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第26話 ルファスはぐうぐう眠っている

【7属性の扱い】

それぞれの属性にて扱われる力を大雑把に分けるとこうなります。


火属性=そのまんま火。汚物は消毒だー!

水属性=そのまんま水。氷などもここに分類される。

木属性=自然を操る属性。木々や風を操るならここ。

金属性=金属や鋼鉄を生み出す意味のわからない属性。

サモンナイトのシャインセイバーとかそんな感じの魔法。

でっかい石とかも生み出せる。

土属性=そのまんま土。大地を操るが主に操るのは『土』であり『石』ではない。重力系もここに分類される。

日属性=分かり易く言えば光属性。火と似てるようで微妙に違う。

月属性=分かり易く言えば闇属性。暗黒っぽいのは大体ここ。

「――で、この状況をどうしてくれるのだ、リーブラよ」

「無事町に到着出来ました。問題はないと判断します、マスター」

「大ありだ、この戯け」


 リーブラに運ばれ、俺達は無事ギャラルホルン国――長いからギャラ国でいいな――ギャラ国に到着したわけだが、その移動方法に問題がありすぎた。

 彼女は移動スキルのスカイジェットで俺達を運んでくれたわけだが、今は深夜。

 そんな時間帯に轟音立てながらジェット噴射で移動などしてみろ。

 その騒音で寝ていた人々が起きてしまうのは想像に難くなく、結果として俺達は様々な民家から出てきた住民達に疑惑の視線を送られていた。

 いやほんと、夜遅くにスンマセン。


「駄目だよリーブラ。こんな時間にあんな音を立てたら寝てる人達が起きちゃうよ」

「問題ありません、アリエス。私の解析したところ起きてきた方々の戦闘レベルはいずれも脅威になり得る物ではなく、私一人でも対応可能です。

彼等が起きた所でマスターの障害とはなりません」

「いや、そうじゃなくて……」


 アリエスとリーブラの会話に俺は頭を抱えたくなった。

 どうしよう。このメイドゴーレム、他人への迷惑という概念がない。

 ゲームの頃から戦闘ばっかやらせてたからなのか、判断基準が戦闘力や脅威の有無に偏ってしまっている。

 ゲームならいくら夜中に騒音出したって、ゲーム内での事だし、いくら騒いでもNPCが起きたりする事はなかった。

 だからなのか、その手の経験がまるでリーブラには欠けているように見える。


「あの、貴方がたは一体……?」


 すっかり周囲の注目を浴びてしまった俺達に、30代後半くらいの男が話しかけてくる。

 長寿、かつ全盛期の時期が人生の大半を占める天翼族でこの外見なのだから多分実年齢は1000近いご老人なのだろう。

 翼の色は少しくすんだ灰色で、お世辞にも綺麗とは言えない色だ。

 彼だけに限らず、こちらを遠目に見ている街の人々は全員、翼の色がどこか歪だった。

 流石に俺みたいな真っ黒はいないにしても、青や赤に近いものすらいる。

 やはりここが混翼派の街で間違いはなさそうだ。


「あやや、夜分遅くに申し訳ありません。

私、自由商人のディーナと申します。

この度はこちらの町に立ち寄らせて頂いたのですが、ちょと手違いで皆様を起こしてしまいました。

ご迷惑をおかけした事、深くお詫び申し上げます」

「同じく自由商人のスファルだ。すまない、迷惑をかけた」

「ええっと、同じく自由商人、のアリエスです」

「御三方の護衛を務めるゴーレムのコペルニクス4世と申します」


 天翼族のおっさんに自己紹介をしつつ詫びの言葉を入れる。

 こんな時でも偉そうな言葉しか出ないこの口が少し憎い。

 そしてリーブラが空気を読めるのか読めないのか、勝手に変な役職設定をしつつ突っ込み所満載の偽名を名乗った。

 いや、まあ、本名名乗られるよりはいいか。

 リーブラはアリエスと違って外見一切変えてないから、名前名乗るとマジで正体バレかねないし。

 でも、コペルニクスはないな。


「お、おお、商人の方々でしたか。

これはまた斬新な街への入り方ですな」


 おっさん、無理に褒めようとしなくていいぞ。

 非常識な入り方だったのはちゃんと自覚してるから、あんたは怒っていいんだ。

