区民文化祭に出品したコスモス畑の写真
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
夏休みに家族旅行で訪れた四国の高原。
そこには、実に美しい夏咲きコスモスの群生地があったんだ。
「へぇ、これは綺麗だなぁ…」
橙色のコスモスが咲き誇る高原の絶景は、一足早い秋の訪れを感じさせる見事な物だったの。
「どうかな、町子?コンテストに出品したいなら、この景色なんて良いんじゃないか。」
「あっ!それは良いね、お父さん!」
父から借りた一眼レフカメラで何枚も撮影した、コスモス畑の風景写真。
その中でも一際鮮やかにコスモスが咲いている一帯の写真を、私は区民文化祭の写真コンテストに出品したんだ。
幸いにも、私の写真は佳作として良い位置に飾られる事になったの。
「良かったな、お町。佳作入選だなんて。」
「まあね、マリナちゃん。『榎元東小学校3年1組・袖掛町子』って具合に名前も張り出されるのは、少し照れ臭いけど…」
級友の和歌浦マリナちゃんからの賛辞に、私は思わず有頂天になっちゃったの。
ここまでなら良かったんだけどね…
その事実を私が知ったのは、土曜朝のニュース番組だったの。
浮気性の恋人を殺して死体を埋めた女性が、母親に促されて愛媛県警に自首した。
そこまでは良いんだけど、彼女が死体を埋めた場所が問題だったの。
そこは何と、私達が家族旅行で訪れたコスモス畑だったんだ。
「私達が写真を撮っていた時には、まだ死体が埋まっていたんだ…」
あまりの事に唖然とした私だけど、本当の恐怖はこれからだったの。
『お町、今すぐ区民センターに来るんだ!あの写真、凄い事になってるぞ!』
「えっ?どういう事なの、マリナちゃん…」
携帯から聞こえる級友の声は、何時になく上ずっていた。
あのクールで冷静なマリナちゃんがここまで焦るとは、只事じゃないよ。
逸る心を抑えて駆け付けた区民センターは、ちょっとした騒ぎになっていたの。
「何だよ、あの顔は?」
「心霊写真か?」
来館者達の騒めきに、不安が否応なしに高まっちゃう。
だから見慣れた級友の顔を見つけて、ホッとしたんだ。
「私の写真に何があったの、マリナちゃん?」
「私が説明するより、お町自身で見た方が早いだろう。だが、何を見ても気を確かに持てよ。」
級友が指差す先を見た時、私は愕然として声も出せなかったの。
「っ…!」
何と私が撮影したコスモス畑の写真に、半透明の男性がボンヤリと浮かび上がっていたんだ。
「写した時にはいなかった筈なのに…」
悲しげな表情をした男性の顔は、ニュースで見た被害男性その物だったんだ…