表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/83

第四章 ~『復讐者と教育者』~


 ニコラから放たれた闘気がジェシカを襲う。針を刺すような闘気に彼女は息を呑み、傍にいた九組の生徒たちは震えに耐えるため自らの両肩を抱いていた。


「ニコラ、落ち着きなさい!」

「姉さんの頼みでもこればかりは聞けないな!」

「いいえ、聞いてもらうわ。ジェシカさんはあなたに恨まれていることを自覚しているわ。殺される覚悟で姿を現したの。そんな彼女をあなたは殺せるの?」

「…………」


 サテラの問いかけにニコラは何も答えない。無言のまま、ジェシカを見据える。その冷たい視線に応えるように、彼女は頭を下げた。


「わ、私はニコラのことを裏切ってしまった……ぅ……ほ、本当に、悪いことをしてしまったわ……ごめんなさい……っ」


 ジェシカは涙をポロポロと零しながら謝罪する。ニコラは振り上げた拳を宙に浮かべたまま、全身から放っていた闘気を収める。


「殺すのだけは勘弁してやる……ただ俺は絶対にお前を許さない!」

「ニ、ニコラ……」

「二度と俺の前に顔を見せるな」


 ニコラはそれだけ言い残して、学園長室を後にする。サテラが止まるように背中越しに声をかけてくるが、無視して廊下を進む。


 学園長室と離れるほど声は遠くなり、代わりに足音が聞こえてくる。その音は聞きなれたアリスの足音だった。


「先生、待ってください」

「待たない」

「先生……隙ありです!」


 頭に血が上ったニコラに、アリスは金的蹴りを入れる。突然の急所蹴りだがニコラは無表情のままだ。彼は振り返って、彼女と視線を合わせる。


「初めて不意打ちできましたね♪」

「ここでそれをやるのかよ……」

「なにせ卑怯者の弟子ですから♪ それに痛くはないでしょう?」

「手加減されていたからな」


 アリスの放った金的蹴りは、闘気を纏わず、勢いも最小限に抑えていた。だからこそニコラに痛みはない。しかし心に伝わるモノがあった。


「普段の先生なら、私の不意打ちなんて絶対に通用しません。頭に血が上っている証拠です」

「金的蹴りで証明された以上、何も反論できないな……」

「冷静になれたようですね?」

「ああ」


 ニコラは深呼吸すると、ジェシカへの怒りをひとまず頭から追いやる。その表情にはいつもの不敵な笑みが浮かんでいた。


「冷静になれたようですし、私たちのクラスに戻りましょうか」

「だがジェシカがいるだろ」

「いてもいいではありませんか」

「俺はあいつの顔を見たくないんだが……」

「先生、私はジェシカさんとの確執を忘れろとは言いません。ですが彼女のために先生が働くのを止めるのは悔しくないですか?」

「うぐっ……」

「復讐者である前に、先生は教師なのですから。私たちのクラスに戻りましょう。ね♪」

「アリスの言う通りだ。俺の人生がジェシカのせいで左右されてたまるものかっ! あいつに負けないくらい立派な教師になってやる!」

「その意気です、先生♪」


 ニコラは教え子たちの待つ教室へと向かう。その隣には弟子のアリスが寄り添っていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ版発売中です
i364010
また小説の書籍版は本編に大幅な改稿を行い、WEB版よりもパワーアップしているだけでなく、
WEB版では未公開の特別編も収録しております。
今後の執筆活動を続けていくためにも、よろしくお願いいたします
i364010
― 新着の感想 ―
[一言] この話で読むのやめる人多そう
[一言] 殺されかけようと長年の恩を仇で返されようと相手は反省して謝ったから主人公は許さないと駄目みたいな展開はこの手の追放物でやるともやもやしちゃうかなあ。 だったらもっと軽い感じで追いだされたくら…
[一言] いや、こんな簡単にジェシカを許すの? サテラは心を改めたとか言ってるけどニコラに対してはなんの償いもしてないよ?そのくせ過去の罪を云々と予め予防線引いてから会わせるのは駄目でしょ、この人ホ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ
OSZAR »