 しかし彼は怒りを見せる事なく、にこやかに俺達を出迎えた。


「長旅でお疲れでしょう。私の家は宿も営んでいます。

さ、よろしければどうぞお立ち寄り下さい」


 おっさんの優しげな言葉に思わず俺とディーナは顔を見合わせる。

 あんな非常識なダイナミックお邪魔しますをしたというのに、怒るどころか笑顔で宿を案内するとは、何といい人なのだろう。

 俺は奇妙な感動すら覚えながらおっさんの案内に続き、この町の宿へ入る。


 宿は……これは大理石か。

 いや、宿に限らずこの町の建造物はどれも大理石で作られているらしい。

 独特の光沢に美しい斑紋。

 なるほど、この国は大理石を用いた建築が進んでいるらしい。

 恐らく腕のいい錬金術師がいるのだろう。


「一晩おいくらですか?」

「1部屋で25エルとなります」


 ディーナの問いに返された代金は至って良心的な価格と言える。

 25エル、日本円換算すれば5000円といったところだ。

 4人で一泊して5000円、と考えれば驚くほど安い値段だ。

 俺達は迷う事なく料金を払い、部屋へ案内される。


「こちらがお部屋となります。それではごゆっくり」


 通された室内もまた大理石に囲まれた、少し落ち着かない部屋だ。

 しかし客への配慮がないわけではない。

 床には柔らかな絨毯が敷かれ、花瓶がさりげなく配置してあるなど、360度全方位がテカテカしてるわけでないのは有り難い事だ。


「メラクへの謁見は明日に考えるとして、今夜はもう寝よう。

アリエスが船を漕いでおるしな」

「あらら」


 今日はもう夜遅い。

 そんな時間に爆音撒き散らしながら飛んで来た俺が言うのもあれだが、もう寝てしまった方がいいだろう。

 ゴーレムのリーブラや、いつ寝ているのかも分からないディーナ、そして徹夜上等ゲーマーの俺なんかはともかく、アリエスなどは凄く眠そうだ。

 それでも俺より先に寝るわけにはいかない、とでも思っているのか必死に意識を繋ぎ止めているのが健気で涙を誘う。

 別に俺より先に寝てはいけない、なんて亭主関白みたいな事言う気ないから寝てもいいんだぞ?


「それでは、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 俺とディーナは布団に潜り込み、目を閉じる。

 少し固い布団だが、まあファンタジーな世界ならこんなものだろう。

 リーブラは寝る気がないのか、部屋の隅で立ったままだ。

 まあ、ゴーレムだし睡眠は必要ないのだろう。

 墓防衛中に至っては190年間ずっと起きてたっていうし。

 まあ、もし眠たくなったら勝手に寝るだろうし問題あるまい。

 俺はそう考え、まどろみの中に身を委ねていった。



*



 ――誰かが、優しさの欠片もない耳ざわりな声で怒鳴っている。

 白い翼の、『血縁上は父なのだろう』男が幼い少女を前に、怒りの声を発している。

 親が子を怒る。これは別段珍しい事ではないし、ほとんどの人間が経験する事だろう。

 しかしそこに、子を想っての怒りはない。

 ただ唯どこまでも、己の内にある鬱憤を晴らそうという身勝手な怒りしかそこにはない。


「お前、また近所の子供達に怪我をさせたようだな!

俺は言わなかったか!? 相手に怪我をさせるなと!」

「でもお父さん、先に手を出したのはあいつらで、それに数人で石を投げてきた。

私はただ、自分の身を守っただけで……」

「黙れ!」


 甲高い音が響く。

 それが『父』という生き物より齎された暴力である事を少女は理解していた。

 いつもの事だ。

 この男はいつも、こちらの言い分など聞きはしない。

 父親として振舞っている振りをして、躾の真似事だけをしているがその実、自分の事しか考えない。

 だから気に入らなければすぐに手が出るし、子を想っての言葉などその口からは決して出ない。

 要は体面。少女が何かすれば自分の評判が落ちる。

 だからこうして叱る振りをして、馬鹿みたいに怒りのままに怒鳴り散らしているのだ。


「俺はお前をそんなふうに育てた覚えはない!

