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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
9才です。
43/191

14話 白虎です。


目が合ったと脳が理解したら、サリオンの目が閉じ始めた。


あ、あっ、あっ!

戸惑っていると、ちっちゃな白猫がとてとてと来てぴょんとサリオンに乗った。

そしてその姿がぼやけ、フワッとサリオンに溶け込んだ。


スゥ・・・、スゥ・・・、


規則的な寝息がサリオンから聞こえる。


え!?えっ!?何!?何なの!?


《落ち着け》


亀様の声がする。


《サレスティアが原因だ》


ええっ!!? 何それ!? 落ち着けないよ~っ!


《お前は気持ちが昂ると魔力が無意識に溢れるようだ。それがサリオンに吸い込まれ、一時的に目覚めたのだろう。まさか白虎とはな、驚いた》


あ、亀様が「白虎」と言った。てことは本物なんだ・・・・・・まじか・・・


「僕、お嬢の魔力が見えたかもしれない・・・。さっきのお嬢の周りにあったキラキラしたものですか、亀様?」


アンディが(ほう)けた感じで亀様に聞く。他の皆はまだ(ほう)けてる。・・・アンディってこういう時に強いかも・・・


《アンドレイには見えたか。ならばお前も魔法使いとして将来有望だな。励むといい》


アンディの表情が晴れた。ハイ!と、とてもいい笑顔で返事をする。

良かったねアンディ。一緒に頑張ろう!


は、置いといて。


「結局どういう事なの? サリオンはどうなるの!?」


《時間がかかると言ったろう。サリオンも白虎も、まだ微弱だ》


ん? 私の魔力にあてられて一時的に目が覚めた。・・・うん、まあ、わかる?ような? 魔力が溜まってないのに何で目覚めたんだろう?


「ということは、サリオンもお嬢と一緒にいられることを喜んでいるんじゃないかな? それを知らせたかったんだよ。しっかりと君を見ていたもの」


フフフと亀様とアンディが笑う。


「・・・良かったねお嬢。サリオンとも相思相愛だ」


優しく笑いながらアンディが私の顔にハンカチをあてる。

・・・ごめんアンディ。そのハンカチじゃ間に合わないかもしれない・・・






「白虎が現れたのならば、サレスティアはアンドレイの婚約者になれ」


サリオンを赤ちゃん部屋にお願いしての再びの執務室。

王がとんでもない事をのたまった。


「情緒の無い男って嫌ねぇ・・・」


「何!?」


「あ、申し訳ありません。つい本音が出てしまいました。息子を見習え。あ、また本音が」


「・・・よし。俺の持ちうる全ての権力でここに国中の人間を集めてやる。玄武が居ようとどうにもできまい、調理も宿もてんてこ舞いになるがよい」


「うわっ仕返しが陰険~。友だちがいないって不憫ですわね。権力の使い方を間違えても(だ~れ)も教えてあげないのですもの~」


「はっはっは。こういう時に発揮されるのが権力というものよ。覚えておけよ小娘が」


「おっほっほ。その小娘を言い負かすこともできないなんて残念なオジ様ですこと」


「くっ!表へ出ろ!このツルペタが!」


国王が勢いよく立ち上がる。


「はあ!?相手を見てケンカ売りなよオッサン!そのデコ面積広げてやるからな!」


言ってはならぬ事をほざきやがって!やってやんよ!


「いい加減にせんかっ!この悪たれどもっ!!」


ラトルジン侯爵の怒声が響き渡る執務室。

学園長、侯爵夫人、クラウス以外は真っ青になっている。

・・・悪ノリし過ぎたか。

王とアイコンタクトを取り、侯爵へ二人並んで頭を下げる。


「「すみませんでしたーっ!」」


もちろん腰を九十度に折る。


「・・・何が起きたの・・・?」


王様小劇場よアンディ。息子に見せるにはイマイチな内容だったわね。反省。




「え~、先程の話の、アンドレイ王子との婚約はご容赦下さい」


改めて、王が椅子に腰かけたのを確認してから私も席につく。


「まずはこちらの話を聞けサレスティア。別に四神欲しさだけで言った訳ではないのはわかっているのだろう?」


ここで四神を欲しい事を否定しないのが潔いよね~。

王の言うことはわかっているつもりだ。四神の力はとんでもない。白虎はまだ覚醒前とはいえ、四神の半分がドロードラング(ここ)に揃ってしまった。

これから領地を世間に開いていこうというのに、なかなかの問題である。


「玄武はどうとでもなる。最適な魔法を使って自身でどうにかするだろう。だいたいじっとしてれば小山にしか見えん。だが白虎は駄目だ。明らかに容姿でバレる。猫と言い張れる大きさだったが、突然現れたり消えたりするのも駄目だ。その上、まだ小さいせいか魔力の調整が難しいのだろう、体がうっすらと光っていた。ちょっとした魔法使いなら四神とわかるだろう。・・・そうなったら、後は簡単だ」


王が真剣に私を見る。

本気の心配がちょっとこそばゆい。が。


「お前だけではない。サリオンも狙われる」


サリオンを守れたと思った途端の問題だ。ギリッと奥歯がなった。


「・・・だからといって、アンドレイ王子との婚約は王家への不信に繋がりませんか? 奴隷王と繋がっていたと言わせたくはありません」


奴隷売買は実は王家が指示を出していた、ドロードラング夫妻は尻尾切りにあった、何らかの取引で娘を王子の婚約者にした、等々。どうでもいい根も葉も無い噂だろうともダメージはそれなりにある。

その事でアンディやレシィが傷つくのは嫌だ。


「まあ何かは言われるだろうが、それを打ち消すほどの物がドロードラング(ここ)にはある。それに気づいた者はお前を囲い込もうとするだろう、今の俺のようにな」


ニヤリとする王。


「国外からも客を入れるとなると、お前への見合い話は相手が決まるまでひっきりなしになるだろうな」


見合い話ねぇ・・・・・・見合い!?


