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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
5才です。
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1話 始まりです。

5才の誕生日に頭を打った。

そしたら、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。


『令嬢』・・・まじか!!やっほぅ!命尽きるまで贅沢三昧してやるぜ!


前世は貧乏暇無しを体現した人生だった。


保育所に通っていた頃から家事を手伝い、小学生の時は親の内職を手伝い、中学では牛乳配達をし、高校生のうちにしていたバイト先に就職して、更にバイトをさせてもらい、朝から晩まで働いて働いて働いて。父母兄姉弟と、家族総出でやっと祖父の残した借金返済して、これからファミレスで外食出来るね!なんて皆で笑ったのに。


気が弛んでいたんだろうな、出勤途中に信号待ちをしていたところに突っ込んできた居眠り運転の車に気づかなかったんだから。


・・・あ~あ、旅行とかコンサートとかリサイクルショップじゃない服屋とか行きたかったな~。


お父さんお母さんお兄ちゃんお姉ちゃん卓也、こんな死に方でごめん。皆に内緒で掛けてる私の生命保険があるからうまいこと使ってね。ヘソクリも見つけてよ。出勤途中だから労災からもいくらか出るよね。あ、お金があるからってグレるんじゃないわよ卓也!大学デビューなんて、お姉ちゃん恥ずかしくて死んでも死にきれないかもしれない!


うん。思い残しはたくさんあるけど、皆、元気でね。




***




ワガママ放題で使用人は奴隷ですウフ、な私がそんな殊勝なことをブツブツと三日三晩唸っていたものだから、両親に王都の屋敷から領地に戻って療養するように言われた。


気味悪がられたけど、これからの華やかな日々を思い描きながら一月(ひとつき)の馬車の旅を楽しんだ。そして領地に着いて意気揚々とドアを開けたら、目の前には広大な荒れ地が広がっていた。


「・・・・・・は?」


いや、荒れ地と言うにはまだ野原だけども雑草が生え放題である。目につくところ全ての手入れがされていない。領地住民の家はボロボロでテレビで見たバラック小屋のようだった。


呆然としながら屋敷に向かうと侍従長が表で待っていた。あれ?この人こんなに痩せてたかな? まあ2才には王都に移っていたからあやふやな記憶だけど。


「お帰りなさいませサレスティアお嬢様。長旅お疲れ様でございました」


中に入ると侍女たちが並んでお辞儀をしている。

・・・なんだか痩せた娘達ばかり・・・

と、私が通り過ぎた後ろで侍女が一人倒れた。抱え起こそうとした隣の侍女も立ち(くら)みの様に崩れ落ちる。


「お見苦しい所を申し訳ございません。お茶の準備をしておりますのでお嬢様はどうぞこちらへ」


何事も無かったように振る舞う侍従長を手を上げて止めた。

嫌な予感がする。いや嫌な予感しかない。予感というか、実感。


「待って、厨房に案内して。私が呼ぶまで全員休憩よ」


青冷めた顔をした皆をわざと無視して記憶を頼りに厨房へ向かう。まっすぐ辿り着いた厨房ではグッタリした料理人達がいた。私を見て慌てるがすぐに立てない。

冷蔵庫を開けるといくらか食糧が入っていたが、食糧庫と思われるドアを開けると中には何もなかった。


「・・・どういうこと? 私にわかるように包み隠さず説明してちょうだい」


侍従長は青白くなった顔を伏せて黙っていたが、やがてポツリポツリと教えてくれた。なんと領地どころか使用人さえ男爵家のおかげで金も食料も全くない。


聞き終えた私はそのまま勝手口から外に飛び出し、


「どういうことじゃこりゃあああああ!!!」


怒りのままに叫んだ。

そして、魔法に目覚めた。





***





『魔法学園アーライル~未来を貴方と守りたい~』


魔物から国を守り世界を平和に導く戦士養成所でのアレコレ、という王道ファンタジーに添った乙女ゲームである。

流行りの乙女ゲームには珍しく、逆ハーレムルートが無く、意気込んだお姉さま達には不評なゲーム。しかしヒロインそっちのけで繰り広げられる男達の友情が萌えると、別口のお姉さまに人気があったらしい。


らしいというのは、私はそのゲームをしたことがなく、高校での友人がはまり込んだ末に大量に購入した薄い本を借りて読んだだけ。友人曰くノーマルな内容だって。


そこでヒロインに対し嫌がらせをするのが男爵令嬢サレスティア。爵位が低いけど、チートな庶民ヒロインに次ぐ魔法力の持ち主で第二王子の()()()()。婚約者ではなく大ファン。そりゃそうだ身分差がありすぎる。ヒロインは主人公だから王子の相手になれるのだ。


サレスティアは第二王子ルートを選ぶとお約束通りチマチマとヒロインの邪魔をする。ちなみに他の人ルートには出てこない。攻略対象ごとにライバルが違うらしい。

で。薄い本の方では流血するほどの魔法合戦になるような邪魔をしていたのに、本編では小学生の嫌がらせか!って程度だったとか。


・・・箱入り娘、かわええな~。


そんなショボい悪役令嬢だけど、学園の最終試験後に親の不祥事が発覚。それが原因で没落。卒業出来ずに一族処刑。


・・・・・・・・・・わ~お。


今回の人生も短そうだな~。

いや、それまでは贅沢する!美味しいものをたくさん食べて!洗濯に困る上等な服を着るのよ!!


そう腹をくくったのに。なんだこれ。


・・・しかし、サレスティアの魔法の目覚めが怒りとは。

「私」のせいだろうか・・・貧乏脱却してまた貧乏、キレるわ、普通に。


うん、しょうがない!










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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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