035_エンチャント・ファイア
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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035_エンチャント・ファイア
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「ロザリナ。今からエンチャント・ファイアをかける。もう少し頑張ってくれ」
「問題ないなのです」
魔法を発動させるイメージを固め、エンチャント・ファイアを発動。
俺の中から何かが抜ける感じがした。MPが消費されたのだ。
他のジョブでもMPを消費するスキルはあったけど、MPが減る感覚はなかった。エンチャンターはMPの消費に敏感のようだ。
ロウソクくらいの小さな火が可愛らしく飛んでいき、ロザリナの腕に纏わりついた。
その火はボワッと大きくなってロザリナの拳を包み込む。あれ、熱くないのかな?
「ロザリナ。大丈夫か?」
「まったく問題ないなのです」
ガーゴイルの攻撃を躱して、着地と共に床を蹴ってガーゴイルに迫る。
動きに支障はないようで良かった。支障あったら使えないクズスキル認定だったぞ。
殴った瞬間、拳の炎がガーゴイルを焼く。先程までガーゴイルのHPの減りが1から2ポイントだったのが、今の一撃で83ポイントも減った。追加効果で80ポイント以上削れたことになる。
いくらガーゴイルのMIN値とMDEF値が低いとは言え、ここまでのダメージが出るのか。
俺のエンチャンターのレベルが上がれば、追加効果はもっと高くなるだろう。
あとはロザリナがアクティブスキルの鉄拳や蹴撃、そしてユニークスキルの闘気を発動させれば、もっとダメージが出るはずだ。
もっとも闘気を発動させたら、エンチャント・ファイアは不要だと思うけど。
ロザリナがガーゴイルを倒した。攻撃は受けてないが、ロザリナの攻撃もほとんど通らなかった。かなり苦労していたが、エンチャント・ファイアがかかるとすんなり倒せた。
あのロザリナがここまで苦労するということは、剣士や槍士だけのパーティーでは、とてもガーゴイルを倒せないんじゃないか?
ガーゴイルは石だけあって動きは遅いけど、空を飛んでいるしとても硬い。下手をすれば、剣士たちは全滅だろ。
「あれだけ苦労していたロザリナが、ご主人様の魔法を受けてガーゴイルを倒してしまいました。あのエンチャント・ファイアという魔法はどういったものなのですか?」
魔法使いのアンネリーセでも知らない魔法なのか?
「エンチャント・ファイアは火属性を付与する魔法になる。ロザリナのような物理攻撃しかできない探索者の攻撃に火属性の効果を付与し、火属性のダメージを敵に与える。ロザリナのような手数の多いジョブだと、とても効果的だと思うぞ」
「そんな魔法があるのですね……まるで魔剣を魔法で作っているようです」
そう言えば、魔剣なんてものもあるな。エンチャンターなら、簡易魔剣を作るという考えで間違いないのかもね。エンチャント・ファイアだけじゃないから、パーティーに1人は欲しいジョブだと思う。
「今回俺が魔導書から得たジョブは、エンチャンターという珍しいものだった」
いつの間にかロザリナがドロップアイテムを拾って戻ってきている。
「エンチャンターは直接攻撃できない代わりに、仲間を魔法で強化するジョブだと思ってくれ」
「承知しました。ロザリナさんもいいですね」
「はいなのです」
元気いっぱい返事をしたロザリナだけど、多分分かっていない。それでも彼女は本能で対応してくれるからそれでいい。
「しかし、相変わらずご主人様は非常識ですね」
「ん?」
「本来は神殿に行かないと転職できません」
今さらだな。
「それに得られるジョブが珍しいものばかりです」
それは俺も思っている。
両手剣の英雄や剣豪などは取得条件を満たしたからたまたま得られたけど、このエンチャンターは完全に運の要素が強い。1万分の1なんて、滅多に出るものではないからな。
「魔法使い自体が珍しいのですが、さらに珍しいエンチャンターなんてよく引きましたね。さすがはご主人様です」
「さすがなのです」
分かってないけど、流れに乗って喜ぶロザリナの頭を撫でる。
