少女は魔法を夢見る
適当が半端じゃないですか、どんな意見でもいいのでいただけると嬉しいです。最後で読んでください。
鳥羽華10歳。 私は小学生です。
漫画がとても大好きな四年生。毎月のお小遣いを漫画を買うのに使っています。そのおかげで私はある『漫画』をきっかけに素敵な友達と出会うことができました。それをお話しします。
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「森で妖精を見かけた少女は、森の奥へと逃げて行くのを追いかけて小さな池へとたどり着きます。そこで、妖精王と呼ばれる存在に会い、小さな妖精を育ててくれと頼まれた。少女はそれを受け入れてその妖精を両手に包んで家に帰りました。けど、妖精はわがままで横暴でした。過ごして行くうちに打ち解けていき育っていき、ある日の夢に妖精王が出てきて明日のうちに返してもらうと。次の日に泣く泣く別れの時がきて妖精王がお礼として1つだけ『魔法』を与えてくれた。その魔法とは何か?ていう話なの。」
「いやいやいや、長すぎるよ、華ちゃん。もう少し短くならないの?」
呆れた顔をしながら話しているのは隣の席の穂村 楓ちゃん。一年生からクラスが一緒で今では親友です。
「話が長くなるぐらいその話が好きなの。妖精、魔法といか言った異能なことが日常にあったら、私死んでもいいぐらいな気持ちになりそう。」
「その漫画って10年前か20年前のものだったけ。」
「1980年に発売されて国民放送局でアニメとして放送されたって、言われているんだよ。」
チャイムがなる。みんながそれぞれの席へと喋りながら帰っていく。私もそれに便乗して、自分の席へと戻る。今日もまた繰り返しの毎日が続いて行く。そんな日々に少しだけ不安があります。
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日が傾き緋色に輝いている。窓を見ると太陽が、山の後ろへと隠れるように逃げて行く。
そんな夕暮れ時に私は、まだ学校にいた。宿題や日直の仕事の日誌を書いていたらこんなに遅くなっていた。そろそろ、家に帰らなくてはいけない。
「まさか、同じ日直の子が急病で休むなんて。日直が2人になっているのが、よくわかった気がする。」
少し疲れた。重い足を引きずるように人気のない長い廊下を歩く。それが疲労している体を蝕んでいく。下駄箱で靴を履き替え、いつも使っている裏口へと向かう。
「、、、、、、、、、、、、」
「なんの音かな?この辺りに動物にしては少し違うような気がするけど。ちょっと怖いけど見てみよ。」
その音は学校の裏に1つだけある大きな銀杏の木?の根元で聞こえた。発泡スチロールを擦り合わせ背筋をゾクゾクとさせるように近いが不快ではない。脳に直接聞こえてくる感じだ。
根元の草を両手で掻き分ける。そこにいたのは、あの漫画のような妖精だった。全長は10cm程度。ライトグリーンの全身、頭は逆さトサカでデカイ、反対に手足は細くアンバランスだ。でも、それこそが妖精だと言える体だ。しかし、一箇所足りない部分がある。羽だ。羽がない。
「あなたは妖精なのね。どうしたの羽が無いようだけど。」
「ーーーーーーーーーーーー」
何か訴えているようだが、よくわからない。妖精という未知の生物、幻想種に人間の言葉が通じるという道理はない。そもそも、小学生の華には妖精が喋っている内容が日本語以外、学校でしか習ったことのない英語ではないということしかわからないので、今どうやったら話が通じるのかを知る由はない。だが、妖精が彼女に向かって助けを求めていことはわかる。
「何か困っているようだけどここじゃ落ち着いても話すことはできないわ。」
両手で合わせるように妖精を包み染み学校を裏から後にする。
♢♢♢♢