育て方を間違えたのか!? あ!?」


 男の耳ざわりな声に少女は、『それはそうだろう』と内心で同意した。

 だってこいつに育てられた覚えなんてない。

 こいつに与えられたのはいつだって罵声と暴力だけだ。

 育て方を間違えた? ああ、それは間違いだらけだろう。

 むしろ正しい事をしてもらった記憶がない。


 『子を愛さない親などいない』。


 どこかの物知らずな、きっと親の愛を一身に受けた誰かが物知り顔で垂れ流す綺麗事。

 子を愛さない親などいくらでもいる。

 望まず出来てしまったから、邪魔だから、うるさいから。

 そして、翼が黒いから――。

 ただそれだけの事で愛など容易く消えて失せる。

 少なくとも少女は、この父を名乗る汚物から愛など与えられた事がない。


「……嘘つき」


 一言呟き、少女はその場を駆け出した。

 これ以上男の声を聞きたくはなかったし、会話を交わす意味も見出せなかった。 

 あれは他人だ。

 血が繋がっただけの他人なのだ。

 だから悲しくなどない、辛くなどない。

 頬を伝うこの水滴は断じて涙などではない。


 走った。

 どこを走っているのかも分からず、闇雲に走った。

 この集落に彼女の居場所など、どこにもない。

 禁忌の黒翼――ただ翼が黒いというだけで疎外され、疎遠され、区別されて差別される。

 別に病気を撒くわけでもないのに石を投げつけられ、自衛すればこちらが責められる。


 唯一の味方は母のみ。

 だがその母は病弱で、無用な心配などかけたくはなかった。

 しかし母の存在こそが彼女にとって唯一の救いであり、もしそれがなければとうにこんな場所は飛び出していたであろう。


 ――どうして私がこんな目に遭う? 翼の色が違うというだけでどうして。


 彼女以外にも翼が白くない天翼族はいる。

 日に当たらない場所で、それこそ貧民街のような汚い場所で、同じ境遇の者同士が寄り添い合って生きている。

 そこにいければまだ違ったのだろう。

 しかし自分が家を離れれば、あの父という生き物が母に何をするか分からない。

 暴力の矛先が自分ではなく母に向いてしまうかもしれない。


 ――どうして世界はこんなに不公平なのだ。どうしてこんなにも自分達は不幸なのだ。


 神を呪わずにはいられない。

 何が偉大な創世神だ。何が慈愛の女神だ。

 まこと、慈悲に溢れる神などというものがいるのなら、どうしてこんなに世界は不平等で溢れている。

 祈りに意味などない。

 手を差し伸べてくれる者などいない。


 ――誰も助けてくれない。


 少女は幼くして、人に頼る事を止めていた。

 誰も自分を助けてくれないのだから、自分で何とかするしかない。

 今はまだ家に住み、最低限の食料を与えられているが、それもいつまで続くか分からないし、何より彼女自身がこんな生活に甘んじる気がなかった。


 だから、強くなりたいと願った。

 世の中の不平等や理不尽、それら総てを薙ぎ払えるくらいに強くなりたかった。

 今はまだ弱くて未熟だが、いつかきっと……母を連れて、こんな惨めな生活から抜け出してみせる。



 黒い翼の少女――ルファス・マファールはそう、強く心に誓った。



*



「……何だ、今の夢は」


 俺は額に手を当て、目を開ける。

 妙な夢だった……そう、本当に妙な夢を見た。

 恐らくはルファスの過去、なのだろう。

 少なくとも俺には全く覚えのない出来事であり、そんな設定を作った覚えもない。

 とはいえ、ルファスがゲームではないこの世界を生きてきたなら両親がいるのは至極当然の事であり、そしてこの翼の事で迫害されていたというのも簡単に予想出来た事だ。


 俺は考える。

 俺がルファスになる以前には、本当のルファスがいたはずだ。

 この身体は元々俺の物でない以上、本物のルファスの魂とでも言うべきものがこの身体を動かしていたはずなのだ。

 だが、今ここにいるのは俺だ。

 ルファスの過去すら知らない、ただのプレイヤーの俺がここにいる。


 ならばルファスは何処にいった?

 俺が来た事で弾かれてしまったのか。

 あるいは、この身体の中で今も眠っているのか。

 ……ひょっとしたら、まだ亜空間に封印されていて、ここにいる俺は単なる紛い物なのかもしれない。


 しかし俺が紛い物ならば、この身体に宿ったルファスの記憶は何なのだ。

 夢で見ただけの、見知らぬはずのルファスの父に……何故これほど怒りを覚える。

 世の中の不条理、理不尽に何故これ程俺は憤っている?

 この荒れ狂う感情の波をどう説明したらいい。


「……ルファス様? 心拍数が上がっているようですが」

「リーブラか」


 唯一眠っていなかったリーブラが気遣うように俺に声をかけてくる。

 一見無感情に見えるが、それでも不思議と俺には彼女の僅かな感情の揺らぎが分かった。

 無感情などではない。彼女は確かに心を持っている。

 そして俺を慕い、心配してくれている。

 不思議と、長年連れ添ったかのように俺はそれを感じ取る事が出来た。


「心配は要らぬ。昔の夢を見ただけだ」

「昔の、夢ですか?」

「ああ。少し悪い夢を見て、童女のように目を覚ました……それだけの事だ。

其方が心配する事など何もない」



 こいつ等には言えないな。

 俺がルファスではない、単なる偽者かもしれない……なんて事は。

 ……とても、言えない。



田中で移動中に眠くなって寝る→ディーナに起こされる→夜遅いのでギャラ国に行ってまた寝る。

ちょっと寝すぎじゃありませんかねえ……。


【登場人物の下着の色】

感想欄で色々と出ていたので、この際明かしてしまおうと思います。

登場人物達の下着は以下の通りです。


メグレズ:青のブリーフ

メラク:白のブリーフ

ガンツ:赤いフンドシ

ジャン:黒のトランクス

マルス:葉っぱ一枚あればいい。

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― 新着の感想 ―
[一言] マルスくんのポロリ良いよね…
[一言] (✽ ゜д゜ ✽)誰得情報????
[一言] マルスww 葉っぱ一枚かよw
2022/01/21 00:14 小説家になろう愛用者であります
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