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護衛の依頼

 前回の依頼のせいで憂鬱である。なんせ女に騙されたのだから鬱にもなる。美人だったせいで余計にだ。



 いいことないなぁ……


 俺なにしててるんだろうなー



 彼女いない歴=年齢の童貞である俺に彼女が出来るのかなと嘆く。一生出来なかったらどうしようと、どんどん悪い考えが頭の中に渦巻いていく。



 うわあああああ!!


 それは嫌だ!!


 童貞卒業したい!!



 それならそういう店に行けって思うけど、でもやっぱり俺は初めては好きな人とがいいんだと思っている。



 なんだよ!


 童貞が夢見ちゃいけねえのかよ!


 もういいや……



 気分転換にでも依頼を受けようとセラさんのいる受付に向かう。落ち込んだ顔でセラさんに尋ねると心配を掛けてしまう。



「セラさん……なんか依頼ない?」


「どうしたんですか? 何か、ひどく落ち込んでるみたいですけど?」


「気にしないでください……」


「はあ……あっ!?」


「どうしたんすか?」


「ショウさんに依頼の要請がきてるんですよ!」


「俺に依頼の要請?」


「はい!」


「俺ってそこまで有名でしたか?」


「ショウさんは知らないと思いますが、こんなにも早くBランクになる冒険者なんて滅多にいませんから、その為有名になったんですよ!!」


「ヘェ〜、そうだったんすねー」


「はい! それで依頼の要請なんですけど、他にも一組冒険者の方がいるんですけど大丈夫ですか?」


「ああ、別にいいですよ……」


「それじゃお待ち下さいね! 今から依頼書の方をとって来ますので!」



 そう言ってセラさんはカウンターの奥へと小走りで消えて行った。他に冒険者がいると言っていたけど大丈夫なのかと不安になる。前回のような奴だったら断ろうと決めた。



 頼む!!


 マシな奴であってくれ!



「お待たせしました。こちらが依頼書になります!」



 遂にセラさんが依頼書を持って戻ってきた。早速、受け取り気になる内容を読んでいく。



 えっ〜と、どれどれ?


 獣人の護衛??


 なんじゃそりゃ?


 なんで俺なん??


 こんなん騎士でええやん!




「あのセラさん。これどうして俺なんです?」


「えっとそれは、依頼主の要望なので……」


「わかりました。これ受けます」


「本当ですか!? ありがとうございます!」



 何か怪しいけど普段からお世話になっているセラさんが言うので受ける事にした。



 はぁ〜なんにもないといいけど……


 俺って運は悪い方じゃないんだよなぁー


 考えても仕方ないか……



 とりあえす明日に備える為、俺はギルドを後にする。依頼内容によれば数日間は野宿をしなければならないからだ。俺は出来るだけ考え付く限りの買い物を終えた。



 翌日、ギルドに向かうと小さな子供がフードを頭からすっぽりと被っているのを見つける。顔も分からないのでどこの子かと思っていたら、俺の方へと近付いて来る。



 んん!?


 何この子……?



 なんでかは知らないが俺のズボンを掴んでくる。手を払いのけると、今度は服の裾を掴んで来る。ならばともう一度、手を払いのけて距離を取る。



 しかし、離れても近付こうとしてくるので逃げてみると付いて来た。なんで俺なんかに着いてくるのか分からないけど面白いのでしばらく遊んだ。



 それにしても、そんなに深くフードを被っていたら暑かろうにと思っているとセラさんが近くまで来ていた。



「あの、ショウさん?」


「はい?」


「なにしてるんですか?」


「えっと、遊んでます……」


「護衛対象の方を遊び道具にしないでください!!」


「はっはぃ。すいません」



 どうやら、この子供が護衛対象だったらしく遊んでいたら怒られてしまった。やっぱセリカさんの娘なだけはあって怒ると怖い。すると、腰に衝撃を感じるので下を向くと子供が俺の脚にしがみ付いて震えていた。



 おお!


 そうか、お前も怖かったか!



「よしよし……」



 セラさんの怒った様子に怯えていたので安心させるように頭を撫でた。頭を撫でてやっていたら震えが収まりしがみついていた力が抜けていくのが分かる。そして、俺は今も足にしがみ付いている子供の事についてセラさんに尋ねる事にした。



「あのセラさん。この子が獣人なんですか?」



 ビクッと俺の足を掴んでいる手が震えるのがはっきりと分かった。先程、ようやく止まった震えが再び伝わってくる。



「ショ、ショウさん! あんまり大きな声で言わないでください!」


「へっ? どうしてです?」


「知らないんですか? 獣人は迫害されてたんですよ。今はそうでも無いんですけど、昔は酷かったんです……」


「そうだったんですか? すんません」


「いえ、でも本当にショウさんは知らないんですね」


「いやーハハッ」



 どうやら、ファンタジー特有の獣人差別がこの世界にもあったようだ。だから獣人って言葉に反応したのだろう。



 だけど……!


