(11)
「ユリット様はお優しくて、そ、その...........わ、私の自慢の........友達ですっ!」
フェミーちゃんは、顔を真っ赤にしながらそう言う。
フェ、フェミーちゃん.......!
私は、この1か月、フェミーちゃんのことを友達だと思っていたが、
彼女本人は、貴族である私と友達なんて、おこがましいと思って、
フェミーちゃん自身から、私と友達だと言ってくれなかった。
そんな彼女が、仮にも私の婚約者である、セフィア様に向かって
友達宣言など、私が嬉しくないわけがない。
私は、自分自身の頬が、少しずつ熱を持つことが分かる。
決して、ゲームでは交わることがなかった
ヒロインと悪役令嬢。
それが今、互いに友達だと認める。
私の、これまでの努力が、前世含めて全て報われたと思った。
.......正直、信じられない。
でも、たまらなく嬉しくて、夢だと思うほどだ。
夢なら、覚めないでほしいと思った。
でも、これは現実。
だって、先ほどから、セフィア様は、私とフェミーちゃんのことを、
信じられないものでも見るような目で見ていた。
「と、いうことで、セフィア様。私たちは別に、
貴方のことを必要としておりませんわ。
私たちはこれから、二人で寄り道いたしますので、
セフィア様はご一緒しなくても大丈夫ですわよ?」
セフィア様を挑発するように、私は、にっっっこりと笑う。
「ぐぬぬぬ........!お、覚えていろよ!お前たち!」
「あら、レディーに向かって、お前、などというのは、
礼儀がなっていなくて?」
「う、うるさい!いいか、ユリット!絶対に俺は貴様と婚約破棄する!
そして、フェミー嬢!ゼッッッタイに振り向かせて、婚約してやる!」
セフィア様は、そう言い残し、走り去っていく。
そんなセフィア様に、私たちは、
「私は、貴方様と婚約破棄できるなら、喜んで引き受けますわ。」
「私はゼッッッッッタイ!、婚約しません!」
と、それぞれ声をかける。
その声が聞こえたかはわからないが........どちらにしろ、
厄介な奴に目をつけられたのには、変わりない。
「や~~~~と陛下、帰ってくれましたね。」
「えぇ、まぁ、でも、学園でからんでくるんでしょうねぇ。」
「そうですね........、あ、でも!今は一旦、陛下のことを考えるのはやめて、
一緒に楽しく過ごしましょうよ!ふっ、二人で.......!」
フェミーちゃんが、緊張しながらそう言ってくれて、
私は思わず、頬がほころぶ。
「えぇ、そうしましょう。私、フェミーちゃんと行きたい場所があるので、
そこに行ってもよいかしら?」
「はい!!ぜひ!」
「おいひ~~~!」
頬に手を当てながら、フェミーちゃんはそう言う。
私たちは、とある、スイーツがおいしいカフェに来ていた。
一昨日、フェミーちゃんに誘おうとしたのだが、
セフィア様に邪魔をされてしまったのだ。
思わぬ形でこうしてフェミーちゃんとスイーツを食べることができて、
私はいま、とっても幸せな気分です。
「ユリット様は、なにをお食べになっているんですか?」
「うん?あぁ、これは、レモンタルトよ。」
そういって、私は一口、レモンタルトを食べる。
「.......あ、もしかして、一口食べたいの?」
「え?あ、いや、そういうわけじゃないんです!」
「別に遠慮しなくても大丈夫よ?ほら、どうぞ。」
私はそう言って、一口切り分けて、使っていない皿に取り分ける。
「えっと......じゃ、じゃあ、私のタルトも一口食べてください!」
そういって、フェミーちゃんは、自分が食べていた
イチゴタルトを一口切り分け、皿に取り分ける。
「それなら......遠慮なく」
「はい!じゃあ、私も!」
パクッとそれぞれ、相手のタルトを食べる。
「おいしい!」
「えぇ、やっぱりここのスイーツはどれもおいし.....」
そう言いかけた私は、ぴたっと動きを止める。
「.....?ど、どうしたんですか!?ユリット様!?」
「い、いや、何でもないの。」
そう言って、私はにっこりと笑う。
フェミーちゃんも、いつもと変わらない私の様子に安心したのか、
「それならいいんです。」
と、言い、タルトを食べることに戻る。
は~~~~~~。わたし、何しているんだ........!
今のはしれっと、何食わぬ顔で、フェミーちゃんに
あ~んできる最高の瞬間だったじゃないか!
い、いや。勿論、はしたないのは分かっている。
でもでもでも......!、フェミーちゃんにあ~んしたかった.......!
そんなことを考えるユリットが、それぞれ、食べかけのタルトを
交換したのに気づき、ギャーギャー騒ぐのは、もう少し後のことだった。
悪百合、第11話、いかがだったでしょうか?
楽しんでいただけたなら、うれしいです!
それでは、ここまでのご視聴、ありがとうございました!