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第六話「トランクス」

一体、何が超リアルなのか。(*´∀`*)




-1-




 マウスパッド。マウスパッドである。

 それはこの文明感のない生活において、間違いなく必要ないもの……そう断言できるほどに限定的な用途のアイテムだった。

 まず、マウスパッドの用途について思い出してみよう。……そう、マウス操作を補助するための下敷きである。最近のマウスは感度も良く……いや、性能も良くなってきたからパッドがなくとも動きを感知してくれたりもするが、それでもいいマウスパッドというものは操作をスムーズにしてくれるものだ。ましてや、ちょっと古い光学式マウスや、それ以前に普及していたボール式のマウスであればマウスパッドはほぼ必須といってもいいだろう。

 実際、俺はマウスに拘りのあるほうだ。ハードなコアゲーマーというほどでなくとも、PCでFPSやRTSをやっていると僅かな操作量の違いが勝敗に直結してくる。今は直接関係ないが、有線式、無線式の違いによる反応の遅延、重量、トラックボール、あるいは専用に作られたコントローラーなどの副次要素まで語り始めてしまえば、一般人がうんざりするような解説ができる程度にはコアな話なのである。

 ともあれ、ゲームに限らずPCを使う者にとって、マウスパッドというものは基本的には必要なものと考えて支障はない。マウス以外のポインティングデバイス……タッチパッドなどで十分という人もいるだろうが、残念ながら多数派ではないだろう。また、大学時代の友人のUNIXオタには操作のほとんどをキーボードのみで済ませてしまう化け物がいたりもするが、それはまた別の生き物の話である。CUIだけで操作しているのを見ていると、一般人としては何か別な事をやっているように見えて仕方ない。


 さて、もう一度言うが、今回のガチャで俺が手に入れたのはマウスパッドである。

 残念ながら補助すべきマウスはない。それどころか接続するPCも、対応するゲーム機もない。あと、マウスが必要なものは……思い付かないが、とにかく何もない。

 そんな状況にあってパッドだけ必要な状況は、まず存在しないと言っていいだろう。少なくともこの非文明的な環境にあっては実用性は皆無と断言できる。……断言できる。

 しかし、ここでマウスパッド本来の用途"以外"の要素に目を向け、その上で再確認したい。


[ 超リアル!おっぱいマウスパッド(Fカップ) レア ノーマル/アイテム ]


 ……超リアル!である。一体何が超リアルなのか。わざわざ!まで付けて強調するという事は余程リアルに違いない。

 では、何がリアルなのか……そりゃ決まっているだろう。説明するまでもなく『おっぱい』だ。ひょっとしたら何かのトラップで別の部分にかかった言葉なのかもしれないと考えたりもしたが、それ以外の意味を読み取れなかった。

 マウスパッドでも、レアでも、ノーマルでも、アイテムでも何がリアルなんだという事になってしまいかねない。ここは字面通りおっぱいがリアルと読み解くべきだ。そうに違いない。

 そもそも、何故マウスパッドにおっぱいが必要なのか。実のところ、別にそれがおっぱいである必要性は一切存在しない。だが、これが別の用途の代替物として用意されたものとなれば話は違う。段階を踏む事で商品に副次的な価値を持たせるという、進化の歴史が存在するのだ。

 マウスパッド黎明期、それが平たい下敷きでしかなかった頃に『マウスパッドにおっぱいを付けましょう』と言い出す奴がいれば、それはただの変態か天才である。しかし、時代が進み、長時間PCを使う環境が珍しくなくなった頃、リストレスト付きのマウスパッドが発明される。今現在でもマウスパッドにリストレストをつけることは賛否あるだろうが、必要だという人も多いだろう。実際、一定以上の売上があるからこそ、市場として成立しているのだ。

 しかし、ただそれだけでは素材や耐久性などでしか付加価値をつける事が出来ない。相変わらず買い替え需要は少なく、いくつも買おうとする者は稀だろう。キャラクターやイラストがプリントされたマウスパッドはコレクションアイテムとして成立していたが、それに使われているイラスト以上の価値があるかは疑問である。そこにマウスパッドならではの付加価値など存在しない。

