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60ー暗黒騎士サイラス

 ミミも偶には真面目な事を言う。ミミは父の能力を把握していた。

 父が3階から飛び降りた事。それは身体強化でもなんでもなかったんだ。

 父はそれだけ鍛えていた。鍛えた上でのあの、身体能力だ。

 

「ちちしゃまらけじゃないみゃ。このいえのひとは、みんなしゅごいみゃ」

「あぶあ」


 て、事はアンジーさんもなのか?


「あたりまえみゃ、ちちしゃまとあんじーしゃんは、べっかく(別格)なのみゃ」


 これは後から知った事なのだけど、父の職務内容が特殊な為に俺の家にいる人達は全員特殊な訓練を受けている。勿論、父もだ。

 父と婚姻が決まってから、母も基礎訓練を受けている。

 執事のノーマンさんは勿論、従者やメイドさん、庭師の爺さん、料理人に至るまで全員だ。

 たかがならず者なんかには負けない。騎士団だって、全員を一度に相手にしたりしない限りは撃退できる。それだけの能力があるんだ。

 身体能力だけではない。魔法がある。

 父の様に身体能力をそこまで伸ばせない者は、魔法で攻撃ができる。

 火、風、水、土の四属性だけじゃない。例えば、貴族の邸宅に潜入していたサイラスさんだ。

 彼のジョブは暗黒騎士だ。なんとも恐ろし気な響きのジョブなのだけど。

 その名の通り闇を操る騎士だ。

 騎士なのだから、剣技はお手のもの。腕っぷしだって強い。

 そして暗黒騎士特有のスキルで闇を操る。だから潜入操作にもってこいだ。自分の存在を闇に紛れさせる事ができる。周りに認識され難くなるんだ。

 夜だと滅多な事では気付かれる恐れはないらしい。

 マジでスパイだね。そっちに特化している。

 それだけじゃない。敵が闇の中にいると錯覚を起こさせる。人って暗闇が苦手なんだよ。突然闇に覆われ、視界を奪われるなんて恐怖だ。

 平常心を保たれる人なんて、そうはいない。

 その上、サイラスさんが持っているスキルで不安を植え付ける。もうダブルで恐怖心を(あお)るという訳だ。

 そのサイラスさんが今尋問している。怖いぞぅ。きっと肉体的にではなく、精神的にとことん追い詰めるんだ。トラウマになりそうだ。

 直ぐにその報告会もある事だろう。

 よし、俺もせめて身体を鍛えるぞと、捕まり立ちをして足をビシィッと出している。

 そのまま四阿で両親は優雅にお茶を楽しんでいる。仲が良いね。

 俺はそんな事は気にせずに鍛えるけどね。


「あうッ! あばッ!」

「らうみぃ、またなのみゃ」

「あぶあー!」


 なんだよ、足を鍛えているんだ。

 せめて少しはしっかり歩けるようになりたいだろう?


「らからって、しょんなことばかりじゃなくて」


 なんだよ、文句あんのか?


「らうみぃ、ふちゅうにあるくみゃ。しょのれんしゅう、しゅりゅみゃ」

「あば」


 お、おう。そうだな。普通に歩く練習をしよう。尤もな意見だ。


「らうみぃは、ときろきへんなことをしゅるみゃ」

「あぶぅ」


 変ていうな、変て。

 ミミの言う事も尤もだ。歩くぞ。歩く練習をするぞ。

 掴まっていたベンチからそっと手を離す。まだバランスがな、身体がぐらぐらするんだ。


「坊ちゃま、足がまだしっかりしていないんですよ」

「あぶ?」

「ゆっくりです」

「あばー」


 おし、ゆっくりと……一歩、また一歩。せめて側にいるおフクのところまで歩くんだ。


「ぶばー」

「はい、フクはここにいますよ」


 そう言って手を広げて待っていてくれる。まるで母の様な優しい眼で、俺を見守ってくれる。

 勿論、両親も和かに見守ってくれている。


「あぶ」

「はい、お上手ですよ」

「あばー、ぶばー、きゃっきゃ」

「はい、フクですよ」


 俺はおフクに向かってヨチヨチと歩く。一歩足を踏み出す度に身体がグラつくけど、それでも足に力を入れてグッと堪えてまた一歩を出す。

 良い感じじゃないか? さっき初めて少し真面に歩けたにしては上出来じゃないか?


「ラウ、上手だぞ!」

「ふふふ。凄いわ、ラウ」


 おうおう、そうだろう? もっと褒めても良いんだぞ。


「あばー」

「はい、もう少しですよ」

「ぶばー」


 そのまま俺はおフクの腕の中に飛び込んだ。と、いうよりも倒れ込んだ。

 ふう、まだまだだな。ほんの数メートルだ。それでこれだけ体力を使うのか?


「よくできましたね~」

「ぶばー、きゃっきゃ! ああちゃ!」

「ラウ、偉いわ」

「ああちゃ!」


 よし、今度は母のところまで歩くぞと、おフクの手を離す。


「あら、大丈夫ですか?」

「あうあー」


 ヨチヨチ、ヨチヨチ、ほんの数メートルの距離を時間を掛けて歩く。そうだなぁ、毎分1メートルってとこですか? それ位、遅くて危なっかしいんだけど。

 それでも俺は、両手を出して母へ向かって歩く。この一歩が大事なんだ。

 え? そんな大袈裟なもんじゃないか? いやいや、大変なんだぞ。

 なにしろ乳幼児は頭が重い。その分バランスが取り辛い。

 綱渡りをしている様なもんだ。それは大袈裟だけど。

 もう直ぐ母に届くと言ったところで、アンジーさんが呼びに来た。


「尋問の報告するッス!」

「おう! 聞き出せたか!?」

「はいッス……て、坊ちゃん、歩けるんスか?」

「あぶぶぶ」


 へへん、乳幼児の成長は早いのだぞ。ちょっと見ない内に成長しているものなのだ。


お読みいただき有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ちょっと0歳児が長くなりましたね^^;

ちゃっちゃと進めます(≧∀≦)

感想を有難うございます!

誤字報告も助かっております。

有難うございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラウちゃん、頑張って歩行の練習正しいミミが言うように普通の赤ちゃんが歩く様に。魔法を使っては、ダメですよ。また、母様に怒られますよ。o(`ω´ )o 公爵家の人達は、皆さん強い‼️暗…
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