表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/152

081_ジョブ合成

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 ■■■■■■■■■■

 081_ジョブ合成

 ■■■■■■■■■■



 グリッソムがダンジョンから出てくるまで時間がある。

 ダンジョンの出入り口はギルドの職員が見張っている。グリッソムがダンジョンから出てきたら、ギルドが捕縛して騎士団へ引き渡されることになっている。

 男爵という地位をやっと使う気になった俺は、グリッソムがダンジョンから出てきたら報告をしてほしいとギルドと国に頼んだ。


 グリッソムのレベルだと、ダンジョンに入ったら半月くらい出てこない。気長に待つしかない。


 そこで俺はあることを試してみることにした。


 ―――王都ダンジョン2階層。

 ダンジョンムーヴで移動し、メインジョブを村人にチェンジ。サブジョブは最もVITの高い転生勇者。

 さらにステータスポイントを使って、STRとAGIを増やす。


「トーイ様。こんな低階層で何をするのでしょうか?」


 アンネリーセの質問は、全員の疑問でもあるだろう。

 今回はアンネリーセとロザリナ、それからイツクシマさんとヤマトを連れてきている。

 なぜイツクシマさんとヤマトがいるのかというと、2人がダンジョンの雰囲気を一度は感じたいと言うからだ。

 浅い2階層でちょっと試すだけだから、非戦闘員の2人がいても問題ないだろうと思ってのことだ。


「トーイ君。大丈夫なんだろうね?」

「ヤマトは心配しーだな。俺だけじゃなくアンネリーセとロザリナもいるんだ。ヤマトはともかく、イツクシマさんには指一本触れさせないさ」

「僕の扱い、酷っ!」

「男ってーのは、そういうものだ」


 そこでモンスターが現れた。グリーンスネークLv3だ。


「あれがモンスターなの……」


 イツクシマさんが顔を青くする。


「へ、ヘビ!?」


 ヤマトはなんで俺の後ろに隠れて、地面に座り込んでいるんだよ。

 イツクシマさんはちゃんと自分の足でたってモンスターを見ているぞ。


「僕はヘビが苦手なんだよ」

「そんなことは聞いてない。イツクシマさんは大丈夫? 怖かったらアンネリーセたちの後ろにいていいからね」

「うん。大丈夫。私は触れないけど、見るだけならそこまで嫌悪してませんから」

「ヤマトよりよっぽど男らしいね」

「女の子に男らしいなんて、言うものじゃないですよ」

「あ、そうか。アンネリーセの言うとおりだね。イツクシマさん、ごめんね」

「いいですよ。でも、私も戦ってみようかと思います」

「「「え!?」」」


 戦うって、マジで?

「イツクシマさんは錬金術師だったよね?」

「はい。私自身は弱いですけど、戦う準備はしてます」

「というと?」

「これを」


 イツクシマさんは肩掛けカバンから小瓶を取り出した。

「それは?」

「爆破薬です。衝撃を与えると、爆発します」

「こわっ!?」

 ヤマトが悲鳴のような声を出して、俺の後ろに隠れた。なんでお前が怯える?


「それ、ここで爆発しないの?」

「大丈夫だよ。ガラス瓶が割れて、爆破薬が空気に触れて化学反応を起こさないと爆発しないの」

 それならいいのか? まあ、イツクシマさんが平気な顔をしているから、大丈夫なんだろう。


「それなら、俺は俺の目的を果たさせてもらうから、それが終わってからでもいいかな?」

「ええ、トーイ君の戦闘をしっかり見させてもらって、戦闘の雰囲気に慣れさせてもらってからでいいわ」


 待たせたな、グリーンスネーク。

 俺はシャドーボクシングをして、体をほぐす。

「よし、行ってくる」

「トーイ様。油断しないように」

「当主様。がんばってなのです」

「トーイ君。気をつけてね」

「早くヘビをやっつけてほしいかな」

 皆の声援を背に受けて、俺はグリーンスネークへと近づく。


 細い舌をチロチロさせて、グリーンスネークは殺気のこもった目を向けて来る。

 グリーンスネークは体をバネのようにして飛びかかってきたけど、その動きはスローモーションのようにゆっくりだ。


 俺のジョブ・村人はレベル2。普通なら素手でグリーンスネークと戦うなんて自殺行為だけど、俺にはサブジョブがある。

 サブジョブの転生勇者の能力は半分になるが、レベル3のグリーンスネークなどに後れはとらない。


「ふんっ」

 左のジャブ。その一撃でグリーンスネークの頭部が爆ぜた。

 ただでさえSTRの高い転生勇者がサブジョブなのに、さらにステータスポイントをSTRとAGIに振っている。これで怪我をするようなら、俺の戦闘センスは壊滅的だということだ。