「分かっていると思うけど、ジョブのことは全部内緒だからな」
「もちろん理解しております」
「はいなのです」
実を言うと、両手剣の英雄のレベルが14になっているんだけど、レベル10の時にスキル・アイススラッシュを覚えた。
このアイススラッシュは氷属性の斬撃を飛ばすスキルで、飛んでいるガーゴイルへの攻撃手段として丁度いいし、氷属性の攻撃だからダメージも通る。
その日、俺たちは6階層を途中まで進んでダンジョンから出た。
ボス部屋まで行くと、夕飯の時間に間に合わない。使用人たちがせっかく美味しい料理を作ってくれるから、食べない選択肢はない。
料理人のゾッパの腕はさすがと言うものだった。
美味しい料理を自分で食べるために、料理人になったと言っていただけのことはあるんだよね。
探索者ギルドでアイテムを換金。盗賊たちのおかげで4階層のアイテムもアイテムボックス内に残っているから、それも換金だ。
<4階層>
・スレッドスパイダーのノーマルドロップ品、綿糸22個1760グリル。
・スレッドスパイダーのノーマルドロップ品、Gランク魔石21個5250グリル。
・スレッドスパイダーのレアドロップ品、綿布1個1600グリル。
・ワーカーアントのノーマルドロップ品、蟻甲19個2090グリル。
・ワーカーアントのノーマルドロップ品、Gランク魔石15個3750グリル。
・ワーカーアントのレアドロップ品、酸袋2個3600グリル。
・ジャイアントスパイダーのノーマルドロップ品、毒袋11個1万9800グリル。
・ジャイアントスパイダーのレアドロップ品、グリーンリーフ1個4500グリル。
・ブラックアントのノーマルドロップ品、蟻鉄甲5個1万1500グリル。
・ブラックアントのレアドロップ品、黒蟻鉄甲1個8000グリル。
※4階層合計6万1850グリル。
<5階層>
・迷宮牛のノーマルドロップ品、迷宮牛肉31個6200グリル。
・迷宮牛のノーマルドロップ品、Gランク魔石24個6000グリル。
・迷宮牛のレアドロップ品、迷宮牛革5枚1万2500グリル。
・迷宮大牛のレアドロップ品、迷宮大牛角1個1万1000グリル。
※5階層合計3万5700グリル。
<6階層>
・ガーゴイルのノーマルドロップ品、Fランク魔石13個7800グリル
※6階層合計7800グリル。
総合計10万5350グリルになり、3日分のアイテム換金額でモンダルク一家の給料分になった。
面白いことにガーゴイルのノーマルドロップアイテムはFランク魔石だけだった。動く石像だからなのかな?
あと、迷宮牛からドロップする迷宮牛肉4個はお持ち帰り。4キログラムくらいになるから、アイテムボックスに入れておいて定期的に出す予定。
それとガーゴイルのレアドロップの石化の短剣(2万5000グリル)もドロップしたが、これは売らずに持っておく。
石化の短剣は15パーセントの確率で石化が発動する。チクチクやっていれば石化が発動すると思う。
ちなみにエンチャンターの俺が装備しようとしても、やっぱり重く感じた。剣類は全部ダメなようだ。
この石化の短剣はゴルテオさんの店でも売っていたが、小売価格は5万グリルだった。俺たちの換金額から2倍になっているが、最低でも探索者ギルドが間に入っているから、そうなっているんだと思う。下手したら仲卸なんかが入っているかも。
<トーイ>
【ジョブ】エンチャンターLv8
【魔 法】魔力強化(低) エンチャント・ハード(微) エンチャント・アクセル(低) エンチャント・ファイア(低)
【ユニークスキル】詳細鑑定(中) アイテムボックス(中)
<トーイ>
【ジョブ】両手剣の英雄Lv14
【スキル】指揮(低) 全体HP自動回復(低) 身体強化(中) バスタースラッシュ(低) アイススラッシュ(微)
【ユニークスキル】詳細鑑定(中) アイテムボックス(中)
<アンネリーセ>※変化なし
【ジョブ】魔法使いLv21
【スキル】火魔法(中) 無魔法(中) 魔力操作(中) 魔力感知(中) 魔法威力上昇(中)
<ロザリナ>
【ジョブ】バトルマスターLv16
【スキル】剛撃(低) 鉄拳(低) 蹴撃(低) 防御破壊(低) HP回復(微)
【ユニークスキル】 闘気(低)
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