自称・ドジッ子属性の大親友(笑)がウザ過ぎてしょうがないんだけど。
主人公の口が悪すぎる…ってかほぼ愚痴ってるだけな気がする。
全国のまつ子さん。すみません。
私には自称・大親友がいるらしい。私が言ってるんじゃない。向こうがそう言ってるだけだ。そして大変申し訳ないことに、私はその自称・大親友がかなり苦手である。というかウザい。
どこが、と言われると『全部』としか答えようがないところが既にアウトだろう。まぁ挙げるとするなら、
『自称・ドジっ子属性』
が大部分を占める訳だけど。
まずは何もないところで転ける。日に3度は転ける。しかも前に男子(ここ重要)がいるときだけ。つまりは転けたふりをして自分からぶつかっていくわけだ。スゴイスゴイ。
あとは割かし女子から人気のある男性教諭の授業(数学と化学)に限ってほぼ毎回教科書か課題を忘れる。たまに持ってくるとアピールする。んで先生に『お~珍しく持ってきたのかぁ。偉い偉い。』と褒められる。ヨカッタヨカッタ。でもそろそろ成績に反映されそうだから、止めることをおすすめしますよっと。
他にも諸々あるけど一貫して云えることは、全部『またドジしちゃった☆』で済ませるとこだ。あ~星ウザい。堪らなくウザい。
で、なぜそんなウザい子の大親友なんて不名誉極まりないものをやっているかと言うと、これはもう自分の馬鹿!としか言いようがない。
2年生に進級し、新しいクラスになる始業式。とってもアホな私はゲームのし過ぎて風邪を引き3日間学校を休んだ。しかも1年生の時に仲良くなった友達らは全員お隣さん。女子の皆さんはお分かりかな?そう、この3日間で女の子たちはグループを作り終えてしまったのだ。
そしてやっと熱が引いて登校した日。その事実に気付いちゃった私は焦った。流石にこれから2年もぼっちはイヤだ!何とかどっかに潜り込めないものか……。と、その時。
『高田くるみちゃんだよね?わたし、小田っていうの。高田さんと友達になりたかったんだ!』
そう、天使の笑顔で話しかけてきた子がいた。それが自称・ドジっ子だったんだけど、その当時は全然知らなかった私はこれ幸い!とばかりに小田と仲良くなった。なぜ彼女が一人でいたのか、考えもせずに。
えぇえぇ。浅はかですよ。今じゃ独りの方がマシなんじゃないかと思うぐらいには。でもね?このせまーーい学校生活、一人じゃ辛いものもあるわけよ。手を取ってしまうのも仕方ないと思って。
さて、そんなウザ子…もとい小田ちゃん。見た目が可愛らしい女の子なので、男にはモテる。女子は言わずもがなだけど。彼女の強かなところは、男女問わずドジっ子を披露するところだ。あからさまに態度が違うと反感買いやすくなるからね。しかも、それがまた可愛らしいから男は騙される。女子はといえば……まぁ気付いてるね。女の勘ナメんな?って話よ。
クラスメイトは割かし寛容だから何も言わないけど、そろそろ別なところでアクションは起きそう。頼むから巻き込まないで。
あ~なんとか離れらんないかなぁ~。そろそろ限界なんだけど。
そんなことを考えながら(いつもだけど)朝の廊下をゆっくり、ゆーっくり教室にたどり着かないように歩いていると、前からクラスメイトの武田くんが歩いてくる。
武田くん。この学校でも一、二を争うイケメン。でも『自分、不器用ですから』イケメンなので、結構無愛想。というか武闘派。剣道をやってて、女子とは昔からあまり話せません的な。いつでも背筋が伸びてるところは好ましいけどね。
「お、高田。ちょうどいいところに。」
「おはよ。何か用?」
「おはよ。あー…用って程でもないんだけどな、その、いつも俺ら騒いで迷惑かけてるだろ?だからそのお詫びっつーか…これ、一緒に行かねーか?」
迷惑?あぁ。バイト先のことか。
