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 息せき切ってオリヴィアの部屋にやって来たアランは、サイラスとオリヴィアの前で仁王立ちになった。


「それで、お前たちはそこの窓でオペラグラスを使って何をしていた」

「兄上、目いいですね」

「あれだけキラキラ光っていれば嫌でも目につく!」


 アランは疲れたようにぐったりとソファに座った。

 オリヴィアはテイラーにアランの分の紅茶を入れてもらうように頼んだ。

 サイラスとともにアランの対面に座ると、アランがため息とともに言う。


「私が困っているのがそんなに面白いか」


 オリヴィアとサイラスは顔を見合わせた。別に、アランの困っている顔を見て楽しむために見ていたわけではないのだが、アランはどうやらそう解釈したらしい。


(単に相性がいいのかどうか見てただけなんだけど……)


 観察して、妙に馬が合いそうであれば、どうしようと思っていただけだ。国王はアランとフロレンシアの仲を妨害してほしいと言っていたが、お互いが好意を持ちそうなのであれば、それを邪魔するのはあまりに忍びない。だから二人の相性はどうなのかなと様子を見ていただけなのである。決して茶化して楽しんでいたわけではない。


「お疲れですね」


 オリヴィアが言えば、アランはちらりとオリヴィアを見て頷いた。


「あの姫は何を考えているのかわからん。どんな話題を振っても全く会話が続かないし、ずっとうつむいていて、まるで幼子をいじめているような気にさせる。……本当に私は、あの姫と結婚しなければいけないのだろうか」


 早くも初日で苦手意識を持ってしまったようだ。

 オリヴィアもアランと婚約していた時は口数は多い方ではなかったが、アランは口下手ではないので話しかけられればそれなりに会話は成立していた。その彼が会話が成立しないというのだからよっぽどなのだろう。


(これは、陛下が気にしなくてもうまくいかないんじゃ……)


 もちろん、こちら側からはなかなか断りにくいので、フロレンシア姫がアランとの結婚を望めばそのまま進められるだろう。まだわからない。もしかしたら人見知りがひどいのかもしれないし、好意的に考えれば、アランのことが気になって緊張して話すこともできないのかもしれない。

 そう考えると、アランがちょっとかわいそうになってくる。最初はアランとフロレンシアの婚約の邪魔をするの方が申し訳ないと思ったけれど、逆にこれは邪魔をしてあげたほうが、アランにとってはいいのかもしれない。


(でも、陛下はフロレンシア王女がアラン殿下を嫌うようにしろって言ったけど……、どうすればいいのかしら?)


 アランが他国の姫に失礼なことをするとは思えない。とくに「子供のようだ」と認識しているようだから、ことさら親切に丁寧に接することだろう。フロレンシア姫にアランに嫌悪感を抱かせるのは難しい。


「それで、お前たちは何をしていた」

「庭を見ていたんですよ?」


 サイラスがしゃあしゃあと答える。まあ、確かにアランとフロレンシア姫は庭の四阿にいたのだから、嘘ではない。

 アランは半眼になった。


「わざわざオペラグラスでか?」

「よく見えるので」

「庭に、それほどよく見たいものがあったのか」

「それなりに」

「はあ、もういい」


 アランは本当に疲れているのだろう。いつもより、紅茶へ入れる砂糖が多い。


「オリヴィア、もしそなたが私の立場だったらどうする?」


 唐突に訊かれて、オリヴィアは頬に手を当てて考えた。アランはおそらく、婚約をすすめる話をしているのではなく、どうやって回避するかを訊いているのだろう。


「そう、ですね。婚約を回避するために……、まず、王妃様を説得しますね」


 アランはぐったりと天井を仰いだ。


「……母上か」


 この様子だと、王妃様の説得は失敗したな。オリヴィアは確信した。



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