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発売日まで何らか毎日投稿しようと思ってたんだけど無理でしたね。流石に間に合わなくなった……

2日空きましたがスフィア視点の最終話です



 



 

 


 当初の予定では、同盟について話が出た時に悪しき存在に騙され気づかぬまま祀り上げている事を指摘し、「そんな国とこのまま契約する訳にはいかない」と話を持っていく予定だったのが大きくズレ込んだな……

 レミリア様はなるべく目立たぬように話をしたいと慈悲を持っていたようだが、私やアンヘル様を含めたレミリア様を慕う者がそれで納得するわけがない。密かに、この国の……かつてレミリア様を裏切った者達に、公の場で真実を明らかにしてやろう、と計画を進めていたのだ。

 なに、ウィリアルド王太子がやったのと同じ事であるからな、夜会の場を騒がせても問題あるまい。それにこちらは冤罪ではないし。


 アンヘル様は禁制の薬物と指定したはずの匂い(実際は特徴的な香りのただの香水だが)がその星の乙女からする事、それを魔族への害意だと指摘して王に判断を迫った。

 その言葉に対してオロオロするだけのデイビッドが見えて、思わず顔を覆って嘆きたくなる。星の乙女付きとなっているはずの自分を飛ばした指示に、すぐ様見限られている事に気付いてここで奮起し……自らも星の乙女の捕縛に積極的になればこの後まだ浮かぶ瀬もあっただろうに。

 弟のようにそこそこ可愛く思っていた昔馴染みのみっともない姿に悲しくなってしまった。昔はちゃんと……盲信するだけではなく騎士として考えて行動できていたと思うのだが、いつの間にこんな男になってしまったのか。それともあの星の乙女の呪いはじわじわと思考能力も蝕んでしまうのか?


「そんな! 違います、あたしはただ……」

「交易を行っている担当者から報告が上がってきている。輸出を禁じた薬物原料を求める者がいて、断ったが賄賂を積んで詰め寄られたため別の魔界原産の花の香水をそうと偽って渡したと。その違法に流通した香水の匂いが鼻に付くほどお前から漂っている。もう一度聞く、私に害を為そうとしたのではないのなら、何が違う?」

「っ、……」


 アンヘル様が指示を出して行った調査によると、人を何人も介していたがおそらくこの星の乙女が指示したものだろうと目星がついている。悔しいことに仲介が殺されていて、物的証拠は残っていないが証言と状況証拠で我々はほぼ確信していた。


 そしてその薬物の効果を知っていたこと、魔王の前で偽りを口にしないように警戒している様子、やはりアンヘル様の推理した通り星の乙女に人知を超えた何らかの力がある事だけは確かのようだ。

 天啓で、その薬物の存在を知らされアンヘル様の眼の事も存じ上げていたレミリア様とは違う。きっと悪しき存在から与えられた知識であるか、能力からして星の乙女の肉体であるのは確からしいのでその力を悪用して知ったのか……。どちらにせよ本人の悪意が無いと成り立たない犯罪である。口封じに人を殺したことを含めてその責任と罪は大きい。


「ほう、やはり、俺の瞳が嘘を見抜くと知っているのか。聞いていた通りだ」

「ち、ちがいます……ただ、私、魔族の皆さんともっと仲良くなりたかっただけで……」

「それで薬物を使うのか? レミリアの忠告してくれた通りだな」

「なん、でアンヘル様がそいつの名前を……?!」

「……そこの騎士、そいつの口を塞いでおいてくれ。我が国を救ってくれた大恩ある女性を侮辱されると思わず縊り殺しそうになる。あと女、俺は名を呼ぶことを許していない。一国で祀り上げられるお飾りの立場を俺は慮ってはやらない。死にたくなければ無礼な口を閉じろ」


