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女騎士

 ララちゃんが説明したが、俺は一般人なので騎士に縛られている。おかしい。何故、俺は縛られているのだろうかと思考がフリーズする。



「ホラッ! さっさと歩け!」



 せめて馬に乗せて貰いたいのだが、騎士が高圧的な態度なので望んでも却下されるだろう。なので置いて行かれないように小走りをする。



 この騎士、絶対復讐してやる!!



 今は鎧と兜のせいで女か男か分からないが声は完全に女だ。なんで俺が出くわす女は常識が無いんだろうか。



 歩くこと数時間、流石に疲れてきた。バイクを取り出したいが、こいつらがいる為それはできない。怪しまれたくないから。



「あのー、疲れてきたんですけど~」


「……」


「あのー!」


「……」


「無視ですかー!?」


「……」


「女騎士さんよー」


「貴様、今なんと言った?」


「女騎士」


「ふふふ……そうか。女が騎士で悪いかぁ!!!」


「ええええええ!!!」



 なんでいきなり剣を抜くの!?


 女騎士って言っただけやん!!


 被害妄想してんじゃねえぞ!!!


 てか、ララちゃん止めてぇえええええ!!



「侮辱罪で死ね!!」


「生きる!!」


「はぁああああ!!!」



 問答無用らしい。縛られてるせいで手が出せないが、足は出せます。異空間から脚具を装備する。並みの剣なら簡単に折る事だって出来る脚具だ。



 女騎士と呼んだだけで怒り狂っている騎士と片足だけで応戦する。



「くっ! 貴様ふざけてるのか!?」


「縛られてるから脚しか使えないんじゃ!」


「真面目に戦えぇ!!」


「こちらとら大真面目じゃああ!!!」



 片足で騎士と激しい攻防を繰り広げる。周りの騎士達も馬を止め観戦している。何故か馬車まで止まり、ララちゃんが目を輝かせながらこちらを見ている。



 止めてよ……



 そう思うが騎士の剣速が増したせいで迂闊に目を離せない。



 くっ!


 この女騎士中々やるな!!



