし寮の部屋まで飛ばすと、私は弟として寮へ戻った。
「おかえりロン、身体大丈夫? 俺がついてるから心配するなよ」
「う、うん」
馬鹿だが明るい弟は好かれており、周囲も楽しい人ばかり。男集団の粗雑なところや乱暴さには困ってしまうこともあったが、エディがさりげなく助けてくれた。
事情を伏せたあの杜撰な手紙だけなのに、気遣いが凄い。おかげで入れ替わりは意外にも快適だった。
学園を楽しいと感じたのは初めて。
婚約者のボブはいつも別の子を侍らせている。注意をしても『嫉妬は醜い』などと言われてしまい話にならない。周囲からは嘲笑され、惨めだった。
そんな学園生活……家族には言えなかった。
幸い弟は気付いていないらしく、相変わらず締まらない表情。私の顔だけど。
「呪術師に診て貰ったんだけど、卒業あたりで呪いは勝手に解けるって」
「そうなの?」
「それまで割り切って互いに楽しもーぜ!」
「……そんな言葉使いしてないでしょうね?」
「アラ失敬ね!」
弟の振る舞う私が心配だが、この際楽しむことにした。
卒業の少し前、弟に呼び出された私とエディは中庭へ向かった。
そこには私の姿の弟と、ボブと彼の腕に引っ付く女の子……と何故か生徒会の方々が潜んでいる。
「ビビ! 君との婚約を破棄する!!」
これはもしや……
暫く黙って話を聞いていた私だが、不貞の言質をとるや否や、
「せいやっ!」
「ほぶゥッ!?」
ボブを殴り飛ばした。
「ああっやっぱりー!?」
駆け寄ったところで、意識が途切れた。
──目覚めた時には卒業式当日で、元の姿。
「婚約は!?」
「なにそれ寝言?」
入れ替わりの話も『悪夢でも見たんじゃない?』と弟は笑う。
戸惑いながらも私は卒業用のドレスや小物で飾り付けられた。
入れ替わりは呪いなんかじゃなかったのだ。
『悪夢』で強引に終わらせる気の弟が窓の外を見て言う。
「来てるよ、婚約者」
外を見る。
日差しの下で、エディが手を振っていた。