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88.全会一致でなかったことに

「【房中術】はどうやって取得したのかな♪」

ニヤニヤと大変楽しそうに聞いてくるガラハド。

 女千人斬りとかか? などと付け加えてくる。


「いや、ドゥルの畑で桃を貰って食っただけだ。やましい事はしていない」

潔白だ!


「あら、ホムラってもしかして……」

カミラが揶揄するようにこちらを見て笑う。

「いやいや、男ならこれ貰ったら試すよな?」


「なっ、どっちと答えても詰むだと!?」

イーグルは微笑みながらやりとりを眺め、淡々と酒を飲んでいて、追求に加わる気も助けに入る気もないらしい。おのれ、ひとごとだと思って!



「【攻撃奪取・生命】【攻撃回復・魔力】【堅固なる地の盾】【物理・効】【魔法相殺】、うーん、迷うな」

我関せずとスキルを吟味している様子。


「うふふ」

「どんな効果なのかなぁ?」

ちょっとカミラさん胸を腕に当てながら私の胸を指先でなぞるのやめてください! ガラハドはニヤニヤしながら煽ってくるし。


「かわいいわねぇ〜」

「あとで娼館連れてってやろうか?実地が一番だぜ実地が」

おのれ。

「よし、わかった」

「え?」



 暫し後、崩れ落ちてる三人から目を逸らし、白を呼び出し現実逃避中な私の姿。


「何をしたんじゃ、お主」

「うっかり酔っ払いの挑発に乗りました」

「複数相手はどうかと思うぞ」

「キスだけ、キスだけですよ!」

「その割にいかがわしい状態じゃぞ?」



 このスキルはどうやら精神と器用さ依存、力や体力なら兎も角、マスターリング付きの私は三人より上回っている。抵抗できるものなら抵抗してみろ! とついうっかりですね。


 カミラだけに"実地"するのもどうかと思ったのでそこは平等に。勢いで。まさかキス一つでこんな惨状になるとは思っていなかった罠よ。どこのライトノベルだこれ。惨状については黙秘権を行使します。


「カッとしてやった、今は反省している」


 冷静になって、地面に崩れ落ちている三人をせめて布団に寝かせるかと、菊姫謹製隠蔽陣布団を敷いたところで再び客観視して現場に耐えきれなくなって白を呼び出した。今はモフッている。