「なんじゃその顔は?」


侯爵が呆れた声で言う。


「えっ、だって、私、まだ9才ですよ?」


「貴族なら相手がいてもおかしくないぞ。王太子も第二王子も相手になる女性の選定に入っている。もちろん第一王女も始まっておる」


えええ~っ! それは王子と姫だからでしょう!?

うちは男爵だよ!更にその端くれだよ! 見合いなんて前世のお年頃にも無かったのに!

・・・まあ借金返済で正直それどころじゃ無かったけどさ・・・


何より、ヒロインが出てきたら邪魔者じゃん私!

ヒロインは明るくて素直で何より可愛いのだ。私だって彼女は好きなキャラなのに。

・・・王道なら王太子が相手になるのか? でも第三王子のアンディとヒロインが恋に落ちない保証はこれっぽちも無い。アンディは今すでにイケメンだからね! 美人のフェミニストなんてモテる要素しかないよっ!


「お嬢。婚約の相手が王子ならお嬢に対してそうそう悪い事はできないよ。もちろん弟のサリオンにも。まあ・・・僕が嫌だと言うなら兄上たちに頼んでもいい」


打ち合わせたようにアンディが会話にまざる。


「嫌な訳無いよ! アンディを嫌だなんて絶対無い。・・・だけど、だって、悪いよ・・・」


「何も悪くないよ。友だちの助けになるなら嬉しいよ。それに、婚約者になればこっちに遊びに来る理由に困らなくなる。僕だって下心はあるんだ」


10才が下心とか言うなよ。

でも嬉しい。アンディのその優しさが嬉しい。だから躊躇する。


「もし他国の王家からの申し込みがあった場合に断り易いというのがこの婚約の第一の理由だ。貴族の大人ほど下心のある生き物はいないぞ。ま、武力を持って手に入れようとはすまい。お前をきちんと調べたのならな」


他国の王家が動く・・・だろうな~、四神だもんな~、面倒だなぁ。

婿取りとわかれば、それこそ数打ちゃ当たる作戦があるかもしれない。そこに私への純粋な想いは無い。・・・ムカツク。


「ちなみに、第二の理由は何ですか?」


「ここに遊びに来やすいだろう。優遇してくれ」


・・・王様よぉ・・・


「第三には、まあ、武力だ」


・・・三番目?ホントに? 思わず疑いの目になる。

それを見た王が苦笑いをする。


「遊具、面白いぞ。武力を覆す程にな」


確かに!と学園長も笑う。侯爵、夫人、アンディにレシィも。

お付きの皆も私と目が合うと、頷いたり苦笑したりする。


良かった。気に入ってもらえて。


まあそれはそれだ。ちょっと断って、クラウスとカシーナさんをそばに呼ぶ。


「どう思う? 破格の待遇だとは思うんだけど、踏ん切りがつかない」


「お断りをしても構いませんよ?」


「ふふ、クラウスさん、そういうことではないのです。女の子ですから婚約や結婚には思うところがあるんです」


相手が誰であろうとも。

カシーナさんが柔らかく笑う。幸せそうだ。


恋愛に夢がある。

片想いしか経験がないから余計に。

アンディのような高スペックな相手なんてそうそういないだろう。

だけど、アンディを好きだが、それはレシィを好きだというのと変わらない。

だいたい、これから思春期を迎える少年をこんなオバチャンの婚約者にしてもいいのか!?と自分の良心が叫ぶのだ。


「サレスティア、ひとつ言うが仕事の休憩中に選ぶのだぞ。睡眠時間も削られる。遊ぶ時間など無くなるし、選んだところで漏れた奴らが夜会などで盛り返そうと何度も寄ってくるのだ。あんな奴より自分を選べとな」


しみじみと王が呪いのように言う。脅しじゃないのそれ?

うわ!大人たちが皆頷いてる!


「貴族の下心を甘くみるなよ」


うえぇ~んカシーナさぁん!!


「ならば、少し余裕を持たせた契約になさいませ」


カシーナさんに泣きつこうとした時に、夫人が助け船を出してくれた。


「婚約したところで先は長いのです。このまま仲良くいられれば良し。しかし、お互い焦がれる相手が現れることもありましょう。どちらかでもそういう事になれば解消すると、そういう契約にすればよろしいのではありませんか?」


そうあれば目眩ましにもなるし、お互い気に病む事もないでしょう。

そう締めくくった夫人に後光が見えた。

アンディを見ればにこりと微笑む。・・・ホントに10才か?

頼りになるなぁ。


「・・・そういう事ならば、お受け致します」


「よろしくね、お嬢」


「ありがとう、アンディ」




正式には来年になるだろうが予約はしたからな。

そう言って国王は侯爵邸に帰って行った。


ワシ一人なら転移魔法を使えるから、これから適当に邪魔をするぞ。

学園長も一緒に送った。


何だか今日は色々あった・・・


10才の婚約者が出来る予定です。


・・・・・・なんか複雑・・・私、一応9才だから! 


犯罪じゃないからーーっ!!











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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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