コンビネーションの強み
「魔物っていっても、大したことはねえな。確かにモンスターより凶暴だし、素早い。だが……それだけだ」
「すげーこと言うね」
魔物との戦いを終えたゲルドは、水を飲みつつ先ほどの戦いを思い……魔物について教えてくれる。
魔物といっても、必要以上に怖がる必要はない。冷静に対処すれば、勝てる相手だと。
「モンスターだって、ウルフよりハイウルフ、ハイウルフよりコアウルフ……ってな感じで、凶暴性は増していくだろ? その延長戦ってだけのことさ」
「なるほど……だが、ただのモンスターと明らかに違うのは……」
「えぇ、あの硬い皮膚ね」
このまま自分たちだけで訓練をして、いざ旅に出てからいきなり魔物に会う。そのことを考えたら、先ほど魔物と実際に戦えたのは、とてもいい経験だ。
前世では、このような展開はなかった。なので、魔物相手にぶっつけ本番といった形で、あの硬い皮膚や獰猛さに苦労したものだ。
「聞いた話だと、魔物っていうのは群れを作っている場合も多いらしいわ。一体二体ならまだしも、一斉に襲いかかってこられたら……」
「さすがに俺様の【鑑定眼】も、万能じゃねぇしなぁ」
現状、魔物に対しての有効打はゲルドの持つ『スキル』、【鑑定眼】だけだ。【鑑定眼】ならば、どれだけ硬い皮膚だろうと、弱所を突けば攻撃は通じる。
だが、【鑑定眼】を持つのは一人しかいない。一人しかいない以上、ゲルドに頼り切るわけにもいかないだろう。
「魔物に対する攻撃方法としては、例えば強大なエネルギーをぶつける……ということですな」
「つまり、精霊術ってわけか」
意見を述べる老兵士の言葉を、ゲルドが引き継ぐ。今回は、ゲルドの獲物が短剣だったこともあり、魔物にたいしたダメージは入れられなかった。
だが、強大なエネルギー……精霊術は、訳が違う。実際、前世でも精霊術を使用した攻撃は、魔物に多大なダメージを与えることに成功していた。
全員の視線が、シャリーディアに向く。
「え、わ、私ですか?」
複数の視線を向けられ、シャリーディアは自分を指さし、目をパチパチと閉じたり開いたりしている。
まさか自分に話題が向くとは、思っていなかったのだろう。
「えぇ。精霊術は、魔物には確かな効果があると、言い伝えられています」
「精霊様の力が、邪悪な魔物の力を打ち砕く、ってわけか?」
「シャリー姉ちゃんすごい!」
「精霊術には、様々な使い方があるらしい。自分だけでなく、他者に影響を与えることもできると」
言い伝え、とやらがどんなものかは知らないが、実際に精霊術は効果がある。それは俺が前世で見た光景であり、効果があるからこそシャリーディアは勇者パーティーのメンバーに選ばれたのだろう。
精霊術とは、火の精霊や水の精霊など、それぞれ精霊の力を借りて力を使うことを言う。精霊とは相性もあるらしいが、シャリーディアは複数の精霊に好かれる体質らしい。
実際に火の玉を撃ってみたり、他のものに付与することもできる。例えば……
「じゃあ、シャリーディアが、精霊術の力をミランシェの弓矢に付与する、ってこともできんのか?」
「! た、多分」
と、俺が考えていたことをゲルドが口に出す。さすが、頭の回転が速い。
そう、精霊術は他者に付与することも可能だ。弓矢に火の力を付与する、肉体に能力上昇の力を付与する、などだ。
精霊術とはいわば超常の力だ。使えない者はもちろん、使える者でもその全容を把握できているわけではない。
「なるほど、シャリーディアとミランシェの力の組み合わせ。コンビネーションというやつか」
「それなら、俺様の【鑑定眼】で魔物の弱所を暴いて、ミランシェの【百発百中】で撃ち抜くってのもありじゃねぇか?」
「普通の弓矢でも、効果ありそう」
各々が思いついたものを、口にしていく。単体では手強い魔物でも、コンビネーションを使えば対等以上に戦うことができる。
ここに来て、コンビネーションの大切さを実感してきたな。前世よりも、随分と展開が早い。
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