30話 錬金レベリング
「オルトただいまー」
「ム!」
「これを植えてくれ」
俺はオルトに痛撃草と雑草の種を渡した。いつもの如く、株分で種に戻した痛撃草を畑に撒いてくれる。よし、畑はこれでいい。
さて、お次は錬金&調合祭りだ! ワッショイワッショイ!
「最初は……料理から試してみようかな。サラダとか作ったことないし」
料理のレシピからサラダを選択し、システムに従いホレン草、青ニンジン、橙カボチャを刻んでいく。そして、まな板に魔力を流せば完成だった。
名称:サラダ
レア度:1 品質:★4
効果:満腹度を20%回復させる。MPを4回復させる。クーリングタイム10分。
これは良いものだ! MPが回復するぞ。最近前線で出回り始めたというマナポーションに比べたら微々たる物だが、食事で回復するのはデカイだろ。
「もう一つ作ろう。材料がもう1つ分しかないからな。とりあえずオートで無難に行っとこう」
お次はいよいよ錬金のレベル上げだ。
「じゃあ、毒草と毒草を錬金台に載せて――合成!」
MPが1消費され、錬金台が光り輝く。そして、2つ載っていた毒草が1つになっていた。
「ちゃんと品質が★2になってるな」
次も★1の毒草同士を合成し、★2の毒草を作る。そうやって合成を続け、30あった毒草が★2の毒草15個に変わった頃、俺の錬金スキルはLv3になっていた。
しかも、基礎レベルと職業レベルも1つずつ上がり、5となっている。生産でも経験値が入るというのは本当だったか。
「順調だな」
今度は★2毒草を合成だ。
錬金台が光り、合成は成功だ。だが、台の上に載る毒草の品質は★2のままだった。掲示板情報によると、同種合成で品質を上げるには元となるアイテムに、品質の2乗相当の数を合成する必要があるらしい。
なので、★2を★3に上げるには、あと3つ★2毒草を合成する必要があった。鑑定で判別することは出来ないが、マスクデータには★2の毒草を合成した物であると記されているはずだ。
品質が違う物同士の合成はさらに複雑になるので、掲示板を読んでも正直理解しきれなかった。それを自力で解き明かそうっていうんだから、解析クランって変態の集まりだよな。
そのまま合成を行っていくと、予定通り4つめの毒草を合成したところで、★3の毒草を生み出せていた。
途中でMPが尽きそうになったのでサラダで回復しつつ、★2の毒草15個を、★3の毒草3つに変える。サラダを作っておいて良かった。
「錬金のレベルが7まで上がったな。お次は麻痺草だ!」
そう思ったんだが、MPが0である。錬金をやりまくったからな~。マナポーションもないし、サラダじゃ4しか回復せんからね。
「仕方ない。1回ログアウトしよ」
リアルだとちょうど飯時だし。ログアウトして飯を食って戻ってくれば、MPも自然回復しているだろう。
リアルで30分後。スパゲッティを喰い終わった俺は、再ログインしていた。
「よし、MPは満タンだな! 予定通りだ」
毒草と同じように錬金を繰り返す。最終的に品質が★3の麻痺草が3つ出来上がった。
「おお、錬金のレベルが10に上がったぞ! ついに大台に乗ったな!」
ゲームを始めた時は従魔術よりも錬金の方が先にLv10に到達するとは思っても無かったけどな。日々少しずつ熟練度が上がってはいるが、未だに従魔術Lv6、使役Lv4だ。
「……新しいアーツは乾燥か」
そう、乾燥だ。なんと乾燥には錬金のアーツが必要だったのである。乾燥実験に失敗した後、掲示板を見て愕然としたね。完全に無駄だったわけだし。いや、違う。無駄じゃないぞ。自分で考えて色々試すことが大事なのだ。まずは実験してみて、失敗したら掲示板を見る。それこそが正しいゲーマーの姿と言えるだろう。全部事前情報を調べるなんてつまらないだろ?