 なんでこんなことをしているか。

 それは城で気絶させた神官長が就いていたジョブ・聖赦官(せいしゃかん)の転職条件を確認したからだ。


 あの神官長今はクズだけど、昔はかなり激しい修行をしていたらしい。その時に神官から聖赦官に転職したのだとか。

 クソ神官に成り下がったのは、聖赦官に転職して3年ほど経ってからだ。赴任していた村が盗賊に襲われて、自分の無力さを痛感したらしい。

 あれほど厳しい修行をしても、盗賊から村人を助けることができなかったことがきっかけになった。


 俺に言わせれば、そんなものは当たり前のことだ。力があるから、いいジョブについたから、そんな理由で全てを救えるわけがないのだ。

 そう考えるほうがおかしいと思うが、神官長は生真面目ゆえに精神に異常をきたしてしまった。

 神官長のことはどうでもいいし、興味もない。でもそのジョブには興味がある。


 ジョブ・聖赦官への転職条件はジョブ・神官になってからさらに厳しい修行を積むこと。

 神官に転職してからさらに厳しい修行を積むなんてするつもりはない。だから他の取得条件があって良かったよ。


 今回俺がチャレンジするのは、ジョブ・村人で自分よりもレベルの高いモンスターを素手で10体倒すこと。しかも3時間以内に連続で倒さないといけない。俺ならサブジョブとステータスポイントがあるから問題ないけど、普通なら自殺ものの取得条件だぞ。


 このような俺でも取得条件を満たせそうなものがあって助かるよ。

 ちなみにこれは詳細鑑定ががんばってくれたから見えたもので、他にも最近は色々見えるようになった。


 ちなみに聖赦官への転職条件で素手ではなく武器を使った場合は、神官に転職できるようになる。

 それも一応試しておくつもりだ。





 10体のモンスターを素手でぶっ飛ばしたところで、選択可能なジョブに聖赦官が増えた。


 ん、なんだこれ?

 選択可能なジョブのいくつかが赤く点滅している。

「………」

 いったいなんだ? 俺などには向かない聖職者のジョブを手に入れたから、デメリットとしてジョブ選択ができなくなったのか?


 俺は焦って、点滅しているジョブをセットしようとした。


【ジョブ・商人Lv1、ジョブ・運搬人Lv1、ジョブ・旅人Lv1を合成しますか? Yes/No】


「は?」

 いやいやいや、なんだこれは?


 しょ、詳細鑑定。これはどういうことだ?

「………」

 反応しないのか!?


 だけど、面白そうだ。どうせ使ってないジョブなんだ。なくなっても問題はない。

 ―――Yes!


【ジョブ・商人Lv1、ジョブ・運搬人Lv1、ジョブ・旅人Lv1を合成すると、これらのジョブは二度と取得できませんが、合成しますか? Yes/No】


 親切に注意を促してくれるのか。さっきも言ったけど、どうせ使ってないジョブだからいいよ。Yesだ。


【ジョブ・商人Lv1、ジョブ・運搬人Lv1、ジョブ・旅人Lv1を合成しました。新たにジョブ・拠点豪商Lv1を取得できました】


 拠点……豪商だと? おい、詳細鑑定。今度こそ仕事をしてくれよ。



 ▼詳細鑑定結果▼


 ◆拠点豪商 : 拠点間を一瞬で移動できる豪商。スキル・拠点転移(微)、値引(微)、利鞘(微)、看破(微)、鑑定(微)、アイテムボックス(微)が使える。ユニークジョブのため、取得条件は合成(商人・運搬人・旅人)のみ。



 合成でしか入手できないユニークジョブだと?