彼の名はスヌゥドル。風と光の元素体の妖精。東の妖精王が治める森で暮らしていたらしい。そこでの生活にあまり満足をしていなかったスヌゥドルたちは人間の元へといきイタズラをしたらしい。度がすぎたことを何回もしてしまい、妖精の象徴と言える羽を封印されたらしい。羽をなくすことは妖精としての概念を失う。妖精ではないという。
「なるほどね、まさか魔法が日常生活に役立つなんて思わなかった。光魔法だっけ、指でなぞったところを光らせて文字を浮き出すエア黒板みたいなものなんだね。最初から不思議に思っていたのだけどなんで日本語がわかるの?」
『東の妖精王が大昔に天皇との協定を結ぶために日本語を覚えたんだ。それが、羽を通じて僕たち妖精全員に伝えられて覚えているんだ。』
「つまり、羽はアンテナみたいなものなんだ。」
『アンテナとはよくわからないけど、理解してるならいいや。』
人間の近代文明はわからないらしい。妖精たちは人間が文明を築く前から技術が進んでいたらしい。多分ほかにも知らないことが色々とあるのだろう。それを概念を失ったスヌゥドルに聞くのはヤボなのではないのかと、華は考えていた。
『なんだ、せっかくの異能なことなのに聞かなくていいのか?知りたい人間も限られているしな。なんなら魔法でも覚えて見るかい?』
「私にも魔法が使えるの?」
華の目が輝いた。息も荒く体を上下にさせながら、手を胸の前に持っていき手を合わしている。しかも、声がでかい。
「華ーーちょっと声がでかいよ近所迷惑と、電話の邪魔だから!」
母の声が彼女の部屋にしっかりと響き聞こえる。
華とスヌゥドルがいるのは彼女の家、鳥羽家の二階の華の部屋だ。スヌゥドルを発見して手で持ちながら帰ってそれからは部屋にこもっていた。もう2時間が経つ。そろそろ晩御飯の時間だ。
「スー私は晩御飯食べてくるけど何かいる?」
『僕たち妖精は食事するなどのことは必要ないんだ。自然の中にいるのことによって生命活動のに必要なエネルギーが手に入るんだ。気持ちだけいただいておくよ。ありがとう。』
「わかった、後で魔法教えてね。」
華は部屋を後にした。がらんとしている。スヌゥドルは甘い香りのするハンカチを布団として仰向けになる。一息を吐き目をゆっくりと閉じ瞑想をした。
(まさか、王様の魔導書を盗んだだけで森を追放されて、それが裁判が決まるまでとは。羽がないからあっちの事がわからないのだけど、それはお互い様か。匿わせてもらってる御礼として華には魔法を教えることになったはいいが、何を教えようか。)
光属性、風属性、空間魔法、移動魔法、、、、たらなんとか考える内に時間は無情に進んでいく。
「スー寝ているの?この後魔法を教えてくれる約束だったでしょう。」
『いやー起きてるよ。てゆうか華がご飯たべるの早くない?後、スーて僕のあだ名かな?』
「うんそうだけど、どうしたの?何か不満でも。」
『人間が妖精をあだ名で呼ぶこと自体がほぼ無いのだけど、、、今はいいか妖精でもないし。』
「あなた、以外と前向きなのね。」
♢♢♢
あれから、数日が過ぎていく。華とスーは夜な夜な家を抜け出し人気の少ない公園で魔法の練習を始めた。妖精だけでなく人が何も持っていない素手からいきなり火を出すと、注目を浴びるのは一目瞭然。なので、家族など大抵の人々が寝静まった夜に練習をしている。その内容は体内の魔力の制御、魔法についての知識、魔術についての座学などである。
「これが、思念伝達なのね。」
「僕が使っている思念伝達は超能力という部類だけど魔力を持たないものには伝わらないからね。それじゃ魔法と魔術の区別を言ってみてから実践に移ろうか?」
「うん。では、魔法は元素体を使って属性を与えて魔法陣に組み込み超常現象を起こすのだよね。えっと、魔術が古来よりある骨董品みたいのにこもっている力を使ったり、儀式で力を得たりすることなんだよね。」
「単語に違和感がすごくあるけどだいたいあってる。さぁ、ここ数日でやってみたことを繋げてやってみよう。」
「うん。」