私はファストフード店でバイトをしている。本当は禁止なんだけど、父が亡くなって、母が女手一つで私と弟を養ってるからということで許可がおりたのだ。持ち家はあるけど、中学生で食べ盛りの弟と私を養っていくのは大変だ。少しでも足しになればと始めたバイトだったけど、そのお店の近くに武田くんが通ってる剣道場もあって、稽古の帰りに皆で寄っていってくれるもんだから、売り上げが上がって店長が大はしゃぎ。んで私の時給をちょっとだけ上げてくれた。だからむしろ感謝してるんだけど。
「別に迷惑なんかかけられてないよ。でも貰えるものは…って、ゴテゴテの恋愛映画じゃん……。」
『貰えるものは貰っておく』が信条の私だけど、さすがにこれは無理。寝ちゃうもん。観に行っておいて寝るなんて、最悪でしょ。
「アクション映画なら行ったんだけどねぇ。」
「えぇーー!?たーちゃん行かないの!?今すっごい話題の映画でしょぉ??」
あ、ウザい。じゃなくて、小田ちゃんだ。いきなり後ろから大声で叫ばないで欲しいんだけど。
「あれ?小田、いつから?」
「武田くんってばひどーい!最初っからいたじゃん!」
「そうだっけ…?」
ウソウソ。確実にいなかったよ。多分武田くんと私が話してるから、こっそり近寄ってきたんでしょ。自分も混ざりたくて。
「ちっちゃいからって見えないことないでしょー!」
「あぁ、わり。」
「んーもぅ!たーちゃんからも何とか言ってよー!絶対ちっちゃいことバカにしてるよねー!」
たーちゃんって、私ね。彼女が初めて呼んだあだ名。普通『くるみ』、って呼ぶからさ。
これは私の完全なる憶測だけど、多分呼びたくないんだと思う。自分の名前が嫌いで、自分が『くるみ』みたいな可愛らしい名前になりたかったから。
ちなみに彼女の名前は小田まつ子。普通に良いじゃんって思うんだけど、自己紹介で名乗らないぐらいには好きじゃないらしい。
「ソーダネ、タケダクンチッチャイカラッテバカニシチャダメダヨ。」
おっと、思わず棒読みになってしまった。
このちっちゃいアピールも、私にとってはイヤミにしか聞こえない。152㎝の彼女、片や170㎝の私。凸凹もいいとこだ。しかも事あるごとにこうやって『自分は背が低い』発言。うんうん、男子は小さい子が好きだもんねー。守りたくなっちゃうよねー。だからってわざわざ私を引き合いに出してくんなー?イラっとすんだわ。
「たーちゃんはいいなぁ~。背が高くて。モデルさんみたいだよね!」
それ。マジでやめて。背がでかけりゃみんなモデルになれんのか。なれたら苦労しないわっ!
「……それより、悪いけどそのチケットはいらないから。誰か他の人でも誘って?でもわざわざありがとね。」
「えっ、ほんとにたーちゃん行かないの?えーー、わたしは観たいけどなぁ……」
あぁ、うんそうだね。いかにも好きそう。
「じゃあ武田くんと小田ちゃんで行きなよ。その方が映画作った人も喜ぶよ。ごめん、ちょっとトイレ寄ってくわ。」
「あ、たーちゃん!」
多分、ってか十中八九付いてこない。いつもは『連れション大好き!』な彼女でも、ここはイケメン・武田くんと一緒に出掛けるチャンスだからね。むしろこれ狙ってたんじゃなかろーか。ハイハイ青春青春。ヨカッタヨカッタ。ケッ。
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(くるみが去ったあと)
「……たーちゃんもああ言ってたことだし、二人で行っちゃう??」
「あー……ごめん、俺も実はあんま得意じゃないんだ。なんならやるよ。気にせず観てきて。じゃ。」
「え、ちょ、武田くん!……………………チッ」
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トイレを済ませたあと。
特に用事はないけど教室に行きたくない。
あ~もう本当嫌だ……。こんだけ人を好きになれない自分も嫌だ。家に帰ってゲームしたい。はぁ。
「背中がお婆ちゃんだぞぃ!」
バシッ!
