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敗北そして祝Aランク

 今、俺はルドガーさんと対峙している。こうなったのもリズがいらないことを言うからだ。まあ最終的に承諾した俺がいけないんだけどね。



 この場にいるのはリズさんとセラさんと俺達ルドガーさんと俺だけの四人。審判を務めるのはセラさんである。



「さて、小僧。覚悟は出来ているか?」


「ええ。最初っから」


「ふん! 威勢がいいのは褒めてやろう。だがそれだけで私に一撃入れられることが出来はせんぞ!」



 そう俺たちの勝負は俺がルドガーさんに一撃を入れるだけの単純勝負だ。俺が戦闘不能になればそこまで、一撃入れたら勝ちというものにしてある。



「それでは、勝負始め!」



 セラさんが合図を出したと同時に俺はルドガーさんに突っ込む。風の如く駆け抜けて、ルドガーさんの懐に入り込む。



「先手必勝!!」



 俺は手に持っていた剣を振るう。しかし、ルドガーさんに簡単に躱されてしまった。距離を離されてしまい、俺の描いていた速攻で終わらせるという勝ち筋から外れてしまった。



「ふん、その程度で私に一撃入れるつもりだったのか? 甘いな、小僧!!!」



 ルドガーさんは握り締めていた自身の倍はある大剣を振ってきた。距離を詰めて振るわれる大剣を受け止める。ガキンと金属のぶつかる音が響き、火花を散らした。振り下ろされた大剣を受け止めたが思っていた以上に力が強い。



 ぐおっ……!


 なんとか防いだけどなんつー力だよ!!


 腕が痺れやがる……


 この威力はウル・キマイラと同等、いや、それ以上かもしれない!!



「どうした? 足が震えてるぞ!」


「くっ……!」



 やばい。



 これは最初から全力で行かなきゃ負ける。そう確信した俺は全力で大剣をなんとか弾き返すことに成功した。



「ほう……少しはやるな?」


「全力でいかしてもらいます」


「まだ全力じゃなかったのか……面白い小僧だ!! お前の力見せて見るがいい!!」


「雷神!! 炎神!!!」


「なっ!! 神級を二つ同時にだと!?」


「おおおおおおおお!!!《魔力化》!!」


「何!!!」


「炎天雷覇!!!」


「《魔力化》を持っていたのか!? ふふっ、面白いぞ小僧!!」


「いつまで笑ってられますかね……」



 バチッと音が鳴ると共に俺は一瞬でルドガーさんの懐へと入った。俺の姿を完全に見失っているルドガーさんの隙だらけな腹部に拳を叩き込む。



 これで!!!



「雷炎崩拳!!!」



 炎と雷が混ざり合った俺の拳を全力でルドガーさんに打ち込んだ。だが、俺の拳は外れる。躱されたのだルドガーさんに。



 あの状況から避けたってのかよ!!!



「今のは惜しかったぞ小僧!! 認めたくないが、貴様の実力はAランク以上と言ってもよかろう!! 私も少し本気を出さねばな!」



 そう言った次の瞬間ルドガーさんの雰囲気が変わった。どうやら本気になったみたいだ。今までの比じゃないくらい威圧感が増している。



 マジかよ!!


 あれがルドガーさんの本気か!!



「上等!!! オラァアアアア!!」



 俺は再びルドガーさんの元へと一瞬で移動する。しかし、いつの間にかルドガーさんに背後を取られていた。



 バカな!!


 いつの間に!?



「吹き飛べい!!!」



 背中からルドガーさんの大剣によって斬り飛ばされる。吹き飛んだ俺は闘技場の壁に激突して崩れ落ちる。



「ガッ……」


「ほう……やはりまだ意識があるのか?」



 殺す気かよ……


 くそっ!


 マジで痛え……!


 だけどまだやれる!!



