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【第9部〜巨人の王国編〜】  第8話 曹と、ついに対峙する

「どうなっている曹晋ツァオ・ジン?」

「どうなっているとは、どう言う意味だ?」

 ツァオは苦虫を噛み潰した様な表情をして、不機嫌そうだった。

「まだ白面の動きは分からないですが、他の最高指導部メンバーの下には現れていない事から推測されるに、貴方が白面の恨みを買っていると考えるのが妥当でしょう?」

 ガオはコーヒーカップを手に取り、口に運びながら話した。

「恨みだと?そんなもの、お前達も買っているだろう?見に覚えがあり過ぎて特定など出来んわ」

 ガオの問いに苛立ち、吐き捨てる様に言った。

「そう怒るなよツァオ。何も我らは問い詰めているのでは無い。我々に飛び火する前に、消し止めて貰えれば良いだけの話だ」

 楊慶齢ヤン・チンリン(ダゴン王)は、膝に抱いた黒猫の頭を撫でながら言った。

「そう言うヤンさんも、最近新しい雌猫アシェラを拾って可愛がっているそうじゃないですか?貴方こそ恨んでいる者は多いでしょうよ」

「ふふふ、わしの方はちゃんと始末してある。お前の方こそ、火の後始末はしておけよ」

「分かっておるわ。お前達に迷惑はかけんわぃ。3日だ。3日以内に白面の首を手土産に、酒でも飲もうじゃないか」

「3日か…では3日後にまた召集する事にしよう。ここしばらく毎日会議では疲れるからな」

「全くだ。なんなら俺様の部下を貸してやろうか?」

 劉秉宸リウ・ピンチェンと言う、屈強そうな細マッチョの男が口を開いた。

リウさん、もう僕の兵隊がツァオさんに貸してあるんですよ。」

 ガオが、ツァオの代わりに答えて断った。

「そうか?なら必要ないな。ま、必要な時はいつでも言ってくれ。それなりに見返りは求めるがね?あはははは」

 会議が終わるとツァオは電話をかけた。

「おう、俺だ。至急手配しろ。うん、そうだ。何?黙って俺に従え!良いか、そいつで確実に白面を始末するんだ!今度俺に恥をかかせやがったら、貴様ら全員ブチ殺すぞ!」

 興奮気味に、ツァオは電話を切った。

「ひゅう~、おっかないですね?」

 ガオは薄笑いを浮かべてツァオに話しかけた。

「お前さんの兵隊は必要無くなったかもなぁ?」

 ツァオは自信たっぷりに笑った。

(万が一、あれでしくじったら、この儂が自らの手で白面をブチ殺してくれるわ)

 ガオは両手を広げて、首をしぼめて見せた。


 今朝は早くから、ガオさんが会議に出かけていた。私は昨日、病気と称していた為に外出は禁じられ、部屋から出る事も許されずにいた。

「何なの?これじゃ軟禁されているみたいじゃないの」

 中国人の男は、自分の女を外に出したがらない。嫉妬深く、他の男に見られる事さえ恐れているかの様だ。

「素顔が瑞稀アナトと同じだから変えているけど、この顔も悪くないわね。ガオさんは、この見た目にかれたのよね?ちょっと複雑だわ…」

 顔の角度を変えて、手鏡を見ながらつぶやいた。手鏡を鏡台に置きベランダに出ると、上半身を手摺てすりにもたれさせて外を眺めた。

「この景色もいい加減飽きたわ」

 何か面白い事は無いかしら?と庭を見下ろした。綺麗に手を入れられた木々や花が並んでいる。パッと見、西洋風の建物でオシャレだが、生真面目過ぎて芸術っぽさが足りないと感じる。

 私は瑞稀アナトの分身の様な存在だ。私自信は芸術に興味が無いはずだが、この身体に生命を吹き込んだ瑞稀アナトは絵画が好きだった。描くのも観るのもだ。本人は上手いと思っていたのだろうが、せいぜいが並み程度で「下手の横好き」と言った所だった。それなのに一人前に、これはこうだ、あれはこうだと批評して見せた。私は可笑しくてニヤニヤしていると、「何がおかしい?」と瑞稀アナトが怒り出して、よく喧嘩になったものだ。今となっては懐かしい思い出だ。