「白を撫でていると落ち着く」

「我は普通に戦闘に呼んで欲しいのじゃが」

「そういえば白は、ハスファーン? 結構有名だったんだな」

「今更か」

「まあ、私にとっては白だし」

「普通は戦力を期待するものじゃがの」


「私、名前を知ってしまったが大丈夫なのか?」

「ふん、【真名】はこの世界での発音とは別じゃ。人づてに聞いた名を如何にこの世界でなぞろうとも、アストラル界では歪んでおるわ」

どうやら本獣から聞かない限り、魂に影響を与える世界では正しく発音ができないようだ。


「『真名の書』に書かれたものを読むならば別じゃがな。今度は字面が分かるまいよ」


「戦力といえばバハムートを飼うことになったんだけど仲良くやれそうか?」

「飼う……何を飼うのじゃ?」

「バハムート」


「だからバハムートの名を何につけたんじゃ? お主も彼の竜は見たじゃろう。あれに似ると暴れ者になるぞ」

「いや、私が名付けたのではなくヴェルスに封じられていた白も知っている獣仲間の竜のバハムートさんです」

一緒に睨みあったじゃないか。


「アホか! あの暴れ者が人に御せるわけがなかろう!」

「まあ確かにそうなんだが、すでに住まいも用意されているし」

胸元に遊ぶ青をたたえた宝石を見る。


「……っ!!?!」

宝石がなんなのか確認したらしい白が目を見開いて背中と尻尾の毛をけたてている。ぶわっとした尻尾の手触りもまたよし。


「やると言われて本当に連れてきたのか……ヴェルスに新しく封印し直されとると思うたぞ」

白がため息をついたところでイーグルがちょっと現実に戻ってきた。


「ぬあああ!! もう!!!」

「わ、びっくりした」

次にガラハドが勢いをつけて叫びとともに起きた。


「スマンカッタ! だからもうアレは勘弁してくれ」

いつもより勢い二割り増しなガラハド。

「ちょっと調子に乗りすぎたわ、ごめんなさい」

いつの間に復活したのかほんのり紅い顔でこちらを見てはそわそわと視線を流すカミラ。

「巻き添えは勘弁して欲しい」

ため息をつくイーグル。


 開き直りの怖さを十分思い知ったらしい。

 肉を斬らせて骨を断つ感が半端ないがこれで落ち着くはず。


「まあ、私も大人気なかった」

「このことはお互い事故だと思って忘れよう。それでホムラ君、【神聖魔法】の『リフレッシュ』をかけてくれないかな?」

「ん? いいが……」

「多分それで冷静(・・)になれるから」



 『リフレッシュ』は例の封印した回復と同時に覚えた魔法だ。効果は精神・体をリフレッシュする、で疲れたときに使う魔法かと思っていたのだが。

 どうやら他の使い方もあった模様。

 やばい、魔法の効能やら私のスキルにイーグルの方が詳しくなっている気がする、真面目に後で読まねば。


「お、これ酔いも覚めるな」

「強烈だったわ」

頭を振りながら言うカミラ。


「お主らも災難よの」

白が言う。災難とはなんだ災難とは。


「お?」

「あら、可愛い」

「ホムラの召喚獣か? 名前の通り白いな」


「ん? 見えるのか?」

名前は私のステータスからかな?

「姿を消しとらんしの。人は好かんが妥協せんといつまでたっても戦闘に参加できんのじゃ。今はいかにもコレの召喚獣じゃ」

「私の癒しの毛玉だ」

白に後ろ足キックを食らった。



 布団に座って仕切り直し。

 ベリーの紅茶を飲みつつスキルの打ち合わせをする。


「神の名前がついてるのとか、単体で強力な【堅固なる地の盾】とか、対応している神の【加護】以上を持っていないとダメか。あとレベルがあるのはホムラが使えるのまでで、かつ効果は若干落ちる、ね」


「私はせっかくファルの【加護】を持っているし【神聖魔法】を使わせてもらおうかな? 【物理・効】も魅力だが、安全策をとらせてもらうよ」


「じゃ、オレ【物理・効】で行こう」


「【魔法・効】か【無詠唱】……いえ、【弓】をあげることにしたから【行動詠唱】にするわ。幸い【詠唱短縮】は持っているし、【無詠唱】の効果落ちって結局【詠唱短縮】になりそうだし」


 これは頑張って選ばれたスキルのレベルを上げろと言うことか。

 三人とも選び終えるとアナウンスが流れた。



《【まきこまれた者】がスキルを選択しました、使用の許可を出すことによって【まきこまれた者】があなたのスキルを一つ使用できるようになり、あなたのステータス値がスキル使用者一人につき5%上がります。ただしスキル使用者が途中であなたと決別しスキルの使用を中止した場合、もしくはパーティーを組んだ状態で死別した場合、あなたのステータス値が一人につき10%落ちます》


《スキルの使用を許可しますか?》



 あー、とても数値的な仲間の縁。


「末長くよろしくお願いします」

スキルの許可を出し、軽く三人に頭を下げて頼む。



《称号【絆を持つ者】を取得しました》



 ぎゃーっ!