 そもそもマウスパッドならではの付加価値ってなんだよって話になるのが一般人であるが、リストレスト部分に注目したのが当時の業界人である。彼らは、柔らかい素材で出来たリストレストをおっぱいに見立てるという暴挙に出た。アニメやエロゲー文化に疎い外国人であれば『Oh……ジャパニーズ、アタマオカシイ』と言われてしまうだろうが、その境地に達した天才たちが隙間産業の如き発想がおっぱいマウスパッドなのだ。

 抱き枕もそうだが、おっぱいマウスパッドも継続して新商品が発売されている。実際、ただ柔らかいだけのリストレストにプラスアルファの付加価値をつける事で売れるなら商売にしてしまうのは当然であり、買い替え需要の乏しいマウスパッドの売上を向上させているのも事実なはずだ。実際の売上など知らんし、俺は買った事などなかったが。

 つまり、別に必要なくても付加価値がついているんだからいいじゃないという大らかな発想は大事という事なのだ。


「……さて、と」


 久しぶりに口にした文明の味は些かどころじゃなく量が足りなかったが、それ以上に俺の脳裏はマウスパッドの事で……いや、ぶっちゃけおっぱいで支配されていた。別に取り繕う気もなく、おっぱい大好きだし。おっぱいソムリエを名乗るほどにフェチシズムを感じているわけではないが、健康な二十代男性の標準程度には大好きである。

 別に市販のおっぱいマウスパッドに強い興味を惹かれた事はないが、こんなところで用意されたものならそれ以上のものが出てきてもおかしくはない。それは今も拠点を無駄に占拠しているガラパゴスリクイグワナの造形美を見れば明らかだ。アレはフィギュアを謳っているが故に質感は生物のそれではないが、専用に作られたであろうコレなら期待できる。何が期待できるかとは敢えて言わないが。

 ゴミを捨てる事が出来ない現状、無駄な物を増やすのは問題だろうが、1メートルオーバーな巨体が陣取っている状況でマウスパッドが増えたところで大した違いはない。問題は幼女二人に見られてしまうかもしれないという事だが、全裸を散々見せびらかしてる上に脱糞ショーを披露してしまった俺に怖いものはなかった。それに、普段は[ 屋内用簡易農園 ]と一緒に仕舞っておけばいいのだ。


 というわけで、早速《 マテリアライズ 》である。ウインドウを開き、マテリアライズゾーンへとカードを放り込むと、取り出し用のゾーンにおっぱいマウスパッドの実物が出現する。


「おお……」


 それは謳い文句に違わぬ、超リアルな代物だった。おっぱいマウスパッドというよりも、もはやおっぱいである。

 実際に人体の一部がそのまま飛び出てきたかのような造形はリアル過ぎて不気味ともとれるが、ここは無視していきたい。


「何これ、超すごい」


 俺は語彙が消失するレベルで感動を覚えていた。

 まず、おっぱいマウスパッドの基本というべきか、マウスパッド本体部分には謎のアニメ調のキャラクターが描かれている。俺が知らないだけで多分エロゲーか何かのキャラクターなのだろう。これがブサイクなキャラやおっさんだったりしたら叩き付けて壊してしまいそうなところだが、そんなオチもなく普通に美少女キャラである。

 サイズは……でかい。おっぱいもだが、パッドそのものが普段使いするには支障のある大きさだった。多分、等身大という事なのだろう。

 そして、驚愕すべきはその質感だ。何かのジェルを詰め込みましたと言わんばかりの商品ではなく、本物の質感……いや、現実では有り得ないほどきめ細かい肌質で作られていて、触っても人間の肌に触れているような感覚を覚えるほどに精巧なのだ。しかも、ビビる事に若干低温ではあるが体温まで感じる。体臭まで漂ってきそうなリアリティは、正に戦慄するレベルの技術の無駄使いである。

 加えて、乳首まで付いていた。おっぱいなんだからそりゃ付いてるだろって言われそうだが、市販されているおっぱいマウスパッドにはそんなものはついていないはずだ。探せばあるのかもしれないが、ここまで完璧な乳首のついたマウスパッドは存在しないと断言できる。

 現実的かと言われればそうではない。それはどちらかといえばエロゲーやイラストで見かける乳首の形であり、色だ。メラニン色素が大活躍してますといった感じの黒乳首ではない。大きさも含めてファンタジーといっていいだろうが、目の前にある存在感は確かにそのもの以上と評価して差し支えないだろう。