ぶっ!痛い……。この馬鹿力は、
「やっぱりチーか。相変わらず痛いんだけど。」
「だーってくるみが朝っぱらから黄昏てるからー。元気付けようと思って☆」
同じ星なはずなのになんで友達だと気にならないんだろ。不思議。
「どしたー?まぁた悩んでんの?」
「まーねぇ…。そろそろ登校拒否したい。」
「ヤーダーー!くるみが来なくなったらつまんないー!主にあたしらが!」
あの、皆でうんうん頷かないで。
「ヒドイ!人が真剣に悩んでるのに!」
「まぁまぁ。くるみは溜め込みすぎだってー。正直に言っちゃえば?私はあんたが苦手やねーん!って。」
「つっちゃんまでそんな……出来たら苦労しないよ!」
「そだねー。意外と優しいもんね、くるみって。」
「意外とって何意外とって!普通に優しいでしょ!ていちゃんのバカ!」
「バカって言う方がバカなんですぅー」
「キーー!もぅ!あんたらなんか、大好きだぁーー!」
あーこの空気!やっぱこれが良いんだよ!なんで好き好んで可愛い物談義なんかしなくちゃいけないんだよ!(主に彼女との会話はどれが可愛いかについて)
「イヤン!あたしらもくるみが大好きだよー!だからたまにはお昼こっちに来てよー。」
「行きたいけど、行かせてくれない……」
ベッタリなんだもん。
「じゃああたしらが乗り込むね!あ、ごめん移動教室だから、もう行くね!またあとでー!」
手を振って去って行く友達たち。
たかが隣、されど隣。壁1枚しか隔ててなくても、その壁は厚くて高い。学校という狭い空間は、教室という更に狭い空間に区切られて、各々の時間が過ぎていくから。同じ空間にいないってだけで大分違ってくるものだ。
このクラスの女子たちは先述した通り、穏やかな子たちが多い。だからあまりグループの垣根もなくって、普通に私と彼女を招き入れてくれるけど、彼女がそれを良しとしない。常にベッタリなのだ。その理由も知ってる。多分。
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キーンコーンカーンコーン
あぁ、授業が終わってしまった……。16年生きてきて、休み時間が来てほしくないなんて、初めての経験だよ。
あ、でも。
「たーちゃんっ!トイレ一緒に」
「ごめん、私先生に聞きたいことあるから。」
連れション、好きじゃないんだよね。一緒に行く理由がわかんない。でも今度も彼女は付いてこない。なぜなら、今受けていた日本史の授業は、おじいちゃん先生だからだ。これが数学か化学だったら一緒に来てただろうけど。
「先生!この時代って…」
「あぁ、それはですね…」
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「そっかぁ!そんなことがあったんですねー!わかりました!ありがとうございます!」
「そんなにこの時代が好きなら、もっと詳しく載ってる文献、図書館にあるので教えましょうか?」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ラッキー!こういうのって高いから買えないんだよね。図書館にあるならいつまででも読めるし。やっぱ日本史好きだわー。なんでわざわざ数学やら化学やらの先生に目をつけられたいのかわかんないわ。理系苦手だし。
ふぅ。久しぶりに有意義な時間を過ごせた。満足!
「くるみ!」
ちっ、人が満足してるのにこの男は…
「なに。」
「なんか不機嫌!理不尽だ!」
「いいから用件。」
「なんだよ~。ま、いいや。今日さ、くるみの家でゲームしていいか?」
「は?嫌だよ。私だって世界を救わなきゃいけないんだから。」
「え~!だって都美子が占領してっから出来ねーんだもん!」
「だもん言うな!可愛くない!まさかまたBLゲームやってんの?」
「そうそう。また新しいシリーズが出たとかで、スチルフルコンプしないと譲らない!って聞かねーんだよ。」
「都美ちゃんも好きだねぇ。」
紹介し忘れたけど、こいつ、武田くんとイケメンの座を争ってる幼馴染みの颯太。いや、本人たちはそんなこと知らないけどね?