ここ数日で蓄えた魔力を隆起させる必要な分だけの魔力を右手に集める。それを光へと想像して上書きをする。すると、淡い虹色の輝きが白色に変わる。それはまぎれもなく光だった。ただの光ではなくうっすらと周りに魔法陣が円状に回っている。
「もっと魔法陣を意識して魔力を集中したまま。そう、その調子!」
「そして、あの木に向かって手を向ける。後は切り離しと同時にロケットのように飛ばす。」
手を大きく広げ、手の平を砂場の近くにポツンと突っ立っている木に向けて突き出す。彼女の額には少し汗が垂れている。口を少し開けスゥーハァースゥーハァーと呼吸を整えて準備をする。
「いくよ!『光の魔弾』当たれっ!」
手、射手から放たれた光の玉は細長い突起のもの、矢へと変形した。それは瞬きする暇もなく木を横切る。当たらなかった。彼女は落胆した。あれだけ頑張ったのにかすりもしなかったからだ。しかし、それは違った。木を削っていた。矢の形で。そのまま木はなくなった部分を補うかのようにバキバキと音を出しながら崩れ倒れる。
「やった成功だよ成功。私もこれでようやく魔法が使えたよ。あの漫画とは違う方法だけど。うれしいなぁ。」
「それはそれでいいのだけど、華」
「どうしたのスー?」
「どうしたのじゃない!逃げるぞ、あんな大きな音を出したら人が寄ってくるぞ。」
スーが指差す方向には光が二つと人の声が、
「あっちですごい落としたよな、行こうよ。」
「SNSにあげてみるか。さっきの音も偶然ひろえたし。」
若い2人組の声がだんだんと近くなってきた。このまま、ここに居残ってしまうといろいろと面倒なこととなってしまう。つまりは、
「早くこっち来い!この道から家に戻るぞ。」
「え〜この喜びを味わうこともなく走らなきゃいけないのぉ。」
「しょうがないだろ。見つかるよりはマシだろ。」
「むぅーそうだけど。」
2人はあーだこーだと言い合いながらそそくさと逃げていく。魔法には成功はしたけど隠密行動には失敗したのだ。華だけでなくスヌゥドルにも課題はまだあったのだ。2人はロクに喜びを噛みしめることなく家へと走り続けたのであった。
「お風呂にも入ったのに〜もう最悪だよ。」
♢♢♢♢「あれは妖精の中でも貴族。僕たち普通の妖精とは違って生きている年が違うんだ。」「年期が入っていて、中年のおっさんみたいだね。」
「あれは、森を追い出された、スーではないか。人間の少女を隠れ蓑にしているとは妖精の好む場所にはいないはずだ。報告をして俺の手柄を上げてやる。くくくくっっ。」
華達がいた公園の上空にわずかな点のように佇んでいる存在がいた。高く笑い少し不気味だ。
♢♢♢♢
あれから1日が経ち夜の10時。2人は華の部屋で今後の移動について話していた。
「昨日、あんだけ派手に魔法を発動したから場所を変えなければならなくなった。」
「えぇー面倒くさいな。あそこにそろそろ慣れてきたのに。」
「面倒くさくないぞ。これまでとは違う移動方法にするから。」
「どんな方法。」
「俺の元同族が集まるかもしれないから徒歩ではバレるかもしれない。だから、この空間魔法『超次元の穴』を使うぞ。」
「何これ?ワープホールていうやつなの?」
『超次元の穴』は空間魔法に属する魔法の一つ。穴を潜ると設置した場所へと瞬時に移動することができるという上級魔法。これを習得するにも長い年月がかかる。そして設置するからには
「今日は目的の場所に歩いていかなければならないからな。行ったこともない場所には接続できないからな。」
「便利そうで便利じゃない魔法なんだね。てか、やっぱり歩かないといけないんだね。」
♢♢♢♢
「おっと、やって来ましたよ、主人。あれが追放されているスヌゥドルです。」
「あんなちんけな奴が王の宝の一つ時空の書を持っているのか。あれを手に入れるとわしの貴族としての地位が上がるってもんよ。よくやったぞ、裏切りのギリー。」
「裏切りなんてしてませんよ。あっちが勝手にしただけなんですから。そもそも、あれを王の元から切り離せとか言ったのはあなたではないですか。」