 正に超リアル。リアルを越えたリアリティを偏執的なまでに追求した驚異のアイテムだ。


「恐るべし、おっぱいマウスパッド。……いや、馬鹿な」


 ここまででもビビるレベルだったのに、その質感を味わうべく手を伸ばしてみると、驚愕の事実が判明した。なんと、力を込めると痕が残る。それはまるでこの下に血管でもあるかのような、繊細な仕様だったのだ。

 触るなら、繊細なタッチで優しくとでも言うつもりか。マウスパッドの癖に生意気な……と、優しくタッチを続けていると、陥没気味だった乳首は少しづつ存在感が強調し始めた。

 つい舐めたくなるが、いくらリアルでもこれはマウスパッドだと思い留まる。それをしてしまえば、色々なものを失ってしまう気がした。


 これを作った奴は馬鹿だな。間違いない。そして、あまりのリアリティにドン引きしつつ、揉む手を止めない俺も馬鹿だな。間違いない。

 うむ。





-2-




「はっ!?」


 ふと、空腹を覚えて我に返る。あまりのリアリティに驚愕と感嘆を覚えつつ、揉んだり抓ったり揉んだりしている内に随分と長い時間が経過していたらしい。

 サバ缶を開けたのはおっぱいをマテリアライズする直前だ。いくら量が少なく、物足りなかったとはいえ、数分で腹が減るとは思えない。一体俺はどれだけこのおっぱいに集中していたというのか。

 時計がないので正確な時間は分からないが、むしろそのほうが幸せかもしれない。もしも十時間とか経過してたら、ドン引きする自信があった。


 このマウスパッドは危険だ。明日の飯にも事欠く状況にも拘らず、放っておけばいつまでも揉んでしまう驚異のパワーを秘めている。

 エアクッションのプチプチや粘着シートをコロコロさせるアレのように、手元にあったら無限に弄ってしまう魔性を感じる。手元になければ……いや、いっそ廃棄してしまえばそんな魔性に囚われる事もないのだろうが……かといって、これをしまう気にはなれない。くっ、なんて意思が弱いんだ。こんな、生産性が一切存在しないエログッズを手放す事が出来ないなんて。

 ここは前向きに考えよう。これは極上の暇潰しグッズだと。

 さすがにずっと揉んでるのは如何なものかと思うが、こんな生活を続けていれば暇は多く発生するはずだ。今のようなカツカツな状況で夢中になってしまうのは問題だが、合間合間で遊ぶのはアリだろう。ぶっちゃけ、一緒に出た古いマンガ雑誌よりはこちらのほうが楽しめそうだ。と、考えつつ、気がつけば手はおっぱいを揉んでいた。もはや、自らの肉体を制御出来なくなっている。……おのれ、おっぱいマウスパッド。


「これはいけません」


 このままだと、俺は睡眠すらとらずにただおっぱいを揉むだけの時間を過ごしてしまいそうだった。食料が冷凍餃子しかない今、それはあまりに危険といえるだろう。

 実質的な食料事情がノルマというのもいけない。計画性が一切存在しない生活は楽なほう、楽なほうへと堕落する事だろう。それは恐れるべき事だ。

 かといって、ロクにシステムを理解出来ていない現状、詳細な計画など立てようもない。せいぜい、ゴブリン撲殺してカード回収する作業を何周するとか、目的のものが出るまで頑張るとかそういった設定程度だろう。


 というわけで、再度ダンジョンへとやって来た。

 未だ睡眠すらとらず、ひたすらゴブリンを撲殺する作業に邁進しているのは何かの狂気に囚われているように感じなくもないが、幸い体はまだまだ動きそうだった。

 体が元気なら[ 拠点 ]にいると、ついついおっぱいを揉んでしまうだろう。なら、揉めない場所にいればいい。カードも回収出来て一石二鳥である。

 ……目的と手段がおかしな事になっている気もするが、とりあえず問題はない。


 このままおっぱいに思考が汚染されるのは危険極まりない。切り替えていこう。俺はゴブリンを狩るマシーンだと自分に言い聞かせるのだ。


「うがーーっ!!」


 そうして、カードを収集する作業に邁進する。

 帰還ゲートまでの道筋はすでに暗記している。それ以外の道はほとんどノータッチだが、とりあえずゴブリンのドロップでフリーゾーンを埋める作業であれば問題なく周回が行えるようにはなっていた。

