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ギルドに登録してみた

勇者が魔王を倒したというニュースが伝えられ、世界中が歓喜した。

各地の町村、国々でも勇者に感謝する催しが開かれた。



当然、勇者を選出した国であるクラリネス王国王都であるミネルバでも盛大なパレードが行われていた。


そんな、めでたい行事が行われている中俺はギルドに来ていた。

二階建ての中々頑丈そうな建物である。




あの時、セシリアに説得され引きこもりを脱却した俺は、こっそり一人で城を出た。

勇者達には上手く話しておくと言っていたので俺は死んだことになっているはずだ。



彼女に持たされた地図を頼りに先程、やっと目的地である王都ミネルバに着いたのだ。



「なんで先に出た俺より勇者パーティーの方が早く王都についているんだ?」



主役である勇者パーティーが迎えられているのを見て驚いた。

もちろん、パーティーの一員であるセシリアもいる。



「もしかして俺迷子にでもなってたりしたのか?……結構寄り道したからなあ、可能性大だ」



実はここに来るまでの旅の途中で猫耳、犬耳な獣人や耳がとんがった美形なエルフを見て感動してたりした。

そんなことをしていて、道を間違えて遠回りしたのかもしれない。



まあ、結果的にこうしてミネルバに来れたし気にしないことにしよう。

そんなことを考えつつ、異世界の定番であるギルドに入る。



中は酒場にもなっているようだ。



今の時間は昼間なので、さすがに酒をのんでいる人は見受けられないが、食事をしている人達はちらほらいた。



俺は食事をする気はないので、受付らしきところにむかう。



「すみませーん。ギルドに登録したいんですけどー」



受付に人がいないので、とりあえず呼んでみる。

すると、受付の奥から職員であろう男が歩いてきた。



「あ〜?今日はパレードやっててお祭り騒ぎだから誰も来ねぇと思ってたのに……」



ボサボサの頭をかきながら、けだるそうに歩いて来る。

死んでいる魚のような目をしているんだけど……大丈夫かこの人?




だいたい、受付って普通綺麗なお姉さんとかがやってるのがテンプレじゃあないのかよ。

……まあ、俺は綺麗なお姉さん目当てでギルドにきたわけじゃないし、どうでもいいけど。



「ギルドに新規登録したいんですが……」



先程聞こえていなかったかもしれないので、もう一度言う。

職員の男は頭をボリボリとかきながら、怠そうに返答してきた。



「新規登録したい?今日職員のほとんど有休とってんだよな。……っと、どうすんだっけ?」



確かここに書類がと言って、受付の書類を適当に漁る男。

おいおい……この人大丈夫かよ。



「ったく、勇者が見たいとか言って勝手に有休とりやがって……あー、めんどくせぇ」



客の前で悪態つくなよ。まあ、そんなんで有休とる職員達も悪いけど。

というか、なんでこいつだけ残したのかが謎だ。

どう考えても、もう一人ぐらい残らないとだめだろうに。



しばらく書類を探しながら同僚の愚痴をいう男だったが書類がやっと見つかったようだ。



「あー、あったわ。これに必要事項書いてくれ。まあ、書くことつっても、名前と年齢、あと、死んだら自己責任だっていう同意だけだけどな」



そう言われ渡された紙に必要事項を書き渡す。



「名前はヨウキ、年は二十一な。わぁーった。じゃあこれがギルドカードだ」




適当な返事をして、俺にギルドカードであろうポケットに入るぐらいの四角いカードを渡してくる。



「紛失したら金かかるから気をつけろ。するとしても三日はするな。めんどうな手続きを俺がしなきゃならんことになるからな」



どうやら他の職員達は三日たたないと戻ってこないらしい。

そんなに仕事をするのが嫌か。

怠惰にも程があるだろう。



「はぁ…わかりました」



とりあえず返事をしておく。

……というか紛失なんてしない……たぶん。



「なら、終了だな。最初は一番低いFランクからだからな。まあ、気長に頑張れや。……いやまて、頑張るのは三日たったらだ。そうしろ、そうしてくれないと依頼の処理とか俺がたくさんやらないといけなくなる」



どこまで仕事やりたくないんだよこいつ!?

まあ、そんな言い分聞き入れるわけもなく、その日は出来るだけたくさん依頼をこなした。

依頼の処理がめんどいと言っていたがそんなことは知らん。



今は依頼で稼いだ金を使ってとった宿屋のベッドの上で寝転び今後のことについて考えている。



宿屋はギルドから近く、余り高くない場所を選んだ。安いわりに出てくる飯がうまいという、良い宿を選んだのだ。



(このまま順調に依頼をこなしてランクを上げて金を稼ごう。そして、ある程度まっとうな生活ができるようになったら……セシリアに再度告白しよう)



俺はまだ彼女をあきらめていない。

せっかくチートをもってファンタジーな世界に転生したのに、魔族になったがゆえに、魔王城に引きこもってしまった。



そんな俺に道を示してくれた女神であるセシリアのことをあきらめられるはずがない。



(クックック……、絶対にこの恋を成就させてやるぞ!)



セシリアのことを考えテンションが上がり、厨二になってしまった俺は、しばらく寝付くことができなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなか味のあるギルド長(っぽい男?)だな しかし冒険者が全員一日中勇者のパレード見てるわけないと思うけどね
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