「まぁそうだが、わしがあれを手に入れた暁には貴族の地位を与えるから楽しみにしておくのだよ。」
上空には小さな赤子ぐらいの大きさの人型に小さく細長い物体が数個取り巻いていた。彼らの目の先には小さな女の子に同じく小さなものがいた。それらに気づかれないろうに跡をつけていたのだ。
「なぜこうもわしがあんな奴の後ろをコソコソとついていかなければならないのか?」
「あの妖精は例の者の眷属という噂がございますので。用心はしておいて損はないかと。」
「ほぉ例のあやつか。確かに用心はしておいて良いのかもしれないな。仕掛ける時は貴様に任せておくぞ。ギリー。」
「お任せください。」
不気味な集団はこっそりと2人の後をつけていった。
♢♢♢♢
華とスヌゥドルは初秋の風が優しく肌を撫でる薄暗く蛍光灯がカチカチといっているコンクリートの上にいる。
「よし、今日は他の属性にも挑戦してみようと思う。」
「火とか水とか雷、土、氷、闇とかだよね。」
「そうだ、一応それらの初級魔法はできているから、中級魔法でもしてみようか。」
「やったね。」
2人がいるのは先日いた公園から数百メートル遠い森の工場跡にいた。ここは人の出入りがここ数ヶ月ないとクラスの情報通から華が聞き出していたらしい。その通りで工場内には人の気配が全くなく心霊スポットにでもなるのではないかというぐらい奇妙である。そんな雰囲気は2人には一切ない。むしろ、それを払拭するかのように生き生きとしている。
「雷魔法は結構魔力を消費するから火魔法にするかな。とは言っても火の魔法はイメージがしにくいから大変たど思うのだけど。」
雷は、高濃度の魔力を込めなければならないから魔力を余り持たない人が使うと魔力欠乏となって明日の練習になるらしい。氷魔法は水から氷にするのではなく基本何もない空気中から氷を召喚するのが一般的らしく召喚をしたこともないと無理だと。土魔法は遠隔操作をして土などを操るらしいがこっちも遠隔操作を特訓してないと扱いことすらできないと。だから、火の魔法という先ほどの魔法よりは魔力消費が少ないらしく操作も簡単らしい。だけど、火から離れて生活している現代人は火というものの想像がしづらいとスヌゥドルは言っている。
「大丈夫だよ。昔お父さんとどこかで火起こしとか何回もしているから火の危なさとかわかってるから。まず、魔力を手に集中をする。」
淡い虹色、魔力が彼女の手にあつまる。それを振り子のように体の後ろに手を振りそれを上空へと突き上げる。魔力の塊が空へと打ち上がる。少しずつ緋色に染まり始める。
「もっともっと激しく激しく燃えろ!」
魔力の塊は火、炎へと変化した。熱く燃える。暗かった場所が炎を中心として明るくなる。その明るさに一筋の光が混じっていた。普通は気づいたところで何とも思わず無視をする。だが、逃亡者であり魔法のエキスパートであるスヌゥドルは僅かなそれを見逃さなかった。
「光の射手よ、悪しき敵となるかの者を穿て光の矢を持って《光合の矢》」
彼の両横から魔法陣が出現し、光り輝く矢が射出した。それらはすぐに合わさり先ほどとは違う大きさ、速度で目標を追う。向かう先では木の先端でがさごさと小さな物体がちりぢりと別れていく。しかし、残っていた大きな物体に光の矢が突き刺さる。
ウギャーという悲鳴とともに木から誰かが落ちる。
「ぐうぅぅう、痛い痛いではないか小僧が!なんてことしてくれる。わしを何者だと思っておる。東の王国序列35位のハルデュル様だぞ!」
大きな声で喚き散らす男は横腹にスヌゥドルが放った光の矢が深々と突き刺さっている。血が滴り落ち結構重症に見える。
華は突然の来訪者に驚いている。
「スー彼らは何者なの?」
「彼らは僕を追放した東の妖精の森の人達だよ。で、あの矢が刺さっているのは僕を追放と1番に名乗り出たハルデュルだよ。」
「様をつけんか様を。全く下々の妖精は礼儀がなっていないの。妖精の恥だ、恥。羽がなければ妖精の恥にもなれないか。」
