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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
辺境編
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リアのお願い

翌朝起きると私はアリスターのベッドに寝ていて、隣にはまだぬくもりが残っていたが、アリスターはいなかった。


「よっ」


これは起き上がった時の音ではない。ベッドから下りた時の音だ。屋敷ではすぐ下りられるように背の低いベッドをあつらえていてくれたから、アリスターの普通の大人用のベッドは私には少々高かった。


しかし幼児には幼児のやり方がある。足から慎重に下りていけば、何とか転ばずに下りられるのだ。そしておそらく、私が起きた時のためにドアが少し開けてあったので、そこから外に出た。


すぐ下のダイニングではみんなの話し声がしている。壁に手をつけばおりられそうだが、さて。


「ありしゅた!」

「お、リア? おはよう」


アリスターが軽やかに階段を駆け上がってきて、手を引いてゆっくり下りてくれた。危ないことはなるべくしないのである。おはようの声がかかる中、すぐに朝食となった。薄く切ってもらったパンをもぐもぐしていると、


「リアはな、俺とアリスターと一緒に魔石屋に行くことになった」


とバートがまじめな顔で言った。


「あーい」

「だがな、リアには約束してほしいことがある」

「にゃに?」


約束してほしいこととは何だろう。


「魔石にな、魔力を入れられることを、ばれないようにしてほしいんだ」


どうしてだろう。お金になるのに。


「魔力があることは利用価値があるってことだ。お前は目と髪だけですぐにキングダムの四侯の関係者とわかるだろう。そうしたら、それだけでも欲しがる奴が出てくる。さらに価値をつけることはないってことだ。つまり、またさらわれたくなければ、おとなしくしてろってこと。いいか」

「あーい」


キャロが横でぷっと噴き出した。


「そんなことわかる幼児いねえって。リアはもう少し赤ちゃんぽくしてろ」

「あい」


みんな私が少し変な幼児だということはわかっていてこの対応なのだろう。ありがたい。


しかし、私も町に着いたらお願いしたいことがあった。アリスターは、最初会った時に、誰かのところに嫁に行くか、自分たちについて来るしかないと言った。その時はそれしかなかった。だが今、こうして町についてみると、まだできることがあるように思うのだ。


「りあ、おねがい、ありゅ」

「なんだ?」


バートが意外そうに私を見た。私からあれこれしたいということはあまりないからだろう。


「おとうしゃまに、りあ、れんりゃく」

「れんりゃく? ああ、連絡か」


バートは考えていなかったという顔をした。


「連絡か。手紙、は確実じゃあねえ。使者、はアリだが、使者だとケアリーまで戻らなくちゃいけねえ。そこでキングダム側の商人にお願いすることはできる、かもしれねえ。金はかかるがな。だがな、リア、お前さすがに家名とか住所とかわからんだろ」


一歳児が家名とか知っているわけがない。それで家について聞かれなかったのか。うかつに言うべきではないとは思う。でも私はこの年若い人たちを確かにもう信頼してしまっていた。


「かめい、わかりゅ」


バートは目を見開いた。


「お前。さすがにまさか。聞きたくねえ気もするが、一応言ってみろ」

「りあ・おーるばんす」


誰かがひゅっと息を飲む音がした。キングダムの四侯は、やはり有名なのだろう。


「た、例えばだぞ、お前、父ちゃんの名前は……」

「でぃーん・おーるばんす」


今度こそみんな黙り込んだ。


「四侯の直系が二人って、どれだけ四侯率が高いんだ、この家は……」


その沈黙の中キャロがつぶやき、アリスターが唇をかんで下を向いた。やっぱりアリスターも四侯の血を引いていたんだ。


「ぎる・りすばーん」


私の言葉にアリスターははっと顔を上げた。


「ぎる、ありしゅたとおにゃじ。おにゃじいろ」

「ギルって、お前最初に言ってた。知り合いか」


私は頷いた。


「にーに、ともだち。おとうしゃま、ともだち」


しかし、その深刻な雰囲気の中、突然ミルが笑い出した。


「は、おもしれえ、四侯率ってなんだよ、そんな言葉聞いたこともねえ。四侯率、ははは」

「みりゅ……」


残念な人だ。しかしそのおかげでみんなに穏やかな雰囲気が戻ってきた。


「まあ、アリスターは事情があってキングダムには戻りたくない。リアは戻りたい。一緒にしちゃだめだな。いずれにしろ、これは俺たちの力ではどうにもならない。今できることは何もないから、後で町長に相談してみるよ。それでいいか?」

「あい。おねがいしましゅ」


もうちょっと早く話していればよかっただろうか。せめて会った時に。でも、あの時そんな余裕はなかったし、そこまで信用できるかどうかも確かではなかった。


「いや、リア」


バートが立ち上がって私の頭をぽんぽんとした。私の思いが伝わったのだろう。


「あの時もしケアリーに行っていたら、と思わなくはなかった。だけどな、ハンターの身分である俺たちだけでお前を連れて行っても、俺たちが誘拐の濡れ衣を着せられてお前はキングダムに帰れない可能性のほうが高かったと思う。ケアリーは国境警備隊がのさばってるし」


そんなにキングダムと辺境は分断されているのか。


「さ、町長についてはきっと向こうから連絡が来る。それまではトレントフォースの暮らしをきちんとしよう」

「あーい」


さ、魔石屋に出発だ。

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