 慣れというものは恐ろしいもので、もはやゴブリンを撲殺する程度では何も感じなくなっている。戦う前から奴らがカードに見えてくる事もあった。発展性の余地がない今の状況ならともかく、俺の成長という意味ではあまりよろしくない状況ではあるだろう。

 これから先、ずっとこの周回のみを繰り返し続けるのは無理がある事は分かっているのだ。

 どう考えても効率が悪い。ゴブリンチケットのドロップ率もさることながら、そもそもゴブリンの数が少なすぎる。一周あたりの攻略に二時間程度かかって、チケットが平均三枚では、不眠不休でも三十六枚。現実的にその三分の二を休息に割り当てるとすれば一日十二枚が現実的な期待値となる。今は足りないながらもコンスタントに食料が出ているが、どこかで無理が出てくるのは必然だ。

 食料が優先とはいえ、それだけというわけにもいかない。こんな非文明的な生活をいつまでも続けるつもりはない。そろそろ全裸に慣れつつあるが、せめて服は欲しい。

 ならば、先へ進む必要が出てくる。問題はいつこの周回を切り上げるかだが……切っ掛けを掴み切れずにいた。

 周回を繰り返す中でちょくちょく脇道へと目を向ける事はあるが、どう考えてもその先ですぐ行き止まりになっているようには見えない。おそらく、俺が踏破して周回しているのはフロアの数%程度である事は予想がついている。そんな広大なダンジョン探索に向かうには、あまりに装備が貧弱過ぎる。

 装備といっても武器・防具の事ではない。水、食料、マップなどを記載するためのメモ書き、加えて不測の事態に備えるなら傷薬なども必要だろう。




[ ミネラルウォーター(500ml) コモン ノーマル/アイテム ]


 拠点に戻り、ガチャから排出されたアイテムを見て考える。

 まあ、これを集めればいいのは分かる。あっという間に飲みきってしまう量はともかく、ダンジョンに持ち込む事はできる。拠点では水の心配はいらないのだから、これを消耗品として扱う事は何も問題はないだろう。持ち込むためにフリーゾーンを圧迫するものの、中で使用する事が前提なら一時的な問題に過ぎない。


[ ミネラルウォーター(2L) コモン ノーマル/アイテム ]


 ……いや、量があればいいという事でもないんだ。

 問題は、所詮消耗品であるという事。何度でも持ち込める、あるいはペットボトルだけでも使い回せるなら拠点で汲んでいくという方法もとれるが、探索経路の拡張を行う度に消耗品を集める必要があるのは勘弁願いたい。

 負傷に備えて念の為用意するような傷薬などならともかく、確実に消耗するものを備蓄するのは現状では厳しいと言わざるを得ない。


[ ミネラルウォーター(2L×8) コモン ノーマル/アイテム ]


 いや、だから量が多ければいいというわけではないのだ。……というか、どうなってんだこのガチャ。さっきから水しか出ないぞ。呪われてるのか。

 たとえばこの大量の水だが、これを持ち込むにはフリーゾーン一枠でそれは問題ない。だが、マテリアライズしてしまうといきなり大荷物になって元に戻せない。ダンボール抱えてダンジョン探察するつもりはないし、一度に飲みきれる量でもない。

 ならば、拠点を出た直後にマテリアライズして放置すれば周回でも使い回せるんじゃないかとも思ったのだが、テストの結果それも難しそうだという事が判明した。




「うん、そうじゃないかとは思ってた」


 拠点を出てすぐそばでミネラルウォーターをマテリアライズし、床に置いておく。そして、そのまま一周して戻ってきたら放置したペットボトルは消えていた。

 マテリアライズした直後に拠点へ入っても消えたりはしないから、つまり帰還か何かで拠点に戻ってくるとダンジョン内に置かれたものはリセットさせる仕組みという事らしい。更なるテストで同じ周内であれば消えたりしない事も分かったが、ようするに周回を飛び越えてマテリアライズしたアイテムをダンジョン内で使い回すという事は出来ないってわけだ。ダンジョン入り口に備蓄しておこう作戦は脆くも破綻した。


 そんな感じで周回を続けていると、ひょっとしたらこのまま不眠不休で活動できるんじゃとも思い始めたのだが、さすがに限界が見え始めた。明らかに営業マン時代の体力ではないが、それでも限界はあるという事らしい。可能であっても不眠不休で活動するつもりはないが。