「隠れて僕たちの隙を伺い攻撃をしようといていた奴になんて言われようと、どうも思わないけどね。だけど、ギリー。君までいるとは思わなかったな。今度は何をしにきたのかな?」
ハルデュルの後ろから出て来たのは赤い外套で身を包んだ妖精だった。スヌゥドルとは違い身体は全身赤く輝いている。
「スー久しぶりだな。約束通り貴様が持っているブツをいただきに来た。ついでに貴様の命もな。」
ギリーは木の上からスライドしながら降りてくる。スヌゥドルは、華に近づき、
「華はここから逃げろ。」
「なんでよ、スーが狙われているのに。私あなたを置いて逃げれないよ。」
「僕はこんな人数を相手にして、君を守れる自信がないんだ。頼むから逃げてくれ。」
2人の周りは小さな物体妖精たちが取り囲んでいた。その数は30超。もはや、華が逃げる隙間はない。
「私もこれだったら逃げられないから手伝うよ。」
「その少女には用はない。素早く無力化しろ。どうせはそこらの魔法使い以下だろう。」
「「御意。虚無の銃弾」」
妖精たちが同時に魔法を唱える。虚無の銃弾、単体だとさほど効果がない魔法だが、何発も受けると気を失う虚無属性の魔法。それが華にめがけて襲いかかる。
「属性魔法の壁、虚無の壁。氷結の風」
スヌゥドルが唱えた魔法は華を中心に壁ができる。それを虚無の銃弾の進路を防ぎ華へ当たる事はなくぶつかり消えて行く。その後に彼が唱えた氷結の風が妖精たちを氷漬けにしていき身動き取れず地面へと落ちて行く。
「大丈夫か、華!」
「隙有りだ、スー!雷の刃 《サンダー・ブレイド》」
無数の魔法を防いだスヌゥドルに向かいギリーが魔法を唱える。雷が手へと集まり剣の形へと成していく。そのまま、スーに接近していき、その剣を振るう。
「スーーー!」
華は叫ぶ。彼を庇うかのように突き飛ばす。剣はスヌゥドルに当たらない。彼女を斜めに斬った。その勢いのまま倒れた。動かない。華は意識が飛んだようだ。
「こんなものなのか、人間。ましてやこんな馬鹿を庇うなんて。まぁいい、とりあえず殺すか。」
「やめろぉおおお。」
風が彼の腕から突風を生み出し敵を後ろへ大きく飛ばす。華の肩を大きく揺する。
「おい、華起きろ。おい、おいぃ。」
何度も揺するが起きる気配はない。息はしているが、受けたダメージが大きいように見える。
「あれを人間がまともに受けて起きあがれるわけがない。さぁおとなしくころされろよ。」
すると、ギリーの小さな体が膨張して段々と大きくなっていく。それは妖精ではなく人間と言っても良いぐらいの大きさとなった。容姿も変わった。突起でしか表せないような顔は生物の顔となり青年と言ってもよい人間となっていた。
「人間が嫌いだがこの体は素晴らしいと言ってもいい。なぜなら、魔力向上、質量を手に入れれる。そうだろうスー。お前の好きな人間は俺たちが持っていないのものをたくさん持っているからな。」
「なぜ、君がその秘術を知っているんだ。」
「まさか、お前が隠し持っている秘術の書かれた魔法書の中身がこれだったとでもいうのか。はっ、飛んだ笑いもんだ。お前がしてきたことは意味がなかったな。」
ふはははは、とギリーは笑う。逆にスーは顔を曇らせている。
(あれはまだいい。もう一つが漏れていたら、世界が大変なことに。)
「それなら本当に用済みだ2人まとめて殺してやるよ。」
キリーが詠唱を始め、スーも遅れて始める。だが、見るからに遅い。
「油断大敵とはこの事よ。少女と共に凍り付け!。」
まさに魔法が発動する直前、ギリーの足元から地面から炎が立ち上がり、爆発。彼の体が火だるまへとなりながら横へと吹き飛ぶ。吹き飛んだ者とは反対に佇む姿がある。それは、先程まで横たわっていた少女が両手に火炎の輪を纏い立っている。
「そこのあなたに教えてあげるわ。油断大敵というのがどういう意味なのかを。」
ビシッと華はギリーに指をさす。
==========華は意識がなかった時夢をみていた。===========
