062_下着
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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062_下着
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転生73日目。フットシックル男爵屋敷内の庭は、夜中から降り出した雪によって真っ白に彩られていた。
屋敷の3階の寝室のベランダから町を見ても、いつもより人通りが少ない。
「異世界初の雪景色も乙なものだな」
この世界に転生させられて2カ月半。最初は風呂はないしトイレも何かの葉で拭くものだったからどうなるかと思ったものだが、気がつけば快適に過ごせている。
「暖炉を用意しますね」
アンネリーセが暖炉に薪を入れようとしていたのを止める。
「すぐに1階に行くからいいよ」
「ですが、お着替えの時に寒いですよ」
「アンネリーセが暖めてくれるから大丈夫」
「まあ、ご主人様ったら……」
またご主人様と言う。癖なんだと思うけど、トーイと呼んでほしい。でも頬を染め恥じらうアンネリーセは、とても愛おしい。
アンネリーセに着替えを手伝ってもらう。もちろん俺もアンネリーセの着替えの手伝いをする。
今日はゴルテオ商店に行こうと思っている。やっぱりあれは大事だ。
「雪はもっと積もるかな?」
「この時期の雪はあまり積もりません。そろそろ止むのではないでしょうか」
雪の中大変だと思うけど、馬車を出してもらおう。
「準備できたらゴルテオ商店に行こうと思う」
「それでしたら呼んだらどうでしょうか? 貴族は商人を呼ぶものですよ」
「屋敷の中にずっといても気が滅入るから、外に出たいんだ」
3日後に王都へ出発する。それを考えると、気が滅入る。だから気晴らしに外に出たい。
朝食を食べるとアンネリーセと共に馬車に乗る。朝食中に雪は止み、10センチほど積もった新雪の上をブーツで歩くと、子供に返ったように走り回りたかったが我慢した。
御者はいつものジュエル。護衛にジョジョクとロザリナがつく。
2頭の巨馬が牽く馬車は、今日も地面の感触を尻に伝えてくる。貴族用の馬車でも、日本生まれ日本育ちの俺には乗り心地は最悪だ。これでも公爵が乗る馬車には敵わないけど、良いものなんだけどね。
屋敷で見たように今日の人出は少ない。
「これからどんどん寒くなり、雪が降る日も多くなります。人々はあまり外に出なくなり、露店などもかなり少なくなります」
「そうか……ああ、そうだ。池イカの姿焼きを買おうか」
露店と聞いて池イカの姿焼きを売っているおじさんの顔が浮かんだ。そろそろあの露店が出ている辺りだ。雪で出てなかったら諦めるが、そうでないなら買っていこう。
アンネリーセも池イカの姿焼きが嬉しいようで、目じりが下がっている。
池イカでもゲソのほうがアンネリーセは好きらしいけど、俺はどっちも美味しいと思う。
ジュエルに池イカ焼きの露店の前で止めてほしいと頼むと、ほどなくして馬車が止まった。
「お、いつかのお嬢ちゃんか!」
「控えろ。フットシックル男爵であるぞ」
ジョジョクがおじさんを威嚇するから、それを止める。
「お貴族様で……」
「今まで通りでいいよ。でも俺、男だから(笑)」
「えぇ……これはすんません」
バツが悪そうに額に手を当てる。そんなことで怒らないからいいよ。それにお嬢ちゃん枠でサービスしてもらってたからね。
「いいの、いいの。今日は池イカの姿焼きとゲソ焼きを10本ずつもらうよ。ちゃんとお金払うからね」
「お貴族様がこんなところで買い食いしていいですかい?」
「今更だよね」
「それもそうですね」
おじさんは急いで10本ずつ焼いてくれた。
アンネリーセはやっぱりゲソを取った。ロザリナは姿焼きのほう。ジョジョクとジュエルは遠慮したが、姿焼きを無理やり持たせた。
「美味しいです」
「ああ、本当に美味いな」
おじさんにまた寄ると言うと、苦笑して「へいっ」と返事した。
ゴルテオ商店に入ると、すぐにゴルテオさんがやってきた。ゴルテオさんは気配感知を持っているんじゃないかと思うほど、毎回すぐに出てくる。
簡単な挨拶を交わして、案内をしてもらう。
「こちらが布から下着、ドレスまで服飾系のものを揃えたエリアになります」
「デザイナーや針子さんは居ませんよね」