武田くんが硬派な騎士タイプ(女子談)だとしたら、こいつは爽やかな正統派王子様らしい。カッコワラなんだけど。
適度に人付き合いも上手いし、クラスの中心でもある。そしてこいつは私と幼馴染みだってことを隠さない。だからこーやって構ってもくるけど、特にやっかみとか嫌がらせとかされたことはない。それもこいつの人望だろう。そこは素直に凄いと思う。都美ちゃんはBLゲーム命!な颯太の妹。可愛いけど腐った思考の持ち主。
「でも残念。みんなが勇者を待ってる!」
「そんなこと言うなよ~!交代でやろ?何時間でも待つから!」
「おま、私ん家にどんだけ居座るつもりよ…」
「いつまでも!くるみと対戦出来るまで!」
「え?対戦なら」
「なになにぃ~?何の話ぃ?わたしもまぜてっ!」
あ~来た来た。ウザ子、いえ、小田ちゃんが。
彼女が私にベッタリな理由もこれ。こいつ。颯太を狙ってるっぽい。ことさら上目遣いと大親友アピールがヒドイ。私を経由して~だろうけど、私は一切合切何もしないから。オトシたいなら自分でがんばって。
「小田ちゃんはわからないよ。ゲームの話だから。」
「そっか~。でも夜通しでゲームも楽しそうだね!パジャマとか着てね!わたしも颯太くんと対戦してみたいなぁ!」
「……………………ご、ごめん。俺、数学の課題やってなかったわ。くるみ、またあとでな。」
「颯太くんってば、どーしたのかなぁ?顔真っ赤だったけど、大丈夫かな??」
颯太…お前、彼女のパジャマ姿想像しただろ。よかったね。脈ありそうじゃん。オメデトオメデト。ケッ。
「……ところで、小田ちゃんは課題いいの?やってきたの?」
「ちゃーんとやってきたよ!カバンに入れたのも確認したし!凄いでしょ!エッヘン!」
「あー…うん。エライエライ。教科書は?」
「え?…………あーー!机に置きっぱなしにしちゃった!どーしよーー!また怒られちゃう!」
「…………貸そうか?」
なんかウザいから妨害したくなった。
「え!?い、いいよぉー。たーちゃんが大変でしょ?」
「別に。なんなら武田くん(実は隣の席)に見せてもらうし。」
「だ、ダメだよ!武田くんにも迷惑かけちゃう!絶対ダメ!」
「大丈夫だよ。武田くんだって、そんな心狭くないでしょ。」
「ダメだって!」
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[くるみとまつ子が言い合いを続けてた頃]
颯太サイド
(ヤッベー!小田さんが変なこと言うから想像しちゃったじゃん!くるみと夜通しパジャマでゲーム…裾から見えるうなじ…疲れて寝ちゃったらお、同じベッドで寝るんだよな…無防備に寝るよな、くるみは…かかる寝息…俺、何もしない自信がない!絶対手ぇ出す!唇、柔らかいかな…どんな感触、ってストーーーップ!!これ以上はヤバイ!顔すっげ熱い!バレたら殺される!ってか変態扱いされる!ちょ、今日行けねーーー!)
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武田サイド
(え?俺が高田に教科書見せんの?チャンスじゃん。さっきの仕切り直ししよ。今度はアクション映画を調べておかないと。土日のどっちか、空いてるかな?バイトじゃなきゃいいけどな…。バイトがもし遅くなるようなら、今度から送っていこう。危ないしな。そしたら今よりも近付けるだろうし。高田に言ってみよ。)
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教師サイド
「いやぁ、高田は勉強熱心ですねぇ。授業のあとにわざわざ聞きにきましたよ。嬉しいもんです。」
「へぇ~…数学のところには来たことありませんよ。」
「そういえば化学もないなぁ。」
「そうなんですか。じゃあ日本史が好きなんですね。図書館に文献があるって教えたら、凄い嬉しそうにしてましたし。」
「「そうなんですかぁ…(なんかムカツクからあとであててからかうか。)」」
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チー、つっちゃん、ていちゃんサイド
「しっかし、意外と気にしぃだよねー、くるみは。」
「チーならはっきり言いそうだもんね。」
「くるみはドライに見えて世話焼きさんだからねぇ。」
「くるみが巻き込まれないようにしないとねー。」
「確かに。あの子の巻き添えとかホントないわ。」
「ないねぇ。」
「あ~なんで同じクラスじゃないのーー!!あたしの楽しみがー!」
「叫ぶな叫ぶな。」
「でも本当面白かったよねぇ。」
「「「くるみのスルースキル」」」
「あの子変なとこ鈍感だから、颯太くんの気持ちに全く気づかないの。見ててカワイソウだったわw」
「あんなに好き好き光線送ってんのにねw」
「つっちゃん好き好き光線って…まぁあの熱い視線は確かに光線かもw」
「あれを間近で見るのが面白かったのになー。」
「しかも今は武田くんもでしょ?」
「面白すぎるぅ~!!」
「それを完膚なきまでにスルーするくるみ!」
「モテてることにも気付いてないからね。」
「颯太くんも武田くんもヒヤヒヤものだねぇ。」
「「「ほんとくるみってばネタの宝庫だね!」」」
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「貸すってば。」
「いいの!」
いつまで繰り返すの、これ……。
本物のドジッ子は、ブラジャーをつけ忘れちゃうような子です!(実話)
1年から2年に進級するときはクラス替えをしましたが、3年に進級するときはしませんでした。だから2年間ぼっちの可能性。
ちなみに私も背がでかいので、ちっちゃいアピールする女の子は嫌いです。背が低い人は低いなりの悩みがあるでしょうが、当然でかい人にもあるのです。電車の吊革にぶつかるとか。意外と痛い。