ゆっくり目を開けると目の前に焚き火がある。まだ、明けない夜を照らすかのように燃えている。起き上がると隣に誰かが丸太の上に座っている。無精髭をはやし、短髪の中年の男、見覚えのある顔だ。
「よぅ久しぶりだな、華。」
「お父さん、ここはどこなの。早くスーの所へ戻らないと。」
「慌てるな。ここはお前の意識の中だ。わけがあってちょっと自分の意識をお前の中に入れてたんだ。」
ニッと笑って彼女の頭を撫でる。それを払いのけ、
「そんなことは今はいいの!ここから抜け出すにはどうしたらいいの。」
「今ここから出たとしてもあいつには勝てないぞ。少し手助けしてやるからここに座れ。」
うう、と唸るがすぐ隣に座った。男はそこに落ちている木の棒を拾い地面に落書きをしだした。
「魔法は魔力と詠唱が大事と言われているんだ。なぜだかわかるか?」
「う、うん。魔力は魔法の威力をあげたり使える回数を増やしたりする。詠唱は魔法を打つための補助だったけ。」
「ああ、そうだ。魔力は魔法を使用するには必要不可欠だが、詠唱は絶対必要というわけではない。それを補うのがイメージ力だ。」
地面の落書きをみろと促す。それは、昔どこかでみたことがある絵だった。
「お父さんこれは、、、」
「昔、イメージができなかった華に俺が見せた絵だ。わかるな華。お前はスーという奴に魔法を教える前に俺が教えていたんだ。」
「少しだけど思い出せた。」
「全部はすぐには思い出せないと思うが、大丈夫だろう。ほら、プレゼントだ。」
男の手から暖かい炎が出て胸に吸い込まれる。なんだか力が出てくるみたいだ。
「よし、行ってこい。今のお前なら勝てるさ。」
意識がだんだん薄れていく。眠気なのかどうかよくわからないがボーっとしてしまう。視界も狭まっていく。
「お、とう、さん」
意識がなくなった。
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目を開けると少し大きな人?が立っていた。それはギリーという妖精と似ていた。意識はハッキリとしている。そればかりか、先程よりか力が湧いてくる。
「それなら本当に用済みだ2人まとめて殺してやる。」
こっちを警戒していない。反撃をするチャンスだ。魔力を溜める。
ギリーは詠唱を始めだした。スーも遅れて詠唱を始める。
まだ使ったことのない魔法を使う。直感だ。イメージは爆弾。爆発をする。盛大に!
魔力の塊を手から飛ばし起爆させる。
「そろそろ、反撃をしちゃおう。」
立ち上がり、「そこのあなたに教えてあげるわ。油断大敵というのがどういう意味なのかを。」
相手に向かって指を指す。
火炎の輪は彼の周りに回り逃がさない檻を作る。火炎の熱がコンクリートの地面を熱する。じわじわと相手の体温を削っていく。それをなんとも思わないのかギリーはスッと立ち上がる。自分を飛ばしたことに感心したのか華の方を見て尋ねる。
「流石はスーが育てた魔法士だな。スーとはどのぐらいの期間修行した?そのレベルだとスーが追放されてすぐと見て2年か、3ね
「一週間。」
「ん?一週間だって。本当にそうなのか。もともと魔法が使えていたとか、、、」
「一週間前は魔法とかがあるとは知らなかったよ。」
2人の間にしばらく沈黙がその場を制した。華は確かに一週間前は魔法があるとは知らなかった。風の音がまだ救いだったと思う。
「お前さぁ、魔法ってどのぐらい習得に時間がかかると思う。」
「すぐとかじゃないの?」
またもや沈黙が起きるがすぐに破られた。
「魔法の源ともいえる魔力の制御でも才能のあるやつが習得するのに2週間かかるんだぞ。それなのに中級魔法を使ってるんだぞ。お前は本当に人間なのか。」
「人間かどうかは関係ないでしょ。あなたはこのまま帰るか、それとも敵として私と闘うの?」
「いいだろう。闘ってやろう人間。貴様をそのままにしておくと後々危険な存在になる可能性があるからここで殺しておかなければならないな。」