だったらそもそも掲示板を見るな? 全部自分でやれ? それは、あれだ。ごめんなさい。全て知るのはつまらないが、全く答えが見えない状況もまた辛いのです。
「ムム?」
「おっと、何でもないよオルト。ちょっと色々葛藤があっただけだ」
新アーツ乾燥、早速使ってみようかな。このあとオルト用の蜜団子を作るつもりだったので、使う食用草に乾燥を使ってみる。
「では――乾燥!」
すっげー地味だった。食用草が淡く光る。それだけだ。だが、鑑定してみると確かに乾燥食用草となっている。
名称:乾燥食用草
レア度:1 品質:★5
効果:満腹度を5%回復させる。クーリングタイム、10分。株分けできないが、素材使用時の効果が上昇している
「じゃあ、これにハチミツを混ぜると――?」
名称:蜜団子
レア度:1 品質:★6
効果:従魔用食事アイテム。プレイヤー使用時、満腹度6%回復。クーリングタイム10分。
成功したが、品質が高くてもあまり意味がないかもしれん。結局、オルトにあげる訳だし。オルトには満腹度とか関係ないもんな。
まあ、品質高い方が得られる経験値が多いし、スキルのレベル上げと思って高品質を狙って行こう。
俺はその後オルト用の蜜団子を4つ作りあげていた。素材はもっとあったんだけどね。色々試してみたら、結構無駄にしてしまったのだ。だって、ハチミツを火にかけたらゴミに成るとは思わないじゃないか。水を混ぜても失敗だったし。ホレン草を混ぜても失敗だった。どうやら蜜団子の改良は難しいらしい。
一番の収穫は、スキルレベルのアップだろうな。調合:Lv11、料理:Lv10、錬金:Lv10まで上がっている。調合、料理でアーツは覚えなかったが、その代わりレシピが解放された。
調合は下級マナポーション、アンチドート、アンチブラッド。料理は串焼き、木の実クッキー、スープの3種類だった。料理のレシピは特定の素材というよりは、組み合わせの示唆のような感じだ。スープのレシピは、水、食材、食材というアバウトなレシピだし。ただ、オートで作れるようになったのは大きいだろうな。
「さて、この後はどうしよう」
また露店を巡ろうかな? プレイヤーズショップを見て回って、株分できそうな草を探すのだ。ソーヤ君の店で見た睡眠薬の材料や、未知の野菜などが欲しい。そう思って町を歩いていた俺は、ある露店の野菜に目を引き付けられていた。
「これって……野菜ですか?」
「はい、そうですよ」
「初めて見た」
名称:乾燥キュアニンジン
レア度:2 品質:★3
効果:満腹度を4%回復させる。HPを7回復させる。クーリングタイム、10分。株分けできないが、素材使用時の効果が上昇している
俺も青ニンジンを育てているが、これはレア度2だ。しかもHP回復効果があるし、これを素材に使ったら色々と面白そうだ。
乾燥状態なのが本当に残念だな。これじゃあ株分ができない。俺はこの野菜を売っているお姉さんに思わず尋ねていた。
「これって農業ギルドのランクが上がったら、種を買えるんですか?」
「いいえ、買えませんよ?」
「じゃあ、どうやって……?」
「ふふふ。秘密と言いたいところですが、特別に教えてあげましょう。この野菜は、農耕スキルのLv10で獲得可能になるスキル、品種改良で作り出した新種野菜なんです!」
「品種改良? そんなことまでできるのか!」
「はい~」
という事は、この野菜は表記されたレア度以上に珍しいってことか。
「あ、あの。このキュアニンジンの種とか売ってないんですか? 乾燥してない奴でもいいんですけど」
「ごめんなさい。私は仕入れて売っているだけだから。生産者は匿名希望で、仕入れ元も明かせないの」
「そうですか……」
そう言われたら諦めるしかない。でも、Lv10で覚えるアーツなら、俺でももう直ぐ使えるようになるだろう。ふっふっふ、面白くなってきた! 早く畑に帰ってオルトの畑仕事を手伝おう! そして農耕スキルのレベルを上げるんだ!