【第5部〜旧世界の魔神編〜】 第1章 ダンジョン⑤
「今からで間に合うと思うか?」
「アポロンの息子を、先に守りに行っちゃう?でもそれだと、他の犠牲者が出る可能性もあるのよね。話の展開通りに進むとは限らないし…」
「サイクロプス三兄弟も、アポロンに殺されたら生き返らせたらどうだ?」
「うん、アポロンの息子も生き返らせるつもりだったよ。でもこのダンジョンのボスって、一体誰なんだろう?もしかすると、ゼウスかアポロンなのかも知れない。アポロンの息子を助けた事によって、アポロンとは戦わない道を選択する事になってゼウスがボスになり、アポロンの息子を助けなければ、アポロンがボスになる…と言う選択肢の場合もあるのでは?」
「そうなって来ると、いよいよゲームの世界にいるみたいだな?」
「ゲームの世界?それだ!」
アナトである私のスキル『Game Start』で、唯一神とオートで戦っていた。倒したはずだが、もしかすると、まだクリア(倒してなく)していないのかも知れない。そんな事があるはずがないよね?と思っていると、隣にいたはずの巧はドット絵に変わった。
「キャア!」
途端に当たりの風景が、ドット絵に変わった。
「そんな…嘘っ…」
『Tutorial』
「一体、何なのこの世界は?」
“ここは主様が創り出した世界です”
「唯一神は本当に倒せたの?」
“はい。唯一神を倒してゲームクリアされました。ここは裏面の世界であり、主様は裏面の世界に迷い込まれ、まだ完全クリアとはなっていません”
「そんな…どうりで変だなとは思ったのよ。でも私、巧と…え、Hな事とかもしちゃったけども…」
“NPCキャラクターなので、実際には行われておりません。ゲームの中で、そう言う事象になった、と言うだけです。ゲームクリアすれば、無かった事になります”
「えっ?それって、もしかすると、ワルキュリアスとHした事も無かった事になるの!」
“はい勿論、無かった事になりますし、実際に行った訳ではありません”
「良かった…、本当に良かったぁぁぁ」
私、浮気した訳じゃ無かったんだ…。本当に良かった。
「ロード!聞こえる?ロード!」
「はい、陛下」
「私は唯一神と戦ってどうなったの?」
「どうなったのか我々も心配しておりましたが、把握している範囲でお話し致します」
「お願い」
「陛下は、ヤハウェと戦い始められ、陛下のスキルが発動すると、途中から2人とも姿が消えました。暫くすると、天界だけでなく、魔界や人間界にもゲームクリアのファンファーレが鳴り響きましたので、ヤハウェを倒されたと思ったのですが、その後、陛下の姿を見ておりません」
「ありがとう。実は、自分のスキルから抜け出せないでいるのよ…。私は無事だから安心してね」
何となく概要が掴めた。私はアナトの能力が使え、記憶が戻ったはずだけど、全ての記憶が戻った訳ではなかった。その為、スキルも使いこなせていないのだ。強力過ぎるスキルは、デメリットも大きいな。取り敢えず、このゲームをクリアしないと出られないのだろうと推測出来る。ゲームは好きだけど…、違う、何だか違うんだよ、こんなのじゃないんだよ、と溜息をついた。