 レミリア様の事をそいつ、と呼ばれて騎士として控えている立場を忘れて思わず怒りを感じたが、すぐにアンヘル様の激昂に触れて自分は逆に冷静になっていた。

 絶対強者の貫禄、愛に裏付けされた怒りに周りは皆気圧されていた。先程控の間で散々私達にヘタレとチクチクされていたとは思えないな。

 色恋に関して臆病すぎるのは擁護できないが、やる時はしっかり追い込む方なので安心して任せていられる。色恋に関しては本当にヘタレだが。つい二度言ってしまったな。


 様子のおかしな星の乙女に、お優しいレミリア様は事を荒立てないように提案をしてくださったと言うのに、愚かにもこの女はその手を振り払ってしまった。完璧な反証を用意しているこちらからすると、駆け足で断頭台に登る自滅行為にしか見えない。


 そのボロはすぐに出た。

 嘘を見抜くと知っているアンヘル様の前で偽りを口にしないようにする……その程度の知恵はあるようだが、アンヘル様も追い詰め方は承知しているようではっきりと是非を問うている。

 周りの目がどんどん星の乙女にとって厳しいものになっていき、それが分かっているのだろう、被っていた仮面が更に剥がれていく。


「どれほど祀り上げられてるか知らんが、俺は肩書きだけで誰かを欲したりすることはない。レミリアは創世神の末娘レンゲ様に加護をいただく浄化の乙女でもあるが、俺が愛しているのは味方が1人もいない中、腐らず折れず信念に基づき世界のために尽力した心優しいレミリアという少女だ、なんの加護を持っていても関係ない」


 歌劇だったらここが一番の見せ場になるだろう。元婚約者や冤罪を着せた悪人の前で、レミリア様の正しさと素晴らしさを説きつつどさくさに紛れて愛を告白する手法は鮮やかすぎて感心してしまった。


「国王陛下、発言をお許しいただきたく」


 台本とは違うがそこでアンヘル様からの合図があり、もう強引に軌道修正するしかないなと判断した私は声を上げた。普通一介の騎士がこのような場で他国の王に上奏するなどありえないが、何か問われたら「我が魔国の王アンヘル陛下にお声がけしたつもりだった」と言い逃れが利くだろう。

 この混乱した場に乗じた試みは成功して、アンヘル様に口裏を合わせてもらうよう目配せをする必要はなくなった。

 そうして皆が注目している中、魔王陛下の指示で私が今から何を見せるのかを詳しく語って見せた。これがレミリア様の意思に関係無く、想いに駆られた我々が勝手にやっている事だとしっかりアピールもしておく。


 レミリア様の騎士として、信頼されて預けられたこの映像入りの魔晶石をこうして勝手に持ち出した事はどうか許していただきたい。犯罪者とはいえ晒し者にはしたくない、というお優しいレミリア様の気持ちは分かる……分かるのだがこればかりは私とアンヘル様のわがままを通させていただく! いくらレミリア様の頼みと言えども聞くわけにはいかないのです……!

 真に世界を救った聖女を虐げた罪、これをこの国にはしっかりと自覚してもらわないとな。

 心優しいレミリア様の騎士がこんな事を考えていて大変申し訳ない……この夜会が終われば、貴女のスフィアは騎士道に則った、レミリア様の言葉に忠実な騎士に戻るので! 今だけ復讐に燃える事を許していただきたい。


 慈悲深いレミリア様によって断罪を中断されないように、アンヘル様が障壁を作ってクリムト殿ごと隔離したのでこの隙にきっちり偽証をした輩に引導を突き付けないと。レミリア様ならきっとあの障壁ですら、多少てこずる程度で解除してしまうだろうから。


 映し出される魔術の映像に、次々星の乙女に加担した者どもの罪が暴かれていく。

 中には「捏造だ」なんて騒ぐ往生際の悪い者達もいるが、まあその訴えが正式な司法にも通ると良いな。この場にいない、学園の使用人やレミリア様の侍女、学園に通っていた特待生枠の平民の姿も多い。関係者や家族、後援の貴族家などは面目丸潰れだが、こうして冤罪の捏造に手を貸すような者だと知れて縁を切るきっかけになったのではないか。

 騙された、愚かだったのを悪とは言わないが、偽りを口にするのは罪だと分かっていたはず。「力になりたいけど嘘はつけない」ときちんと断れば良かったのだ。……実際そう断った者達もいたが……彼ら彼女らが、偽証を求められたと、レミリア様の調査の時に証言してくれれば……。

 いや、虚しい仮定の話を考えるのはよそう。


 しかし、そうしてここが一番、と言うべき星の乙女の姦淫を明らかにする寸前でレミリア様が止めに入ってしまった。クッ、この先を見れば誰一人一切同情が湧かないほど、あの女の悪辣さを観衆に理解してもらえたと言うのに……!