 俺は痛みを堪えて立ち上がる。その時リズとセラが叫ぶように勝負を中止させようとする。それもそうだろう。先程の一撃は普通なら死んでもおかしくなかったからな。



「ショウ立ち上がらないで! これ以上やったらあなたが死んじゃう!!」


「そうですよ。ショウさんやめてください!! 本当に取り返しのつかないことになってしいますよ!」


 二人が必死に止めようとするが俺は戦う為に立ち上がったのだ。だから、どれだけ止められようとも俺は止まらない。見せ付けるように足を前へと踏み出す。



「なっ、ダメよ!! 本当に死んじゃうわよ!」


「お父さん!! ショウさんの実力はわかったでしょう!! これ以上はやめてください!」


「ならん!! この勝負をやめることは出来ん!!」


「どうしてっ!?」


「……」



 ルドガーさんは答えない。否、答えるべきでないと分かっている。これは俺が答えるべき問いだからだ。だからこそ、俺は前に進みながら二人に語る。



「俺の意地っすよ……」


『えっ……?』


「この勝負はもう一撃を入れるだけの単純な勝負なんかじゃないっす。これは俺の意地を通す戦いっす!!」


「どうして……?」


「俺にもわかんねえっす……でも、この勝負だけは負けられねーんすよ!!」


「ふっ……途中で投げ出すと思っていたが中々根性があるみたいだな、小僧!」



 そして俺は地面を強く蹴り、ルドガーさんの元へと走り出す。ルドガーさんに近付いた俺はフェイントを織り交ぜた攻撃を繰り出して、ルドガーさんの持っている大剣を叩き落としてみせる。



「流石だな小僧!! 来い! 男と男、拳の勝負だ!!!」


「負けねえっすよ!!!」



 そう言って俺達二人はお互い近づき殴り合う。言葉など不要。男が男に語るべきは拳と、昔から決まっている。



「うおおおおおおおおおおおあ!!!!」


「はああああああああああああ!!!!」



 その光景をリズとセラはただ見守ることしか出来なかった。女には理解できない。だって、男の馬鹿な見栄の張り方だから。



 そして決着の時が訪れる。俺の拳はルドガーさんの腹にルドガーさんの拳は俺の顔面に入った。力尽きた俺は倒れる。負けた。そう負けたのだ。俺は全力を出し戦った。その結果、俺は負けたのある。



「ショウ!!」


「ショウさん!」



 二人が俺に駆け寄ってくる。情けないけど全力を出し尽くした俺は立てないのでリズさんに抱き抱えられることになる。



 ああ……俺は負けたのか……


 結構頑張ったんだけどな……


 負けるってのは悔しいな……



 これで俺はAランクにはなれない。仕方がない。これはそういう話だったのだからと諦める。だけど、ルドガーさんから驚きの話をされる。



「小僧、いや、ショウよ。これより貴様はAランク冒険者だ……」



 ルドガーさんから言われた言葉に俺は驚きを隠せなかった。何故と、俺は負けた筈だと、それなのになんで俺をAランク冒険者にするのかと疑問ばかりが湧いてくる。



「貴様を少し認めてやる。だが、娘を貴様にくれてやるつもりはないぞ!!」



 認められた。俺はルドガーさんに初めて認められたのだ。あまりの衝撃に頭を打たれた気分である。



「お父さんったら……」


 セラさんは呆れるが、どこか嬉しそうに笑っている。上を見てみればでリズさんも同じように笑っていた。



「ぐっ……」


「ショウ、無理しちゃダメよ!」


「ルドガーさん……ありがとうございます」



 リズに抱き抱えられるように倒れていた俺は痛む身体に鞭を打ち、必死にに立ち上がってルドガーさんに頭を下げた。



「ふん……貴様は強くなれる……だが、強いからといって自惚れるなよ。精進することだ!」


「はい!!!」



 そう言ってルドガーさんは一人先に帰って行く。残された俺達三人は俺が歩けるようになるまで待ってくれた。



「でもやっぱりルドガーさん強いわね。流石現役Sランク冒険者なだけはあるわね」


「なっ!? Sランク!! 本当っすか!?」


「知らなかったの? 二つ名も持ってるほどの実力の持ち主よ?」


「知らなかったっす……二つ名はなんて言うんですか?」


「戦鬼……そう呼ばれてるわ」


「大層な二つ名っすね……」


「まあオルランド王国では一、二を争う強さだからね」


「うえっ! 俺、よく死ななかったっすね」


「本当よ!! 私もう心臓が止まるかと思ったわよ!」


「そうですよ!! ショウさん、死んでもおかしくなかったんですからね! 少しは反省してください!」


「はい、すいませんでした」



 そんなこんなで俺Aランク冒険者になったのだ!!


 やったね!!

改訂済み

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