15話 ギルド貢献度
14話を書き直しました。
未読の方はそちらもお読みいただければ幸いです。
俺は畑に戻ると、オルトに手に入れたばかりの赤テング茸を見せてみた。ミレイのことを思い返すと腹が立つが、アイテムに罪はない。まあ、もう会う事もない相手だし、さっさと忘れよう。
「オルト、これは栽培できるか?」
「ム……」
「できないか?」
「ムム!」
「やっぱりできるのか?」
「ム」
「どっちなんだ?」
オルトは首を横に振ったり縦に振ったり忙しそうだ。どうやら栽培する方法はあるが、今はできない。そんな感じらしい。
「何が足りないんだ? オルトの技能か?」
「ム!」
オルトがプンスカのポーズで飛び跳ねる。どうやらオルトの力不足ではないらしい。
「悪かったって。怒るなよ」
「ムムム」
「うーん、何が足りないんだ? 道具?」
「ムッム」
またもや、お得意のジェスチャーだ。何かを抱くようなしぐさ。それを上下させる?
「なんだ? 木に掴まるコアラ?」
「ム」
「そんな呆れた目で見るなよ」
「ムー」
「あ、お前ため息ついただろ?」
「ム?」
「小首傾げんな! かわいい」
「ムッム」
「照れんな! まったく。しかし、何が足りないんだろうな?」
何かの形を表現してるのは分かるんだが。キノコの栽培に必要な物? とすると、あれか。
「もしかして、原木的なやつか?」
「ムムッ」
正解だったらしい。だけど、原木なんか、どこで手に入るんだろう。
「農業ギルドで聞くか」
困った時の農業ギルドだ。畑も買わなきゃならないし、ついでに聞けばいいさ。そして受付のおっさんに聞いてみたら、入手方法を教えてくれた。
「うちでも売ってるが……お前さんは、まだ買えないな」
「なぜ?」
「ランクが足りてねえ。ギルドに所属する者には貢献度に応じて、ギルドランクがある。クエストをこなしていけば上がるが、お前さんのランクはまだ1だ。原木はランク2じゃなきゃ買えないぜ」
「そうなのか」
俺はステータスの、ギルドの項目を詳細に確認してみた。所属ギルドは冒険者ギルド、獣魔ギルド、農業ギルドの3つだが、全てランク1だ。
「納品や採集クエストは、報酬はそこそこだが、貢献度が高め。特殊クエストは報酬が高いが貢献度は低い。討伐クエストは両方高くなってるぜ」
今回の場合、貢献度が5に達すれば、ランクが2に上がる。討伐クエストなら貢献度は4もらえるらしい。
「でも討伐クエストは俺には無理だな」
残るは採取納品クエストだが、俺には無理な話だ。
「できそうなのは作物納品クエストかな?」
「おう、種を入手して育ててみろよ」
そういえば万屋さんで売ってたかもしれないな。あれを育てて納品すればいいらしい。どちらにせよ、直ぐに原木の入手は難しそうだ。
「なら、まずは畑を買っておくか」
最後の手段として森に行くにしたって、傷薬やポーションは必要だし。増産しておくに越したことはない。購入は2度目なので簡単だった。場所も所有畑の隣をゲットできたし。
今植えられるのはミレイから手に入れた薬草と陽命草に、1つだけ余っていた食用草の種だな。だが、全然足りない。
まだ、15ヶ所も空きがあるし。明日になれば、薬草などが収穫できるので、直ぐに種まきはできる。ただ、少しの間でも土地を遊ばせておくのは勿体なく感じてしまう。俺は根が貧乏性なのだ。
「よし、野菜の種を買いに行こう」
上手くすれば、短い時間で育ってくれるかもしれないし。そうすれば納品クエストをクリアできるし、貢献度も上がる。おっと、そういえば大事なことを聞いてなかったな。
「ちなみに、原木はおいくらですか?」
「4500Gだ」
危ねー、ギリギリだ! 現在の所持金は5350G。思ったよりも高額だった。さすが、ランクが上がらなきゃ買えない商品だ。もう少し所持金に余裕を持ちたいぜ。
「うーん。特殊クエストをこなす以外に、お金を稼ぐには……」
農業ギルドのクエスト掲示板を、じっくりと眺めてみた。すると、1つのクエストが目に入る。
「マップの再調査……?」
労働クエスト
内容:始まりの町を歩き回り、現在の地図を更新する。
報酬:600G
期限:4日間
「これはどういうクエストだ?」
気になったので、おっさんに説明してもらう。要は、町の東西南北のエリアを歩いて、マップを作成する仕事だった。新しい農地や、露店、プレイヤーズショップなどを地図に追加することが目的らしい。あとは地図が間違っていないか、確認してほしいということだった。
1エリアにつき1日で、期限が4日となっているのだろう。拘束時間は長いが悪くない。普通なら、1日150Gの依頼は安すぎるのだろうが、戦闘ができない俺にとってはむしろ有り難いクエストだった。しかも貢献度は4。俺のためのクエストだな。
「この手のクエストは全く人気が無くてな、うちのギルドでもそれに興味を示したのはお前さんが初めてだ」
そりゃあそうだろう。まともにプレイしてたら、4日間も拘束されるなんてまっぴらごめんだろうし。
「始まりの町でまだ行っていない場所もたくさんあるし。観光気分で受けてみようかな」
「ありがてぇ。頼むぜ」
真っ白な地図を手渡された。町のことがざっと書いてあるだけの、普通の地図だな。とりあえず、地図を持ったまま歩いてみた。すると、歩いた場所に微妙に色がつく。これなら、歩いていない場所が一目瞭然だ。
「じゃあ、このまま地図を埋めつつ、種を買いに行くか」