表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/185

86ー脱走してきた父

「殿下! どうして抜け出すんッスか!? 俺はトイレも行けないじゃないッスか!」


 ああ、アンジーさんがトイレに立った隙に、抜け出してきたのだな。ほら、全然休憩じゃないじゃないか。こんなところは子供っぽい父だ。


「アンジー、あなたもそこに座りなさい。休憩も必要だわ」

「奥様、だって休憩ばっかですよ。って、ぼっちゃん美味そうなの食べてますね」

「うん、おいしいよ」

「何スか、それ?」

「バナナのむしぱん」


 俺って3歳だからね。糖分の取り過ぎとか気にしてくれているのだと思うぞ。バナナの自然な甘さと、フワモチの食感がとてもおいしい蒸しパンだ。


「みゃ、らうみぃ、おいしいみゃ?」

「うん、おいしいよ」

「みみもたべるみゃ?」

「らから、みみはらめらって」

「しょうみゃ?」

「ミミは何度言っても覚えないんだから~」


 声が聞こえたかと思ったら、シャララ~ンと母の使い魔のリンリンが姿を現した。

 キラキラと光るエメラルドグリーンの、蝶の様な羽を持った小さな精霊だ。小さな人の姿をしているが、頭には2本の触覚があり目は虹色の複眼だ。

 この世界には存在しない見た目だからと、いつもは姿を消している。

 ミミは黙っていれば、普通の丸っこくて小さな鳥さんに見える。本当は余裕で俺が乗れるくらいに大きいんだ。

 魔王城へ行く時は、いつも俺を背中に乗せて飛んでくれる。魔素や瘴気を防ぐシールドまで張ってくれているんだ。

 そんな事を軽々とやってのけるミミを見ていると、やはり優秀な精霊なのだろうと思う。だけど、性格がなぁ……。


「なんみゃ、らうみぃ。なにかいいたしょうみゃ?」

「なんれもないよ」

「しょうみゃ?」

「みみは、ゆうしゅう(優秀)らなっておもってたの」

「あたりまえみゃ。みみはてんしゃい(天才)みゃ」


 なんだか読みにくだろうけど、頑張って読んでほしい。俺もミミも舌足らずな喋り方だからさ。


「ふふふ、ミミは抜けているところがあるのに、魔法は天才的ですものね~」


 お姉さん的な視点のリンリンだ。

 リンリンは母の使い魔をしながら、母の要望に沿って珍しい薬草を集めたりしている。

 だから母の側を離れている時もある。普段から姿を見せないから、いついないのかは分からないのだけど。

 いる時はこうして時々出てきて、ミミの世話を焼いてくれたりする。

 ミミって、自由奔放な末っ子ポジだよな。


「みみは、なんれもてんしゃいみゃ」

「はいはい、そうね~」


 リンリンも桃ジュースを貰っている。精霊って本当に桃ジュースが好きだ。

 あのピーチリンに味が似ているというし、それしかこの世界では口にできないという事が大きい。それ以外を口にすると、お腹を壊すのだそうだ。不思議だ。

 なのにミミは時々他の食べ物に興味を示す。食いしん坊なのだろう。


「みみも、たべてみたいみゃ」

「だからミミ。お腹が痛くなっても良いの~?」

「みゃみゃみゃ、それはいやみゃ」

「でしょう? ならやめておきなさいな~」

「わかったみゃ。ももじゅーしゅの、おかわりがほしいみゃ」

「ミミったら、飲みすぎよ~」

「らっておいしいみゃ」


 とっても平和な会話をしている。俺はそれを聞きながら、バナナ蒸しパンに齧り付く。


「ラウはこの蒸しパンが好きなのか?」

「はい、おいしいれしゅ」

「そうか、とっても自然な甘さだな」


 そう言いながら、父とアンジーさんも食べている。こうして家族揃って四阿でお茶なんて、とっても平和だ。こんな日がずっと続けば良いのにと思う。


「ラウが出掛ける段取りもできたぞ」

「そうですか。無理を言ってすみません」

「何を言う。そんな事はない」


 なんだか俺を挟んで、父と母が良い雰囲気なんだけど。それに気付かないフリをして、俺はバナナ蒸しパンを食べる。俺もジュース飲もうっと。


「らうみぃも、ももじゅーしゅみゃ?」

「うん、そうだよ」

「ももじゅーしゅは、おいしいみゃ」

「うん」


 なんでも良いんだけどね。うちには精霊が3人いる。両親の使い魔とミミだ。

 だから桃ジュースは必需品になってしまっている。しかも年中だ。よく用意できるなと俺は思う。

 そんな訳で、うちでジュースといえば桃ジュースが出てくる。


「当日は、ラウもお洒落をしていかないとね」

「え? かあしゃま、ぼくもれしゅか?」

「もちろんよ。せっかくご招待いただいたのだから、カッコよくして行きましょう」

「はい」


 どうしよう、ドッキドキだ。俺はアコレーシアの3歳の時なんて覚えていない。きっと超可愛いだろうなぁ。だって大きくなっても超可愛かったのだから。


「ふふふ、ラウ、楽しみね」

「はい、かあしゃま」

「その前に、城にも呼ばれている」

「あら、そうですの?」

「ああ、また王妃様だ」

「あらそうですの」

「王子殿下もラウに会いたいと仰っているらしい」


 王子か。久しぶりじゃないか。両親は度々呼ばれて会っているが、俺は0歳の時に会った以来だ。

 あの時は王妃が懐妊したと言っていた。前の時と同じように王女が生まれた。俺を嵌めた王女だ。

 今回はどんな王女に育つのか。王妃が嫉妬や妬みに、とらわれなかったら王女だってそんな影響は受けない筈だ。もう2歳になっているのかな? まだまだ矯正可能な年だ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ああぁぁ!リリの発売記念SSどうしようぅー!何も思いつきませんー!(>_<)

リリ⑤もロロと同じ11月1日発売でっす!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今の所平和ですね。 バナナ蒸しパン美味しい^o^そう〜 お城にも呼ばれているとは、ハァ〜何となくラウちゃんの心情お察しします。 
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ
OSZAR »