相手も魔力を高めて、手に風を起こす。そこからは無言だった。彼女の業火がギリーに襲いかかる、それを体を捻り、足をスライドさせ器用に避けていく。何度業火を襲わすが何度も器用に避けていく。それは距離を開けるため。
「自然の怒り、それは神の怒り。雷神の鈍器」
ギルーの上空に黄色の魔法陣が現れて、そこから雷が拳の形をして彼の元へと落ちる。体を横に倒し避けられた。避けている間に両手を振るっていた。
風の刃 風、鎌鼬が不規則に彼女を切り裂きにかかる。
華を目掛けて鎌鼬は複数襲いかかる。気がつくが、初撃をかわすことはできない。魔法の発動に集中しすぎていたようだ。カマイタチは華の腕を撫でるように通過する。滑らかだ。血が飛び散る。2撃目は見もせず躱す。その他も同様に躱す。
それぐらいの攻撃では止まらない。すぐさま次の魔法を唱え始める。それはギルーも同様。魔力の高まり具合から次で決めるつもりらしい。
「僕も加勢するよ。」
スーも魔力を高める。3人の魔力が膨張していくのがわかる。全身から体内に貯めている魔力をじわじわと表面へと出す。華は青く、ギリーは水色に。スーは緑色に。青い魔力の周りは空間が揺らいでいる。コンクリートから湯気が立ち上がっている。すごい熱だ。水色の魔力からは湯気とは違い空気が白くなっている。周りがカチコチと静かに凍っていく。
「おい、お前急に変わったな。さっきも俺の魔法を見ずに躱していたし、本当に何者なんだ。」
「私はただの小学生よ。ただ昔、お父さんに護身術を習っていただけだよ。」
「お前と父親は異常なんだな。普通の人間は見てないものを躱す事なんて出来ないものだし、魔法の習得する早さだって、魔力の量は底なしに見える。だが、そんなことはどうでもいい。そろそろ決着をつけようか。依頼主が出血死してしまうからな。」
魔力が具現化していく。
「ファイヤァー!」「風の槍」「氷結の瞳」
一対二の魔法がぶつかる。2人の魔法は1人のギリーと同じ威力だ。均衡している。だが、すぐに魔力は尽きるだろう。
「スー、これって大きくなった影響なのかな」
「ああそうだ。あれはただ体を大きくするだけじゃなくて、魔力の量も増やす魔法なんだ。」
このままだと相打ちか負けるかするが、おっさん妖精の部下にやられてしまう。どうしたらいいのだろうか。彼をみた。
「言いたいことはわかる。これをどうにかしたら逃げる方法はある。危険だけど。」
「あるならいいわ。任せて。はぁ、弾けて!」
手をグッと握る。イメージを膨らませて。炎は弾け、残る2つの魔法を消し飛ばす。爆発とともに煙が発生した。工場全体を包み込む。視界を塞がれた。
「いいぞ、華。けど、この秘術を使うことになるとは。『時飛ばし』を」
「なんか、とても嫌な感じがするのだけど。」
「魔法陣を起動させた。後戻りはできないぞ。」
「それってまさか、、、」
スーを中心に魔法陣が展開する。
「時飛ばしを発動。華しっかりと捕まって。」
「えっ、キャアーー」
一気に光り輝き出す。そして、瞬時に消えた。工場の煙は晴れ、残っているのは妖精たちだけだった。
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「ねぇ、スー。ここはどこなの?」
「ここは時空の空間という場所だ。そして、あちこちに見える穴を通ると違う時間に渡ることができる。」
「どうして私たちは何もしてないのに進んでいるの?」
「時飛ばしの影響さ。時飛ばしは指定した時間分だけ時を飛ぶことのできる古代の技術なんだ。」
「どのぐらいの時間をこれから飛ぶの?」
「100年分さ。」
「なんだか、驚きがないよ。私たちどうなっちゃうのかな?」
「わからないよ」
2人のいる空間は沈黙が支配していた。これからの不安などで言葉が出てこない。ふたりの行く先に何が待ち受けているのか、2人は知る由もない。
+-どんな意見も糧となる。そんな考えなので意見をお待ちしています。