 それに、個人的にレミリア様の護衛達の裏切りは大々的に追求したかったのだ。仮にも護衛「騎士」と呼ばれる存在であったというのに、主君を裏切り陥れる形で罪を犯すとは。騎士と名乗って欲しくない。なんと正義に反した存在だろうか!

 内心悔しがっていると、勝手にウィリアルド王太子と星の乙女が諍いを起こしている。なんだか、騙された被害者みたいな顔でつらそうな顔をしてる殿下に酷く腹が立つ。いや、あなたが最後までレミリア様を信じていればこんな事になってなかったと思いますが? と割って入って問い詰めたくなってしまう。いかんいかん。


 嘘がバレた次は泣き落としを始めたが、今更それを信じる者なんて誰もいない。最後は自分の罪が暴かれたと認めたくないのか発狂したように暴れ出したが、それで何ができるわけもなく、みっともない顔で泣き叫ぶ姿を衆目の前に晒しただけになった。


「ピナさん……可哀想、まじないに頼って人の気持ちを操って、それでいくら好かれたって虚しいだけなのに……そんなに、偽りでもいいから愛されたかったの……?」


 しかし、レミリア様の慈愛がここで強く発露されたのだ。

 自分を陥れた者の末路に哀れみを抱き涙まで流すレミリア様……! ほ、本物の聖女だ……いや、分かっていたのだが……

 ええい、絵師を呼べ! と言いたいところだが今は流石に無理だと私も理解している。

 このお姿は後世に残すべきなのに……と口惜しく思いつつ、そうだ後でアンヘル様にこの光景を水鏡の魔術で映し出してもらってその魔晶石の複製をたくさん作ればいいのだ! と素晴らしいアイデアを思いついた。必ず実行しよう。


「こいつはお前を冤罪で陥れた女だぞ? 情けをかけてやるなど……」

「いいえ……アンヘル。確かに身に覚えのない罪を着せられて、誰も信じてくれなかったのは悲しかったけど、わたくしは今幸せだもの。ピナさん……お金で買収して、自分の体を使ってまでわたくしを悪人に仕立て上げたけど……そんな事したってピナさんは幸せになれないのよ……? わたくしを貶めても、呪いで人の気持ちを操っても、ピナさん自身が愛される訳じゃないのに……こんなことって、すごく寂しいしピナさんが可哀想で……」


 レミリア様はなんてお優しいんだ……それに、あの罪人を悼んで流す涙の美しい事……

 想いを伝えた途端に恋人面して、ちゃっかり肩を抱きつつ一番良いポジションを得ているアンヘル様は少々気になるが。


 

 アンヘル様によって声を奪われた星の乙女が退場させられた後の会場内はまるで葬式のような雰囲気だった。

 中でも悲壮な顔をしている者達は、先ほど水鏡の魔術によって映し出された者達やその親族だろう。犯罪に荷担したことがこうして明らかになり、罪の意識のある者は崩れ落ち、泣きだし、中には気を失った者までいる。

 誰が正しくて、誰が悪しき存在で、自分が何をしたのかようやく理解したのだろう。


 あたりは騒然とし始めたが、私はそんな光景を見てもちっとも同情の念が湧かなかった。知人や血の繋がった存在もその中にいるのに薄情だろうか。


 自分の将来と天秤にかけて、声を上げられなかった者達。確かにそれは善い行いではなかったが、立場やしがらみもあって全ての人が常に正しい行動を選べる訳ではないのは分かる。