[ 巨大おにぎり コモン ノーマル/アイテム ]


 こうして回していると分かるが、そこそこの頻度で食料は出る。どこかの弁当屋がネタで作ってみました的な巨大おにぎりも、今はただありがたかった。というか、久々の炭水化物に泣きそうだった。

 感覚的には10回に1回程度。期待値で考えるならゴブリン撲殺コースを三周すれば一食分くらいは手に入る。……明らかに足りないな。巨大おにぎりは一食分以上のカロリーはあるだろうが、これはコレ特有の特徴でしかないのだから。


[ 風邪薬 コモン ノーマル/アイテム ]

[ スリッパ コモン ノーマル/アイテム ]

[ USBケーブル TYPE-C(2M) コモン ノーマル/アイテム ]

[ ハンガー コモン ノーマル/アイテム ]

[ のど飴 コモン ノーマル/アイテム ]

[ 汎用ゲームパッド コモン ノーマル/アイテム ]

[ 実録!猿でも分かる飛び込み営業 コモン ノーマル/アイテム ]

[ スマートフォン画面保護フィルム コモン ノーマル/アイテム ]

[ レンタルビデオ店廃棄VHSセット コモン ノーマル/アイテム ]

[ 白菜(単身者向け1/4カット) コモン ノーマル/アイテム ]


「……しかし、渋い排出率だ」


 おにぎりを口にしながら、手にしたカードを並べてみると実感する。

 購入するならそこそこの値段になりそうではあるが、ほとんどは無用の長物であり、単品で機能しないものだ。下手をしたら元の生活でもゴミ扱いされるものも含んでいる。というか、コモンしか出てない。

 ここに来る以前なら雑談ネタとして飛び込み営業の本を読んだかもしれないが、今なら暇潰しとしても手にとる気はなかった。おっぱい揉んでたほうが遥かにマシである。

 巨大おにぎりやミネラルウォーターの8本セットが出るあたり、食料に関してはコモンでも特に問題はないのだが、肝心のダンジョン攻略を進める切っ掛けになりそうなものはなかった。

 イクイップもスキルもベースも、未だ見ぬユニットカードも一切出ない。ここまで出たアンコモンやレアは、アレでもかなり運が良かったという事なのかもしれない。


「……寝るか」


 ここは一旦リセットしたほうがいいかもしれない。このまま続けていても微妙なものしか出ないような気がする。

 たとえていうなら、麻雀で続けて三位を取り続けている気分だ。最悪というほどではないが、浮上できる気がない。ウマもつかない。ただ時間だけを浪費している時のアレだ。

 続けて逆転を狙うのではなく、場を離れて気分を入れ替えて再チャレンジしたほうが結果的に良くなる流れである。


 寝る前にちょっとだけ揉んでおきたい誘惑に耐えつつ、石床へ横たわった。


「……寝辛い」


 分かってはいた事だが、そのまま横たわって寝るのには無理のある環境だった。床は硬く、俺は全裸。微妙に肌寒さを感じる室温では疲れていても眠れる気がしない。

 色々と体勢を変え、最終的にガチャマシンに背を預けて座る形で眠りにつくまで三十分ほどはかかった気がする。


 そうして、長い延長戦の末に俺の一日目は終了した。時間的にはすでに一日半くらい経過してるが。




-3-




「……体痛え」


 起きた時にまず感じたのは全身の強張りだ。筋肉が引き攣っている気がする。

 単純に筋肉痛というわけではないだろう。また、石床で寝たせいでもない。それらも多分に影響あるとは思うが、全体の中ではささやかな割合のはずだ。


「あいたた……」


 体がミシミシいうような気がするが、半ば無理やり起き上がる。やはり、問題なく体は動くし、強烈な痛みが伴っているわけでもない。

 感覚的にいって、自分の筋肉が別物に変化している気がした。あれだけ酷使すれば筋トレなど目じゃない負荷はかかっていて当然で、それに拠点の回復機能が重なった事で急激な成長を果たしたのかもしれない。