 居れば同族嫌悪で大した事でも無いのにいがみ合っていたが、居なくなれば寂しさが募る。まさか自分が瑞稀アナトに対して、こんな気持ちを抱くとは思わなかった。

「待っていて瑞稀アナト。きっと貴女の無念を晴らしてあげるわ」

 まずは手始めに、ツァオと言う最高指導部メンバーの1人を倒すか捕らえて、瑞稀アナトの死に関与した者の名前を聞き出すつもりだ。


 0時になり、行動開始した。他の最高指導部メンバーの屋敷に行こうかとも考えたが、今夜もツァオ邸に行く事にした。

 これまでと同じく影の世界を移動して、ツァオ邸に来た。塀を飛び越えて敷地に降りると守衛がいたが、この間の50人の中の1人であった為、見てみぬフリだ。

 『模倣ラーニング弐式セカンド

 守衛の1人に成り済ますと、何食わぬ顔をして正面玄関に向かった。

「おい!そんな所で何をしている?直ぐに持ち場に戻れ!」

 敷地内をウロウロする私に不審に感じたのだろうか、上司らしき者に声を掛けられた。

「来たぞ!白面だ!」

 方々から白面の発見を報せる声に、その上司は私を捨て置いて走り出した。

「貴様は援軍を呼べ!」

「畏まりました!」

 私は指を差しながら、「白面が出たぞ!」と叫びながら正面玄関へと走った。私のピンチに白面が現れたと叫んだ者は、当然ながら例の50人の者達だ。

「上手く行ったわ」

 私は守衛の姿のまま、堂々と侵入に成功した。ツァオが何処にいるのか分からず、呪文を唱えた。

自動書込地図オートマッピング

 すると、赤く光った点が猛スピードでこちらに向かって来る。反射的にわしたが、避け切れずに左肩をえぐった。血が噴水の様に上がり、右手で傷口を押さえて睨んだ。

 攻撃して来た者の頭部は狼で、いわゆる人狼ワーウルフだった。そして、瞬時にその隣に現れたのが、頭部が虎の人虎ワータイガーだった。

人狼ワーウルフ人虎ワータイガーね」

 文字通り目にも止まらぬ速さで、息もつかせぬ連続攻撃を繰り出して来た。

『狂気の神眼インサニティ

 その攻撃をいとも容易く避け、カウンターを喰らわした。

「ぐうっ」

「中々やるな小娘、だが…」

「だが、これで終わりですよ、私が来たからにはね」

 それが現れると、人狼ワーウルフ人虎ワータイガーは平伏した。辺りの空気が変わり、纏わりつく様な凍てつく強大な魔力を感じた。

吸血鬼ヴァンパイア…」

「おほほほほ、私をただの吸血鬼ヴァンパイア程度だと思わない事ね?私は真祖…第7位階ハンス・キュルテンと申します、以後お見知り置きを…と言っても、もう直ぐ貴女は死ぬのですが…」

 真祖が左右の人狼ワーウルフ達に目配せをすると、白面を取り囲む様な陣形を取った。

「さて…これで貴女の死が確定しましたが、最期に言い残す事はありますか?」

「死ぬのはお前達の方だ」

 私は攻撃される前に呪文を唱えた。

闇矢連撃ダークアロー

 無数の闇の矢が、人狼ワーウルフ人虎ワータイガーに突き刺さる。

「こいつは驚いた。貴様も闇を使いおるか?」

「ははは、無駄な事。我らは闇の眷属。闇への耐性は高く、こんな程度の呪文では傷も付かぬわ」

 人虎ワータイガーが、身体に刺さった闇の矢を手で一払いすると、パラパラと矢が落ちた。真祖のキュルテンは余裕の笑みをこぼしていた。

「かかったわね!」

 私は瞬歩で真祖との間合いを詰め、呪文を唱えた。

死者昇天ターンアンデット

 かつての私も闇属性であり、アンデットの女帝だった。闇属性の者は神聖魔法への耐性は皆無であり、必ず効果がある。

「手応えありね」

「うぐあぁぁ!ば、馬鹿な闇魔法と神聖魔法は両立しないはず、そんな事が出来る者はぁぁぁ…」

 身体が灰となり床に崩れ落ちると、灰の中から無数の蝙蝠が羽ばたいて、空中の一角に集まると再び真祖の姿を形取った。

「おのれぇ!」

 真祖の攻撃をわすと、白面が外れた。

「そ、その顔はぁぁぁ!お、お前はぁ!いや、貴女様は…瑞稀アナト様…。生きていらっしゃったのですね?」

 真祖からは戦意は消え、私にひざまずいた。

「貴女様は、我々に光を与えて下さった大恩人様。貴女の仇を討とうと芝居を打って、ツァオの下に潜り込んでおりました。貴女様が存命であれば、それも最早無用。こんな所は早く去りましょう」

 人狼ワーウルフ人虎ワータイガーが立ち上がった時だった。背後からその頭を鷲掴わしづかみにした者がいた。

「犬コロ風情が、この儂を裏切るつもりか?犬にすら劣るカスが!!」

 ペキョっと聞こえたかと思うと、人狼ワーウルフ人虎ワータイガーの頭は握り潰された。

「お逃げ下さい。私が時間を稼ぎます。コイツは流石の貴女様でも手に負えます」

 真祖は自分を犠牲にして、私を逃すつもりだ。

「ふふふ…瑞稀アナトうらやましいわ。こんなにも慕われているなんて…。でもね、私はコイツを殺しに来たのよ…」

練気剣ヴァジュラ

 気を練って創り出した剣を、両手に構えてツァオを睨んでにじり寄った。

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