 しかし今回星の乙女に手を貸した愚か者達は、犯罪になると分かっていて嘘を吐き、偽証に関わった。星の乙女の悪意によってそそのかされたのは確かだが、犯罪に荷担することを選んだのは自分だ。罪に相応しい罰は彼ら全員が受けるべきだろう。


 それ所ではなくなってしまった夜会はなし崩し的に中断され、収拾を付けるためにこの国の王は慌ただしくこの場を辞していった。魔国との同盟はきちんとなったと、それだけは確認して。この国の生きる伝説だったこの「星の乙女」がまがい物だと判明した今、これだけは何としても、と思ったのだろう。


 会場が騒然としてくると、アンヘル様は未だショックを受けたご様子のレミリア様を伴って、素早く下がってしまわれた。

 あっと思う間も無く、実に鮮やかな手際で。


「スフィア嬢! お父上は何もおっしゃっておりませんでしたが、魔族の国に仕官されていたのですな!」

「ご家族については残念でしたねぇ……いえ、こうなっては早めに離れていたスフィア嬢が賢かったと言えましょうか」


 涙を流されていたレミリア様を早く静かな場所で休ませて差し上げたかったそのお気持ちはわかる。

 しかしその場に残された形の私達は我に返った貴族達に囲まれて、特に彼らが一応顔見知りである私には次から次へとあからさまなすり寄りを行ってきた。清々しいほどにこすい連中だな……


 騎士団長はまだ国王の信頼があったが、次期王の側近だったはずのデイビッドを飛ばして指示を出したのを見て悟ったのだろう。

 剣聖と呼ばれつつも政治力のない兄シルベストと、王太子の側近で、司令塔としても確かな実力もあるデイビッドで、騎士団内でも勢力が分かれていた。

 彼らはデイビッド……もっと言うと王太子勢力に属する軍閥の人間だ。私の実家もそうだな。デイビッドの凋落が確定して、第一王子エルハーシャと懇意なシルベスト殿の支持に鞍替えするのが難しいと判断したのだろう。一介の騎士でしかないこのような小娘に媚びを売るほど、何か思い当たるふしがあるらしい。

 絶対にそんな連中を魔国の取引に携わらせたりしないがな!


「あー……私は貿易や取引に関しては一切口を挟む権限を持っていないので……」

「いえ、そんな口利きを狙ってお声をかけた訳では!」

「そうですよ、ご実家とも関わりがありますから、私などは懐かしくなってつい話しかけてしまっただけで」


 まぁ正攻法で断っても正直に引き下がるわけはないか。どう逃げたものか……周囲を囲まれてしまっているし……と思案していたところ、「出来たわよ」というミザリー殿の声にあわせて誰かが私の手を握った。


「?! こ、ここは……城の庭園?」

「蹴散らして強行突破も出来たけど……格の違いを見せつけるためにちょっとね」


 ほんの少し得意げな顔をしたミザリー殿が、空中でまだほのかに発光している魔法陣を指の先でかき回して消した。どうやら彼女が描いた転移魔法であの場から逃げてきたらしい。やはり素晴らしい腕だな……本人は「自分は研究者だから実戦は少し自信がなくて」なんて言っていたが。


 とりあえず残りのメンバーも城内に散開しているらしく、先ほど勢いとは言えやっと思いを伝える事の出来たアンヘル様とレミリア様がおそらくいらっしゃる控えの間にはしばらく行かないでおこうという事になったらしい。うむ……今夜の、素晴らしく美しいレミリア様を男と二人きりにするのは途轍もなく心配だが……あのアンヘル様なら手なんて出せないから心配ないな!