 恥ずかしい名前の称号がががががががが。


「あら、称号が変わったわ」

「スキルを選んだからかな?」

「【まきこまれた者】から【好んで縁を結ぶ者】って愉快な称号から照れくせぇ称号に」

ガラハドたちの称号も受動的な称号から能動的な称号へ変わった様子。だからと言って効果はかわらんらしいが。

 【絆を持つ者】の効果は先ほどスキル使用の許可のときに聞かれたものだ。



「まあ、これからもよろしく頼むぜ」

「こちらこそよろしく」

「改めてよろしくお願いするわ」


「白もよろしく」

「フン。まあ、我はお主の召喚獣故な、ずっとついておるわ」

笑いながら頭を撫でて言えば、照れたのかそんな言葉を残して白が姿を消した。


「ま、白に倣ってもう寝ようぜ」

照れくさいのは私だけではないらしく、ガラハドがそう声をかけると全員同意した。


「ところで、隠蔽陣の用意はホムラにもあったんだな……」

「なにか私の知っている隠蔽陣と形状が違うけど」

「ちゃんと薄手のも買ってあるぞ?」


 考えてもみてほしい、ベッドに慣れていたら床どころか地面に毛布一枚で寝られるか? と。

 試練の崖でタシャとヴァルと会ったあと、朝起きたら神殿かもしれないとドキドキしながら一夜を明かしたこともあるが、あのときは【痛覚解放】を行っておらず、快適とは言えなかったが不快ではなかった。


 が、今は地面に毛布程度の布一枚では一時間もしないうちにあちこちが痛い。菊姫謹製敷き布団仕様なこれを二枚重ねで敷いて寝るのが快適だ。

 菊姫もそう感じたからこそ、敷き布団作ったんだろうしな、いっそマットレス……とつぶやいたのも知っている。果たしてマットレスが【裁縫】の範囲なのかは知らんが。

 マットレスは別に買って隠蔽陣をシーツがわりに敷けばいいのではないだろうか。


 ……話が逸れた。


「こう、ホムラ君と攻略を共にすると料理といい感覚が狂ってくるのだが」

「なるべく体も精神も休めるのはいいことなんだけれど、これに慣れてしまったらホムラとしか冒険に行けない体になりそうだわ」

「料理はともかくこれは真似できるんじゃねぇかな? まあでも、ホムラも機会があったら外での野営には慣れておいたほうがいいぜ? 地面に寝てれば近づいてくる魔物の気配なんか地面を通して感じることができたりすっから」

「うん、感覚が鋭くなるし、足音だったり振動だったり感じて助かったこともある。野営にも慣れて日常とは切り替えられるようにしておいたほうがいいね」


「なるほど、了解」

と、答えたものの、ほぼ寝る=ログアウトなのだが。だがまあ冒険の情緒的にも努力してみよう、新しいスキルも手に入るかもしれんし。


安全地帯(ここ)は関係ないけどね。というわけで一緒に寝させてね」

再びカミラの胸がですね。

 大変やわらかくていいんですが、こりたんじゃなかったのか。



 布団は並べて一枚に二人、上半身だけ敷き布団に、下半身は普通の隠蔽陣にという形に落ち着いた。

隣はカミラです。

起きたら色っぽいことになってたらどうしよう。


 本日は迷宮のボスよりも自分のスキルと称号との戦いだった気がする。ヴェルスもでてきたし。

 ……【降臨】ヴェルスそのものではないとはいえ呼び出す条件満たしたのか?


 スキル説明の神の一覧が他は灰色なのにヴェルスの名前だけ白く表示されている。

 え、初めて呼び出す神がアレとか抵抗があるんですが。

 ここだけだと一番親密(?)に見られそうで凄く嫌なんですが。


「それにしても光の神ってアシャと並んで『勇者』を見出す神、試練を与える神ってんで厳格な神のイメージが一般的だったんだが」

私が思っていたことを読んだかのようにガラハドがヴェルスの印象について口にする。


「隠れし神とはいえ、闇の神と違って『勇者』伝説と共に伝わる話は多かったものね」

それはヴェルナは控えめで、ヴェルスはグイグイくるから隠れきれてなかっただけでは、と疑う私。


「あの調子で試練を与えて勇者を見つけていたんだろうか」

大変複雑そうなイーグルのつぶやきで会話が途絶える。



おやすみなさい。





□    □    □    □    □    

・増・

称号

【絆を持つ者】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.35

Rank C

クラン Zodiac

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1219

MP  1570

STR 64

VIT 34

INT 123

MID 43

DEX 40

AGI 70

LUK 58


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】

【防御の備え】【餌付けする者】【環境を変える者】

【火の制圧者】【絆を持つ者】

■神々の祝福

【アシャの寵愛】【ヴァルの寵愛】

【ドゥルの寵愛】【ルシャの寵愛】

【ファルの寵愛】【タシャの寵愛】

【ヴェルナの寵愛】【ヴェルスの寵愛】

■神々からの称号

【アシャのチラリ指南役】

【ドゥルの果実】【ドゥルの大地】【ドゥルの指先】

【ルシャの宝石】【ルシャの目】【ルシャの下準備】

【ファルの睡蓮】

【タシャの宿り木】【タシャの弟子】【タシャの魔導】

【ヴァルの羽根】

【ヴェルスの眼】

【神々の(しるし)

