第八試合と仮面野郎
現在、俺は試合の為闘技場に居るのだが相手が来ない。俺の対戦相手はフリードというイケメンだ。フリードが来ない為、俺は仁王立ちで闘技場に突っ立っている。観客席を見回すと勇者達、つまり俺のクラスメイト達がいるのが見える。
どうやら俺のことに気付いているみたいだ。その中には当然鉄人の姿もあった。だが、今の俺には関係ない。
リズさんは大丈夫なのだろうか?
桐谷に頼んで清水を呼びに行ってもらったが心配である。清水のスキルは完全回復だから、安心してもいいのだけど。
そんな事を考えていると、ようやくフリードが姿を現した。
「いやーごめんごめん。ファンの女の子達とちょっと戯れてたら遅れちゃった」
こいつ顔の肉抉ってやろうか?
「さぁ、審判試合を始めようか」
フリードが審判に試合を始めるように促す。やっと試合が始まるのだと分かり、観客席が盛り上がる。
「それでは第八試合! フリード選手対ショウ選手試合開始!!」
試合が始まる。フリードは余裕なのか俺を見て笑っている。なんで攻撃をして来ないのだろうか。全く分からない。
なんだこいつ?
「ふっ……君が僕の対戦相手か……思ったより弱そうだね! それに冴えない顔してるし幸薄そうだ!」
「……」
「ん? なんだい? 僕が怖いのかい?」
「……」
「まあ僕の華麗なる美技で華々しく散るがいいさ! そして僕を引き立てくれたまぶふぇっ!!!」
憎ったらしかったので顔面に拳をお見舞いしてやった。フリードはそのまま場外へと落ちていく。
「試合終了! ショウ選手の勝ちです!」
フリードを倒して、次の対戦相手である仮面と戦える事に喜ぶ。リズさんの仇を討つと意気込み闘技場を出ようとする。
「えー、第二回戦は逆から行きますのでショウ選手対仮面選手になります。それともうひとつ報告です。第七試合で重傷を負ったリズ選手は無事回復しており、今安静にしているようです!」
そうか!
よかった……
桐谷には感謝しないとな。
それと清水にもか。
しかし、まさかこんなにも早く俺に仇討ちのチャンスが回って来るなんて思いもしなかったが好都合である。体調は良好で闘志も熱く燃えている。
だが油断は禁物だ。
奴は魔法が当たらない。それはリズさんの試合の時に確認した。どうやって攻略するべきか。
考えてもしゃーない!!
とりあえず奴を叩きのめす!
それだけだ!
俺は一旦闘技場から出て救護室へと向かう。先にリズさんの様子を見に行く為に。
「リズさんは?」
救護室へ行くと、そこには泣いていたであろう目を真っ赤に張らせたキアラさんとセラさんとソフィさんとローラの四人がいた。
それと俺が呼んだ桐谷と桐谷が呼んで来てくれた清水の二人もいる。他にもリズさんの父親のナイザー団長とリズさんの父親のルドガーさんもいた。
「あっ、山本!」
「桐谷、今回は本当に助かった。ありがとう」
「いや、俺は沙羅を呼んだだけだよ。礼なら沙羅に」
「そうだな。清水さん。今回はリズさんを治してくれてありがとう!」
「い、いいよ! 私は山本君には助けられてばかりだから少しでも、お礼を返せて良かったよ」
「そうか。でも本当にありがとう!」
俺はもう一度清水にお礼をするとリズさんが寝てるベットの方へと近付く。傷だらけだった身体も綺麗になっている。
「リズさん……」
今は眠ってるみたいだな。
そういや桐谷も以前大ダメージ受けたせいですぐには目が覚めなかったな。
「くそっ! 私は娘が大変な時に寝ていたなど一生の不覚!!」
「ナイザー、落ち着け」
「ルドガー、これが落ち着いていられるか!?」
「気持ちは分かる! 今はリズ君が寝てるんだ……」
「……すまん……少し外す」
ナイザーさんは救護室から出て行く。第一試合であれだけ溺愛してることを供述してたからな。無理もない。
「セラさんキアラさんソフィさんローラ、俺行ってきます。仮面野郎をぶちのめしに!」
『ショウさん……』
「ショウちゃん……」
「ショウ……」
四人が顔を向けてくる。俺は力強く頷き、応えて見せる。救護室を出て行き、闘技場へ向かおうとしたらルドガーさんに声を掛けられる。
「小僧。気をつけろよ」
「ルドガーさん……もしもの時はお願いします」
俺はルドガーさんのそう告げると救護室を出て行く。
二回戦が始まる。第一試合は俺と仮面の試合からだ。リズさんの仇討ちは必ず成し遂げる。
と言っても死んだわけでは無いんですけどね。
俺が闘技場へ着くと、そこにはもう仮面野郎が立っていた。相変わらず不気味な仮面をつけて全身ローブに包んでいる。
何を考えてるかもわからない。
何をしでかすかもわからない。
今だやつの正体はハッキリとしていない。
ただ分かるのは重力属性を使うのと魔法が当たらない事だけだ。突破口を見つけない限り俺に勝ち目はない。
「さあ、それでは本日二回戦目の第一試合! ショウ選手対仮面選手です。試合開始!!!」
試合が始まると同時に俺は仮面野郎に魔法を放った。
「穿空弾!!」
直撃したはずだった。だが、やはりすり抜けているようでダメージは全くなかった。
「……」
「少しは喋ったらどうだ?」
返答なしか……
俺はだんまりを決め込んでいる仮面野郎にさらに魔法を撃ち込む。
「雷斧! 水鞭!! 双炎球!!!」
連続で魔法を放つも全てがすり抜けた。何度やってもキリがない。なので、戦法を変えると同時に文句を言う。
「チッ! てめぇチートじゃねえのか!?」
「……」
「くそっ! ムカつく野郎だよ。てめぇは!!」
返答しない仮面に苛立ちながらも武器を取り出した。
「グングニール。困った時はこいつだ!」
俺は仮面野郎へと走りグングニールを突く。しかし、当たることは無かったが初めて仮面野郎が躱すといつ動作を行った。
おかしい……
さっきまでは躱すなんてことはしなかったのに…
俺は不思議に思い何度かグングニールで突き刺そうとする。すると、今度は当たった。そこであるひとつの可能性が浮かび上がる。
だが確信はない……
なら試すしかねえか!!!
俺は仮面野郎へと再び突っ込む。
改訂済み