 見てみたい!!


 この子の獣耳を!!!


 尻尾を!!


 くっ!!


 俺は犬が大好きなんだ!


 犬の獣人であって欲しい!!



 ふと思い出す。他にも冒険者が来る事を。セラさんにその事について聞こうとしたら後ろの方から複数の足音が聞こえてくる。



「あっ、ショウさん! 来られましたよ!」


「誰が?」


「誰って、ショウさんと共にこの依頼を受ける冒険者の方ですよ!」


「そういやそうだっけ」


「しっかりしてください……」



 振り返るとそこにはフードを頭から深く被っており顔の見えない三人組がいた。一緒に依頼を受けるんなら顔くらい見せて欲しい。相手に対して失礼だし信用も出来ない。



「あなたがショウ?」



 いきなり呼び捨てな事に少し嫌な感じであるが、声を聞く限りでは女性みたいだ。それだけで少し気を許してしまう。前回の事はすっかり忘れている俺なのだ。



「そうですけど……?」


「思ったよりブサイクね」



 あろうことか初対面の人間にとんでもない事を口走ってくる。だが、事実なだけに言い返せない自分が悲しい。



「こらっ! 初対面の相手に失礼でしょ!」


「えー、本当のこと言っただけじゃない」


「二人とも~、先に自己紹介からだよ~」


「それもそうね。私はリズ! よろしくね」


「私はキアラです。よろしくお願いします」


「私は~ソフィと言いま~す。よろしくね~」


「ショウっす。よろしくっす」



 全員女性であることが判明した。俺は心の中で歓喜した。



 ひゃっほう!!


 やったね!



 いや、前回のことがあるからと飛び跳ねそうになる気持ちを落ち着ける。ここは慎重に行動せねばなるまいと固く誓う。



「えっと、では全員揃ったようなので依頼の説明をしますね。今回の依頼はその子、ララちゃんの護衛です。ララちゃんの母国である獣人とエルフと人が住まうアルカディアまでの護衛となっています。ここから約一週間程ある道のりの護衛任務になりますが皆さんよろしいですね?」



 えっ!?


 マジか!!


 そんなにかかんの?



 依頼書には長期間としか表記されていなかったので三日程度かと予想していたのに一週間と聞いて驚いてしまう。俺が焦っていると、リズ達はあっさりと許諾した。



「もちろん、私達はいいわよ」


「ショウさんは?」


「えっ? あっ! 大丈夫っす!」


「では、決まりですね。それではララちゃんのことよろしくね。リズ」


「ええ、じゃあ行って来るわね! セラ」



 親しげに挨拶をするので知り合いという事がわかった。それにしても、ララちゃんがさっきから俺の服を掴んで離してくれない。



 そろそろ離してもらえませんかね?



「ね、ねぇ、そろそろ離してくれないかな?」


「……」



 無言で喋ってくれないので困り果てていると、リズから声が掛かる。



「ほら、何してるの? 行くわよ。ブサイク!」



 あのアマ!!


 ちくせう!!


 事実を言いやがって!



「すいません! リズが失礼なことを言って」


「大丈夫っすよ。本当のことですから……」


「そうよ。そいつの言う通りなんだから早く行きましょ。ほら、キアラ!」


「待ってくださいよ! リズ!」


「ごめんねぇ〜」



 理不尽である。世の中やっぱり顔なんだろうなとしみじみ思う。その時閃いた。俺以外のイケメン殺せば俺が一番だと。



 我ながらナイスアイディアやで!!


 はぁ〜悲しい……



 狂ったような考えを思いついたが、すぐに悲しくなる。そこまでしないとモテることの出来ない自分を思い浮かべると悲しくなる。



「元気出して……」


「ララちゃん……」



 俺が悲しみに暮れていたら背中をポンポンと叩いて慰めてくれた。感激ですのあまり、今ならロリコンに目覚めてしまいそうになった。



 はっ、ダメだダメだ!


 いくらなんでも幼女は守備範囲外だ!



 なんて馬鹿なことを考えながら頭を振っていると何かが飛んで来た。ギリギリで回避に成功して飛んできたものを確認すると魔法だった。



 今のは火球か?


 まさか敵襲!?



「いつまでモタモタしてんのよ、ブサイク! 早くしなさいよ!」


「す、すんません」



 このアマ!!



 どうやら俺がモタモタしてるからって魔法を撃ってきたようだ。仮にもこれから共に旅する仲間だというのに酷い仕打ちである。



 こんなんで一週間も持つのか?


 俺殺されるかも……


 不安で仕方がありません……

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