 こんなジョブがあるなんて、神様も面白いことを考えるじゃないか。

 てか、イツクシマさんもヤマトも転職は神殿に行かないとできないと言っていたから、これって俺以外に取得できないよな?


 とりあえず、スキルを確認しておこうか。



 ▼詳細鑑定結果▼


 ・拠点転移(微) : 拠点に転移門を設定することで、転移門間を一瞬で移動することができる。3カ箇所まで設定できるが、一度解除した場所の半径1キロメートル以内に再設置する場合は、5日間待たなければならない。消費MP30。(0/3カ所)


 ・値引(微) : 何かを購入する際に、一割引きになる。(パッシブスキル)


 ・利鞘(微) : 何かを販売する際に、一割上乗せされる。(パッシブスキル)


 ・看破(微) : 嘘や偽装などを見破れる。(パッシブスキル)


 ・鑑定(微) : 対象が持つ情報の一部を確認できる。(アクティブスキル)


 ・アイテムボックス(微) : 10枠分のアイテムを収納できる。(アクティブスキル)



 おおお! 拠点転移は今のところ3カ所しか登録できないようだが、転移で一瞬で移動ができるなんて夢のようなスキルじゃないか!

 それに値引と利鞘も地味に嬉しいし、看破は嘘も見破れるからいいスキルだ。


 なぜ今なのか。そんなことは分からないが、合成いいじゃないか。

 問題は合成した後のジョブが分からないことだな。合成した後に、後悔するということになりかねない。


 他に合成できるジョブは……。


【ジョブ・両手剣の英雄Lv41、ジョブ・剣豪Lv42を合成しますか? Yes/No】


 両手剣の英雄と剣豪はここまで育てたジョブだが、合成したらレベルはどうなるのかな? それ以前に使えないジョブになったらどうしようか?


 しかも両手剣の英雄はともかく、剣豪は俺の対外的なジョブだ。これを合成の素材にしていいのか?

 ……ま、いいか。こういうのはノリで行くぜ!


 Yes! アンド確認もYes!


【ジョブ・両手剣の英雄Lv41、ジョブ・剣豪Lv42を合成しました。新たにジョブ・英雄剣王ヒロイック・ソードマスターLv1を取得できました】


 あー、レベルはやっぱり下がるのか。またレベル上げの楽しみが出来たと前向きに考えよう。


 ん……あぁぁぁぁぁぁっ!?

 ステータスポイントが81ポイントも下がった!

 両手剣の英雄と剣豪のレベルがリセットされた分、ステータスポイントも下がるのか。盲点だった。


 ステータスポイントが下がることを考えると、レベルを上げたジョブを合成するのは考え物だな。


「トーイ様。考えは纏まりましたか?」

「ん、あ、うん。OK。大丈夫。纏まったよ」

 俺がジョブを触っている間、皆は何も言わずに待っていてくれたようだ。


「悪かったね。おかげで面白いことができるようになったよ」

「それは良かったです」


 アンネリーセの微笑みが眩しい!


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』をよろしくです。


気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。

下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。

『★★★★★』ならやる気が出ます!


次は月曜日くらいの更新になるかと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★★★ 2023年7月25日 ★★★
★★ 小説1巻発売予定! ★★
★ https://mfbooks.jp/product/kakuretensei/322303001895.html ★

小説家になろう 勝手にランキング

↓↓↓
こちらもお楽しみください
↓↓↓
マイホーム・マイライフ【普通の加護でも積もれば山(チート)となる】
― 新着の感想 ―
[気になる点] 合成前のジョブの進化先や派生先がわからないから何となくもったいないような気もしてしまうな。 [一言] ステータスポイントのことを考えたら必要ない弱いジョブでも取得していくべきなのかな?…
[一言] 転職条件、聖赦官なのに関係なさ過ぎて笑った。 なんでそれでファイターやモンクじゃなくていきなり聖赦官になれるんですかねぇ…
[良い点] ジョブ合成の開放条件はわからない、ですませてしまうんですね ジャイキリ実績がかかわってそうだけど、とにかく英雄系も合成対象とはかなりチート感が増し増しですね 素晴らしい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ
OSZAR »