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 私にはとても逢いたい人が居る。

 でも、それが誰なのかはわからない。

 ふとした瞬間、恋しくて切なくて、胸がぎゅっと締め付けられる時がある。

 泣きたいくらいその人を求めているのに、どんな声で、どんな姿だったか、ほんの少しも思い出せない。

 逢えばわかるだろうか、私の恋しい誰かだと。

 きっとその人と私は、たとえ肉体が滅んでも魂が引き寄せられて何度も巡り会う運命。


 神様、どうか私をその人に引き合わせてください。

 清く正しく生きていれば、私の願いは叶いますか。


 ♢♢♢♢♢  


「お前とフレドリック殿下との婚約が正式に決まった」


 中等科に進学して間もなく、父の書斎に呼ばれてそう告げられた。

 王太子殿下との婚約が決まったというのに、父は浮かない顔をする。

 他の令嬢なら飛び上がって喜ぶところだ。

 しかしうちでは誰も王家との縁組を喜ばない。

 親同士の口約束だけで正式な婚約には至っていないが、一応私には許嫁がいる。

 なのに何度断ってもあの手この手で執拗に縁談を進めようとする王弟殿下への対応に、正直疲れていた。

 

「お父様、何度もお断りしたのになぜですか?」

「気が進まないのは私達も一緒だ。しかし、王族からの申し込みは本来お断り出来ないのだよ」 

「……嫌です」

「ラナ、おじい様が決めたのだから諦めなさい」

「……っ」


 おじい様もこの縁談に乗り気ではなかったではありませんか!

 大声で言いたかったけれど、その言葉は飲み込んだ。

 反抗したところで無意味だという事は知っている。

 この家でおじい様に逆らえる者は居ないのだから。

 

 

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