表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

第2話 再会の鐘が鳴る朝に sideなつき

携帯の画面に表示された名前──真白さや。


(さやさん……さや……

今度こそ……君と共にいたい)


彼女と別れたあと、頭の中は彼女のことでいっぱいだった。


学校に着き、自分の席に腰を下ろすと、隣の席の高橋りくが声をかけてきた。


「なんかいいことでもあったのか? 顔がニヤけてんぞ?」


「え? そんなに出てる?」


「出てる出てる。幸せオーラがな。

……まさか好きな子にでも告白されたとか?」


「……いや。好きな人に、会ったんだ。

はじめましてだったけど、俺、告白しちゃったんだよね」


「はああぁぁぁ?! バカなのか?!

ハーッハッハッハッ!! あのなつきが? 我が校のモテ王子が?!」


「笑いすぎだって……でもさ、逃したら二度と会えない気がしたんだよ」


りくは少しずつ笑いをおさめ、最後は真剣な顔で言った。


「……そっか。よかったな」


「なーつきっ! おはよっ!」


元気な声が教室に響く。同じクラスの天羽あやねだった。


「天羽、おはよ」


「なに〜? 二人してなに笑ってたの?」


「天羽! 俺には挨拶なし? まあいーけどさ!

こいつな、朝から愛の告白タイムしてきたんだってよ~!」


「……え。……なつき、マジで? 朝から何やってんの?

で、フラれたの?」


「フラれたよ。でも連絡先は聞いた。諦める気はないから」


「……ふーん。あ、チャイム鳴るから席戻るね」


笑顔を崩さずに背を向ける天羽。

その横顔には、ほんの少しだけ影が差していた。


彼女のそんな顔に、俺は気づけなかった。

天羽がどんな想いを抱いていたのかも、まだ知らなかった。


***


頭の中で鳴った鐘の音。

──それは再会の合図だった。


「……ソフィー。君がいなくなってから、

私はようやく君の大切さに気がついたんだよ。

もっと早く気づくべきだったのにね……」


真白さやさん。

かつて俺が……いや、想いを伝えられず、失ってしまった女の子。


目が合った瞬間、すべてを思い出した。


前世の俺は、蝋燭の明かりが揺れる静かな館に住んでいた。

そこでは、女神に仕える使いとして、

女神の遣いの子どもを宿すために「選ばれた3人」と暮らしていた。


少し気が強いが、真っ直ぐに愛を伝えてくれたカミラ。

優しく包み込んでくれる穏やかなダイアナ。

そして──天真爛漫で、いつも笑顔が愛しかったソフィー。


あの頃の俺は、“役目”という言葉に縛られて、

自分の気持ちに気づくことも、向き合うこともできなかった。


それでも……

心の奥に刻まれていた感情は、今も消えていなかった。


あの時、ちゃんと伝えていたら。

選ばれる前に、本当の気持ちを選べていたら。


君を、あんなふうに失うことはなかったのに。


だから今度こそ。

はじめましてだからこそ、君との関係を、ちゃんと始めたい。


もう一度出会えた奇跡を、絶対に無駄にはしない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ
OSZAR »