「針子は工房に居ますが、デザイナーでしたらこちらに居ります」
なんとデザイナーは常駐なんだね。
「お客様の要望を聞き、絵に起こすのはデザイナーでないと難しいですから」
それもそうか。さっそくそのデザイナーに会わせてもらった。デザイナーは30前のピンク髪の綺麗な女性で、スタイルもいい。名前はキャサリンという。
個室でキャサリンにアンネリーセ用のブラジャーとパンティをデザインしてもらう。
「女性用の下着で―――」
身振り手振りを交えてできる限りイメージを伝える。
何度も描き直してもらって、良い感じのデザインができた。
「この下のところにはワイヤーを入れて―――」
細かい指示をする。素材はシルクで試作品ができたら屋敷に持ってきてくれることになった。
それから俺用に忍者のようなネタ服、アンネリーセ用にゴスロリ系からフェミニンな服、某アイドルグループが着ていたような衣装などいくつか描いてもらい、それもできたら屋敷に持ってきてもらう。
「2日後に王都に出発するから、ゆっくりでいいよ」
「下着の試作品なら明日にでもお持ちできると思います」
下着のデザインは5つあったけど、1日で作れるらしい。ジョブ補正なんだと思うが、出来上がりが楽しみだ。
「そりゃあ凄いね。明日を楽しみにしておくよ」
「こんな真新しいデザインを手がけられて、男爵様には感謝しております」
キャサリンさんは俺が頼んだデザインを見て、凄く気合が入っている。
翌日、午前中にキャサリンさんがやってきた。ゴルテオさんも一緒だ。
ゴルテオさんは俺に話があるということで、キャサリンさんとアンネリーセは下着の試着をしてもらう。
「あの下着やドレスのデザインはとても斬新です。トーイ様さえよろしければ、商品化させていただきたいと思っています」
ゴルテオさんがやって来たのは、商談のためだった。日頃お世話になっているし、俺は構わない。むしろ女性はあの下着を着けたほうがいいはずだ。
「構いませんよ」
「では、売り上げの10パーセントをトーイ様に上納するということでどうでしょうか?」
ごねたらもっと率を上げそうなゴルテオさんだけど、お金が欲しくて許可したわけじゃないからそれで構わない。
魔法契約書で契約を交わす。さすがはゴルテオさんだ、準備がいい。
「旦那様。奥様の試着が終わりましたとのことで、確認をしていただきたいそうです」
メリスが俺を呼びに来たから、アンネリーセが待つ部屋に。
「おおおっ。ビューティフル、エレガント、グゥゥゥッレイトッ」
美の女神がそこに居た。
「恥ずかしいです」
もじもじするアンネリーセ。
零れそうで零れないたわわなOPPAI。動いてもしっかりとブラに収まっている。パンティも素晴らしい。俺のイメージ通りのものを作ってもらえた。
5種類の下着を全部着てもらった。どれも素晴らしい。
「この5種類の下着の色違いも作ってもらえるかな」
今は白ばかりだ。
「赤、黒、青、黄などの色を揃えてほしい。できるかな?」
「さすがフットシックル男爵様です! 私も色のバリエーションを考えていましたのです」
「王都から帰ってくるのはかなり先になる。それまでに納品しておいてくれればいい」
「承知しました」
そこで俺は気づいてしまった。メイド長のメルリス、おっちょこちょいメイドのケニーが羨ましそうにしているのだ。
「キャサリン殿。うちの女性陣の下着も全種類全色納品してくれ」
「旦那様。私たちは」
メルリスが断ってくるが、俺はそれを手で制す。
「メルリスもこの下着をつけて、モンダルクを悩殺してやるといい」
「ご冗談を……」
そんなこと言いながら、まんざらでもなさそうなんだけど(笑)
「ケニーは見せる相手をみつけないとな」
「わ、わたしゅまでいいのでしゅきゃ」
カミカミだ。それほど嬉しいということだろう。
「ロザリナたちも呼んできて、皆でサイズを測ってもらうといい」
「「ありがとうございます」」
ケニーはロザリナたちを呼びにいく。
俺は再びゴルテオさんの居る応接室に入り、モンダルクが淹れてくれたお茶を飲みながら談笑する。
あの下着を着たメルリスを見たモンダルクがどんな顔をするか、見てみたいな。がんばってジュエルの弟か妹をもうけてくれ。ははは。
ご愛読ありがとうございます。
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