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25.対決!キングスライムのオー

 シャドウの分身がミヨと一緒に居る間も、シャドウの本体はひたすらダンジョンの下層へと向かっている。

 シャドウは既に月を食らう魔狼ハティから太陽を食らう魔狼スコールとクラスチェンジしていた。今度は黄金に輝く魔狼だ。

 そしてシャドウはついに最強の獣。獣の王フェンリルにクラスチェンジした。

 フェンリルは闇よりも黒いと言われる漆黒の魔狼だった。


 最後の戦いが始まった。

 キングスライムのオー。

 スライム種の最高位がキングスライムだ。本来スライム属は最高位であっても能力そのものはオオカミ族、ドラゴン族に劣る。

 だがひたすら力を追い求め、強くなるという一点だけを目指したオーは、魔王になることすら拒み、この100階ダンジョンの地下100階で今日も挑戦者を待っていた。

 物質系の能力を伸ばし、オーはダイヤモンドに匹敵する程体を固くすることに成功した。その巨体でボディアタックすれば大抵の魔物は潰れて圧死してしまう。次にスライム系は意外と魔法の能力が優れている。

 強力な魔法呪文も繰り出せるので、攻撃力、魔法力共に優れている。オーはまさに無敵、と思われた。


 シャドウはオーより更に巨大な狼に成長していた。だがオーに怯む様子はない。

 ドラゴン族も超大型の巨体を誇る魔物だが、そんなドラゴン達にすらオーは負けたことがないのだ。

 シャドウは、巨大な口を開けて、オーに噛みついた。

 一飲みすることは出来なかったが、オーの体が千切られる。

 驚愕のあまり、オーは叫んだ。

「何故!ダイヤモンドと同質の堅さだぞ」

 シャドウはオーの体を飲み込みながら、言った。

「硬化すればな。悪食で知られるオオカミ種を舐めるな。スキル『月食』はあらゆる魔法効果を無効とする。硬化の魔法も無論、無効化する」

 ドラゴン種は本来どの種族より魔法に長けている。魔法で身を守り、炎を吐くなど、魔法で攻撃する。

 そうした攻撃スタイルを取る敵を相手にする場合、体を変質させることが出来るスライム種は優位だった。

 相手の魔法切れを誘い、隙を見て直接攻撃で倒す。それがオーの必勝法だった。

 だがシャドウはやみくもに戦うのではなく、その敵にあった戦い方をすることをミヨから学んだ。

 攻略法だ。

 敵の弱点を探り、そこを突く。勝つための戦いだ。

 戦いを楽しむオーとは違うのだ。


 シャドウはオーのHPを7割ほど削ると、「降参しろ」と降参を促した。

「殺すつもりはないのか」

「ない。俺は、魔王になりたい」

「そうか、じゃあ降参しよう。あなたに仕えるのは面白そうだ」

 とオーは降参した。


 ダンジョンの主の間の後ろに転移魔法陣がある。

 そこから、魔界へと行けた。

 シャドウは次のダンジョンに向かう。八の国にあるダンジョンは全部で7つだ。


 全てのダンジョンを制して、シャドウは第八の魔王マクシミリアンになった。

 シャドウは八の国の魔王城へと向かった。

 魔王城、神の間。

 そこが唯一、魔族と神が直接会える場所だ。





 ***


「来たか。9年で魔王となるとは前より早いな、シャドウ」

 シャドウは非常に非常に仕方がなく、闇の神ゼルの前にひざまずいた。

 神は、まだ若い青年のような姿をしていた。

 声はあの時と同じ、感情がないような、月のように冷たい声だ。

 闇には慣れているシャドウの目でも、何故か彼の姿はぼんやりとした影のようにしか見えない。

 これまた仕方なく敬語で語りかける。

「魔王になれば、教えると、あなたはおっしゃいました。『前』とは?『やり直した』とは一体何なのですか?」


「始まりは、あのスライムがたまたま光の女神の寵を受けて生まれたことだ。あれは人間でいう聖女だ」

 シャドウは愕然とした。

「やっぱり、ミヨが聖女なのか。ヒロインて奴じゃなくて」

 ドラゴンも、そう指摘していた。あの力は、光の力だと。

 嘆きの壁を通った時も、ミヨは気分が悪くなっていたが、あれはミヨが澱んでいた嘆きの心を浄化したからだった。

「そうだ。ヒロインとミヨが呼んでいる娘は、ミヨ、当時は名前すら持たないスライムの力をペンダントにすることで聖なる力を得たのだ。だがそれは、悪ではない。少女はそれを知らなかったのだからな。ただ少女にとって不幸だったのは、そのスライムは、魔王のつがいだったということだ。魔王マクシミリアンはつがいを奪われた復讐とつがいの再生の機会を虎視眈々と狙った」

 シャドウは驚いて闇の神ゼルを見上げる。

「マモーとヒロインは、恋仲じゃなかったのですか?」

 ミヨはマモーがヒロインにほだされると言っていたが。

 ゼルは否定した。

「魔物が、一度つがいと思った相手を忘れるか?お前は忘れるか?シャドウ。ミヨが殺されてその少女を許したりするか?」

 シャドウは首を横に振る。

「絶対に許しはしない」



 一度目も出会いは同じだった。

 シャドウが外で呪い毒を受けて戻った。死にかけたが、ピンクのスライムがやってきて、無理矢理口元に葉に載せた水や薬草や木の実を置いて行く。

 時間はかかったが、何とかそれで死なずに生き長らえた。

 だが、呪われた。

「おい、お前」

「……!……!」

 呪われて腐りかけの無残な姿になったからか、ピンクのスライムに話しかけようとしても怯えて、逃げる。

 仕方がないから、まともな姿を手に入れようと、シャドウはクラスチェンジすることにした。アンテッドとなったシャドウは、呪い犬から地獄の犬ヘルに、順調にクラスチェンジするが、気味が悪い姿なのは変わらない。

 ピンクのスライムは顔を見せる度に怯えた。

 アンテッド系は大抵ブキミなのだ。

 だが、木の実をやると近づいておそるおそる食べる。


『話がしたい』

 いつしかシャドウはそう思うようになった。

 意思疎通はただのスライムでは使えない。魔王になれば、全ての魔物と話が出来る。

 シャドウは魔王になることを決意した。

 そして、出会ってから12年。

 ようやくシャドウが魔王になった時には、もう遅かった。

 スライムは、人間の少年少女の手にかかり、ネックレスにされていた。

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