【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】【鬼殺し】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣王】【賢王】


スキル(3SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.30】【火魔法Lv.30】【土魔法Lv.28】

【金魔法Lv.27】【水魔法Lv.27】【☆風魔法Lv.30】

【☆光魔法Lv.28】【☆闇魔法Lv.30】

【☆雷魔法Lv.29】【灼熱魔法Lv.15】【☆氷魔法Lv.25】

【☆重魔法Lv.25】【☆空魔法Lv.25】【☆時魔法Lv.28】

【ドルイド魔法Lv.28】【☆錬金魔法Lv.17】

■治癒術・聖法

【神聖魔法Lv.29】

【幻術Lv.1】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.29】

【☆魔法・効Lv.24】

【☆行動詠唱】【☆無詠唱】

【☆魔法チャージLv.19】

■剣術

【剣術Lv.31】【スラッシュ】

【刀Lv.32】【☆一閃Lv.25】

【☆幻影ノ刀Lv.19】

【☆断罪の大剣】

■暗器

【糸Lv.35】

■物理系その他

【投擲Lv.6】

【☆見切りLv.28】

【物理・効Lv.17】

■防御系

【☆堅固なる地の盾】

■戦闘系その他

【☆魔法相殺】【☆武器保持Lv.25】

【☆攻撃奪取・生命Lv.7】【☆攻撃回復・魔力Lv.25】

【☆スキル返しLv.1】

■召喚

【白Lv.14】

【☆降臨】『ヴェルス』

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.23】

 闇の精霊【黒耀Lv.31】

■才能系

【体術】【回避】【剣の道】

【暗号解読】【☆心眼】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

【☆空中移動】【☆空中行動】

【☆水上移動】【☆水中行動】

■生産

【調合Lv.28】【錬金調合Lv.35】

【料理Lv.33】【宝飾Lv.22】

■生産系その他

【☆ルシャの指先】【☆意匠具現化】

【☆植物成長】【☆緑の大地】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【鑑定Lv.40】【看破】

【気配察知Lv.41】【気配希釈Lv.39】【隠蔽Lv.40】

■解除・防止

【☆解結界Lv.1】【罠解除】

【開錠】【アンロック】【盗み防止Lv.24】

■強化

【腕力強化Lv.7】【知力強化Lv.11】【精神強化Lv.9】

【器用強化Lv.8】【俊敏強化Lv.10】

【剣術強化Lv.8】【魔術強化Lv.10】

■耐性

【酔い耐性】【痛み耐性】

【☆ヴェルスの守り】【☆ヴェルナの守り】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】

【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】

【装備チェンジ】

【生活魔法】【☆ストレージ】【☆誘引】

【☆風水】【☆神樹】



☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

房中術の効果を試して〜と感想にあったので。

誰が犠牲になるんだ?!と迷った末に全員犠牲になりました。


が、書き終えたところで別に試すの今でなくても良かったんじゃ、と気がついた。

いろいろ遅い。




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― 新着の感想 ―
[一言] この称号の追加ステータス値は装備と同じように内部数値にされてる感じですか?
[一言] カッとしてやった、今は反省している 問題起こした時の典型的だな 三人ということはホムラはバイか? お茶漬けの姪っ子とニヤニヤしながらナニしたか問い詰めたいww
[良い点] はっきり「仲間」と客観的に可視化できる状態にされると照れますよね。 照れくさいのと同時に、嬉しくて誇らしい。 その気持ちに恥じず背かぬように生きて行きそうな彼等がとてもいい。 [一言] 〉…
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