 目線を下に向けると、俺の体は自分で見てはっきりと分かるほどに引き締まっていた。最近増えてきた贅肉が消えて、その下にあった筋肉が浮かび上がってきている。

 ただ、筋繊維はそこまで膨張している気はしない。腕や脚もサイズ的にはほとんど元のままだ。多分、筋肉の質そのものが変化しつつあるのだ。これなら、昨日までの筋力でも問題なかったゴブリン撲殺周回が更に捗る事だろう。


 ここまで分かりやすく変化があるのなら、ステータスも変化があるだろうとウインドウを開いてみるが、こちらは何も変化がなかった。相変わらずフラットなオール10のままである。

 やはりこれは何かの補正値のようなもので、実際の肉体とは別に扱われる数値である可能性が高いのだろう。俺自身を鍛えてもこの数値が変わる事はなさそうだ。


 そして、寝る前からの変化といえば、フォームで投げた質問への回答が返ってきていた。


 Q.『じっせきリストください』

 A.『複数の実績を開放する事でウインドウにリストが追加されます』


 うん、知ってた。すごい今更感の漂う回答である。ただ、それだけではなく補足も追加されている。


 A.『このリストに追加される実績はすでに開放したジャンル、あるいはその関連実績となり、完全に未知の分野に関しては非表示となります。また、現時点で存在していない実績でも後のアップデートで追加される可能性があります』


「ふむ」


 大体想像通りであるが、ちゃんと明言してくれるのは助かる。

 今現在、俺が実績開放したものは二つ。


< 討伐実績:ゴブリン二十体 > フリーゾーンNo.1上限値1Up

< 討伐実績:ゴブリン五十体 > フリーゾーンNo.1上限値2Up


 これに加えて表示されている未開放実績は……。


< 討伐実績:ゴブリン三百体 > フリーゾーンNo.1上限値3Up

< 攻略実績:第二層到達 > ???

< 探索実績:宝箱獲得 > ???


 のみである。さすがにこれだけしかないとは思っていなかったから、ここまでの獲得実績によって開放されるか、行動によってリストが更新されるだろうとは考えていた。ただの予想だったものが、はっきりとしたわけだ。

 いきなり要求数の跳ね上がったゴブリン三百体を達成するにはまだまだかかるし、宝箱も周回範囲ではお目にかかっていない。ブロマイドで解除されていれば楽だったのだが、アレはノーカンなのだろう。これだけを今後の指針とするならば、このまま周回を続けるか第二層とやらを目指す二択になる。


「素直に考えるなら探索範囲を広げるべきなんだろうな」


 今の範囲をグルグル回るだけではゴブリン討伐数が増えるだけだ。その実績ボーナスにしてもフリーゾーンの上限値が上がるのみで、効率は良くなっても現状の改善にはほぼ寄与しない。

 ならばと、別の実績を模索するにしても、現状の狭い行動範囲で解除出来そうな実績はない。実績が隠れてそうなのはガチャだが、それだって運の要素であり、俺が出来る事といえば試行回数を増やす事くらいだ。ガチャ回した回数で解除される実績はあると思うんだが、今のところ見つかっていない。


「とりあえず一周してくるか」


 寝起きの散歩がてら、ゴブリン撲殺コースを一周してくれば目も冴えて思考も捗るだろう。ついでにガチャも回せて本日の運勢的なものも測れる。




「ギッ!」


 相変わらず、対象を視認しただけで無闇矢鱈に突っ込んでくるゴブリンを蛮族棒で殴り飛ばす。

 予想通り、変質した体による攻撃は奴らの頭部を一撃で破壊する程度には強まっていた。これまでほぼ一撃だったのが確実に一撃で仕留められるようになったというわけだ。このままいけば、一撃で奴らの頭部を粉微塵に粉砕する事が出来るようになる日も近いだろう。

 そんな事を考えながら、やはり何かがおかしいと考え始めていた。

 多少余裕が出てきたからなのか、冷静になったからなのか、あるいはおっぱいのせいなのか、こうして戦いながらも思考にリソースを割く余裕が出てきた事で不自然さが浮き彫りになってきたというべきか。


 ……今、俺はゴブリンを適当に殴りつけて撲殺しているわけだが、いくらなんでも順応するのが早過ぎやしないだろうか。


 出来ると実際にやれるはまったく異なるものだ。出来るかどうかでいうなら、そこら辺を歩いてる高校生だって飛び込み営業をする事は可能だが、それを実行に移すには沢山のハードルがある。特に、その中で大部分を占めるであろう心理的な問題は大きい。

