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ディビジョン・バイ・ゼロ

作者: メンボウ


 飽食(ほうしょく)の時代、人類の肥満率は70%を超えた。


 閾値(いきち)はかさ上げされたが、それでも上昇は止まらなかった。

 住宅や家具や乗り物、あらゆる物の基準が見直され、ぶくぶく太った人類を支えた。

 人類もそれで良しとしていた訳ではない。ダイエットは空前のブームとなって、その市場規模は不動産業を超えた。

 

 それでも肥満率は上がり続け遂に80%を超えた。


 人類は様々な手を打った。しかしそのすべてが無力に終わった。

 BMI課税すら無意味だったのだ。

 人は太古、飢餓(きが)の時代が長すぎたため、本能には逆らえないのである。


 肥満による弊害(へいがい)のため平均寿命が急激に低下し始めた時、それは現れた。

 正確には解禁された。


 人類が、いや地球生物が必要とするアミノ酸は20種と特殊なものが数種。

 無数にあるアミノ酸のうちわずかそれだけなのだ。

 その利用されないアミノ酸を生成するデザインされた植物の食品利用。

 最初はそれを利用した植物油だった。

 人類が栄養を吸収できないそれは劇的な変化をもたらした。

 下がったのだ。今まで何十年も上がり続けてきた肥満率が。

 すぐに有用性が認められた植物自体が食品として解禁された。


 人々はこの救世主に狂喜乱舞(きょうきらんぶ)した。

 人類の美意識も飽食の時代に大きく塗り替えられ、痩せているほど健康的だとされた。これも大きく作用した。

 嫉妬の対象はより太っていない人となり、人々が競うのにあわせ、新たに高性能なデザイン植物たちは生み出されていった。

 一面のダイエット植物で埋め尽くされた農地は人類希望の象徴として扱われたのだ。


 肥満率は70%になり、60%を切り、50%に到達したとき、人々の強い要望によりデザインされた動物も解禁された。

 もはや肉や魚でも、いくら食べても太らないのである。

 

 タブーとされていた大食い番組が解禁された。

 いくら食べても太らないのだから禁止する理由がない。


 ジムやあらゆるスポーツは(すた)れた。筋肉は美しくないのである。

 いくら食べても太らないのだから、いくら怠けても誰も(とが)めない。


 それでも、どんどん肥満率は下がり続けた。

 いくら食べても太らないのだから当たり前である。


 閾値は過去の基準に戻され、人は喰らい怠惰(たいだ)に過ごし、それでも下がり続けた。

 10%を下回り、5%を割り、0%に到達し、


 そして人類の肥満率はDIV/0になった。


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