「一体なんなんだ! お前はあああ!!」


「だからただの一般冒険者じゃ!!」


「ただの冒険者風情が、腕を縛られ片足だけで私の剣と互角などあり得るか!!」


「知るかあ!」



 どうやら女騎士さんは俺が片足だけで応戦しているのがよっぽど気に入らないらしい。そのせいか先程より技にキレが無くなって来た。これは焦ってるに違いない。



 少し実力を見せつけるか……



「はっ!!!」



 片足だけに強化を施す。強化した脚で女騎士の剣の腹を思いっきり蹴りを入れる。



 すると、剣が砕けた。



 あちゃあ……


 やっちまったなぁ……



 女騎士は剣が砕けたのを見て放心している。どうやら信じられないようだ。ララちゃんは何故か笑っている。何が面白いのかは分からないが、お腹を抱えて笑っている。



 やばい……


 女騎士の肩がプルプル震えてる……


 怒ってらっしゃる……



 女騎士がこちらへと向かって来る。ズンズンと迫力ある歩みで。こちらに来るなと念じてみるが、何も起こらずどんどんこちらへと近付いてくる女騎士。



「貴様は何者だ?」


「いや、だからただの冒険者だって」


「真面目に答えろ」



 マジかよ……



 女騎士が首元に短剣を突きつけてきた。強制的に吐かす魂胆だろう。いや、脅迫といった方が正しい。



「だから!」


「選べ! 死ぬか……正体を明かすか!?」


「はぁ~、ララ様に聞いてみるといい。全部知ってから」


「何? 本当なのだろうな?」


「疑うなら聞きに行けばいい」



 そう言うと女騎士はララちゃんの元へと向かい俺のことを聞き出す。



「ララ様……奴は何者なのですか? ララ様の知り合いとはいえ怪し過ぎです!」


「ショウは私の命の恩人だよ」


「へっ?」


「だからショウは私の命の恩人なの。だから乱暴な事しないで……」


「ま、まさか彼がヴァルキリアの一人だと?」


「ううん、ショウはヴァルキリアじゃないよ」


「で、でででは、まさか彼がヴァルキリアも勝てない敵とたった一人で戦いララ様をお救いしたという者なのですか?」


「そうだよ」



 女騎士はそれを聞くと、こちらへと駆け寄ってくる。俺の前まで来ると、深々と頭を下げて謝罪する。



「失礼しましたぁ!!! まさか貴方がララ様をたった一人でお救いした方だとは露知らず……」


「ああ、うん、わかってくれたならいいから。それよりこれ解いてくれない?」


「はい! ただいま!」



 態度が急変した女騎士に、縛られていた手を解放してもらう。やっと自由を取り戻せた俺は伸びをして窮屈な状態から解放されたことを実感する。



 そして、バイクを取り出そうとしたら後ろから服を掴まれた。振り返ってみると、先程の女騎士が俺の服を掴んでいた。



 なんだ??



「あ、あのお叱りにならないのですか?」


「えっ、叱られたいの?」


「い、いえ。そういう訳では無く…その私は貴方様に無礼な行いをしてしまったのでお怒りになってると思い」


「うーん……」



 叱れと言われても既に怒ってない。誤解が解けたのだから俺が言うべき事はないのだが、この女騎士は真面目だから自分が許せないのだろう。だから、俺に罰を求めているのだ。



「なら、罰を与える!!」


「は、はい!」


「素顔見せて!」


「えっと? それだけですか?」


「えっ? まだ何かあるの?」


「いえ! 罰を与えると言われたので……」


「ああ……俺は人にされたら嫌なこととかしたく無いんだよね」


「……」


「えっ、何? まさか素顔見せたく無いとか? もしそうなら無理しなくていいから」


「いえ、違います。なんて寛大なお方なんだろうと……」


「寛大? 俺が? そんなこと言われたことなかったな」



 何故か感動している女騎士は兜を取った。その素顔は少々キツそうな印象だが十分に美人な分類であり、ゆるふわウェーブの髪に頭部から犬耳が出ている。



 見た瞬間、衝撃が走った。俺は犬派なんです。猫も捨てがたいが犬派なんです。今、俺は猛烈に感動している。



 これが犬の獣人……



「あ、あの」


「いやぁ!! めっちゃ可愛いですよ!」


「えっ! あの……そんな可愛いだなんて……」



 正直ファンタジーでこう言うのを見てきたがわかる気がしなかった。だが、今なら言える。獣っ子最高と。



「あの、どうしたんですか?」


「触りたい……」


「えっ?」


「し、尻尾はあるんですか!?」


「は、はい!! ありますけど……」


「是非見せて下さい!!」


「えぇええ!! その……こんな場所でなんて……」



 何故か赤面する犬耳の女騎士。なにかおかしなことでも言ってしまったのだろうかと、首を傾げていたら服を引っ張られる。



 見てみるとララちゃんが俺の服を摘まんでいた。しかも、妙に冷たい目で俺を見つめている。



「ショウの変態」


「何故!?」


「チルは、今鎧を着ている」



 チルと呼ばれる女騎士に顔を向ける。確かに、鎧姿だが何か問題があるのだろうか。再び、ララちゃんに視線を戻す。



「鎧を脱がないと尻尾は見えない。つまりショウは脱げと言っているのと同じ」



 なんだってーーーーー!!!!!


 それはそれで見て見たい!


 だが、俺は紳士!



「わかった?」


「わかりました!!」


「うむ……よろしい」


「サー! イエッサー!」



 チルが赤面した理由が判明した。しかし、大変素晴らしいものを見せて頂いたのでお礼の言葉を述べる。



「チルさん!! ありがとうございます!!」


「えっえっ? あのなんでお礼?」


「犬耳最高でした!」


「はうっ……」



 言われなれてないのか、恥ずかしいのかは分からないがチルが顔を手で隠し、頭部の犬耳がペタンと伏せる。犬好きには堪らない仕草です。



 そんなチルを見ていたら、顔がにやけてしまう。すると、足をララちゃんに蹴られる。なんで蹴ったのかと顔を向ける。



「あのララちゃん?」


「ふん!」



 怒っていた。不機嫌アピールをするかのようにそっぽを向かれてしまう。怒っている理由が全く分からない。



 その後、俺は馬に乗せてもらう事になったのだが、いかんせん乗馬などしたことが無いのでチルさんに乗せて貰う事になる。しかし、ララちゃんの指示により他の騎士の後ろに乗ることになった。



 こうして俺はアルカディアへと向かう事となった。

改訂済み

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