 ちなみに。会場には煩わしいから私は戻る気はないが、せっかくだから酒や晩餐をたらふく楽しんでくる、と希望して残った猛者が二人ほどいるらしい。強いな。


「クリムト殿、その……手が」

「あ、ご、ごめんなさい……っ!」


 転移魔法を使うミザリー殿と私を繋ぐために握った手を指摘されたクリムト殿が、慌てたように手を離した。

 や、もちろん嫌という訳ではない。でもいつまでも握ったままというわけにもいかないから、その。


 離した手を気にしてあからさまに距離を取る私達に、ミザリー殿がニヤニヤしながら近付いてきて「ふ〜ん」「ほぉ」なんて面白げな視線を送ってくる。なんですかその目は。


「ねぇ、今夜はパーティーなんだからさ。この国でのレミリア様の名誉が回復した素晴らしい夜でしょう……二人とも、ちょっと踊りましょうよ」

「何を唐突に」

「いいじゃないのホラ、私が一曲奏でるから」


 そう言いつつクリムト殿の背中をグイグイ押して、ミザリー殿が私と向かい合わせにしてくる。


「姉さんが言いだしておいて自分はしないの?」

「姉弟で踊っても楽しくないでしょ。いいじゃない、今日はめでたい日なんだから」


 強引に私をダンスに誘わされたクリムト殿が、少し困ったような顔で私を見上げた。


「いやぁ、すいませんスフィアさん……ほら、姉さん困らせてるよ」

「いや、その、困ってるわけじゃないんだ。実際、真実を知って後悔するあの男達の顔は正直スッキリした。快哉を叫ぶ代わりに、この熱を発散するのにダンスもいいかな、とも思うし。うん」

「でもやりづらいでしょう? 僕の方が背が低いし」

「そんな事関係ない! ……ない、ですが……」


 周りに人はいないと言うのに、私はつい小声になってしまった。あまりに恥ずかしすぎて。


「……踊れないんだ」

「え? レミリア様と練習してたわよね?」

「男性パートで、ですね。元々女性から王子様役を求められることが多くて……婚約者がいたときも婚約者らしい交流を持ったことがなくて……」


 昔覚えはしたが、すでに忘れてしまった。この夜会のためにレミリア様の練習相手をつとめた時は、久し振りではあったが実際男性役として何度も踊ったステップだったので、体が覚えていたため問題なかったのだが……。女性パートのダンスは本当に自信がない。

 今までの数少ない機会では、周りで踊る女性を横目で見て確認しながらだった。ここにカンニングが出来る他の踊り手はいない。


「ふふ……じゃあ、僕が女性パートを踊ってもいいですか?」

「クリムト殿が?」

「ええ、スフィアさんなら上手くリードしてくれるでしょう? 僕も……やっと兄さんがレミリア様に思いを伝えてくれて、嬉しすぎて踊り出したいくらいの気分だったんです」


 ワクワク顔で竪琴を用意していたミザリー殿がすかさず旋律を奏で始めて、私は何となくその場の流れでクリムト殿と踊ることになってしまった。二人とも騎士服で、私は彼よりも背が高い。きっと男が二人で踊っているように見えるだろう。

 しっかりリードするために腰に回した手に力を込めると、思っていたよりがっしりとした胴回りを少し意外に感じてしまう。ダンスのために繋いだ手は私よりも大きくて、何だかそこを意識してしまって。男性役として何度も踊っているはずなのにステップを間違えそうになってしまった。


「すまん、きっとこれから社交の場でこんな機会もあるだろう。お互い側近としてパートナーを組むこともあるだろうから……練習しておく」

「別に僕はどっちでもいいですけどね、誰と踊るのかの方が重要じゃないですか?」


 そんな事を言われたのは初めてで。

 突然踊ろうと言いだしたミザリー様の真意は分からなかったが……なんだか、本来の男女が逆転したパートで踊るこのひと時が、とても心地良い時間に感じた。


 

 



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― 新着の感想 ―
この2人の恋は微笑ましくてすごく好きなんだけど、よく考えたらこの後クリムトと結婚して、スフィアはレミリアを義姉と呼ぶことができるようになるわけで。 好きな男性と恋愛結婚することより、もしかしたらそのこ…
[良い点] 忠義の鏡ですね
2022/09/19 15:52 退会済み
管理
[良い点] この話もコミカライズで読みたい…男女逆転たまらない…。
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