 俺がゴブリンもどきやこのダンジョンで戦った一匹目に大苦戦しつつも奮戦したのは、必要性によって心に追い込みをかけたからに過ぎない。なのに、その直後から忌避感を感じずに戦闘出来ているのは異常と言わざるを得ないだろう。現実的に考えるなら薬物か洗脳か、神様なら超常的な何かか、そういった忌避感を抑え込む何かが働いているような気がしてならない。


「……質問してみるか」


 そういえば今日の分の質問権はまだ消費していない、とダンジョンアタック中ではあるが質問を投げてみる事にした。

 この面倒臭い入力フォームで文字にして質問するのは中々難しいが、ある程度なら向こうで読み取ってくれるだろうと期待する。


『きひかんがない。せんのうされてます?』


 ……自信はないが、多分読み取ってくれるだろう。

 まあ、俺自身は別に洗脳されてたり思考誘導されていたとしてもそこまで忌避するような事ではないと思っている。人によってはそういうのは許せないという奴もいるだろうが、必要ならソレもアリかなとは思うのだ。

 人格が完全に変わってしまうのはアレだが、俺は変わらず俺のままだし、戦闘への忌避感がなくなる程度であればむしろ好都合ともいえる。それなら、ゴブリンの死体に対しての気持ち悪さなども軽減してもらいたいものだが。

 そうして半ば作業的にゴブリン撲殺周回を終え、十三枚のカードをフリーゾーンに溜め込んで帰還した。今回は運が良い事にゴブリンチケットは四枚だ。


「……おや、回答早いな」


 今日の運試しとしてガチャを回そうと気合を入れているところで、本日の回答が返って来ている事に気付いた。特に音や表示があるわけではないのだが、返ってきたとなんとなく分かる仕組みらしい。

 そしてウインドウを開いてみれば、やはり先ほどの質問に対する回答が戻ってきていた。


Q.『きひかんがない。せんのうされてます?』

A.『忌避感……でしょうか? 良く考えてみたらそのフォーム書き辛いですよね。漢字ないですし』


 ようやく分かってもらえたらしい。きっと読む方も大変だろうから改善求む。


A.『おそらく戦闘などに対して心理的な忌避感を感じていないという事だと思いますが、こちらでは特に心理的な作用を伴う事は行っていません』


 しかし、肝心の回答は少々予想外ともいえた。

 ならば、カード回収のために嬉々と……はしていないが、黙々とゴブリンを撲殺するのは俺本来の性質とでもいう事なのか?


A.『ただ、明らかに傾向があるのだとすれば、そういう特性を持つ拠点の施設を設置、あるいは装備を使用している事が可能性として挙げられます。このような効果はパッシヴのスキルカードに多く見られます。カードテキストが表示されるようになればちゃんと確認出来るでしょう』


「…………」


 随分と色々な情報が返ってきたぞ。思ってたよりも親切じゃないか、神様。

 これをまとめると……まず、実はカードには名前、レアリティ、分類以外に解説文が存在しているという事。俺にはまだ見えないが、何らかの方法でこれが見えるようになるという事。そこには装備の特性などが表示されているらしいという事。

 パッシヴスキルに関しては、アクションスキルがあるのだからそういうのもあるだろうとは思っていたから割愛。

 そして、施設や装備には俺の心理状況に影響があるものも存在するという事実。別におかしな事ではない。これはゲーム的に考えるなら、設置しておけば力がUPするとかそういう効果のある施設があったりするというだけの事だ。

 俺への洗脳に関して神様は手を出していないという回答を信じるのなら、今現在使用しているカード群にそういうものがあるという事……。そこで真っ先に候補に挙がるのは……おっぱいマウスパッドだ。

 ……いやいや、違う。確かにおっぱい揉んでる時は洗脳させてる感じではあったが、多分違う。……違うよな?


 そういう冗談は置いておくとして、有り得そうなのは< ゴブリンの蛮族棒 >だ。……というか、コレしかない。

 詳細は分からないが、コレには使用者の戦闘や殺しに対する忌避感をなくすとか、タガを失わせるとか、あるいは蛮族化させるといった特性が付与されているのだろう。これを使い始めた時期を考えるなら、俺の違和感にも合致する。それを良しとするかどうかについては……多分、悪くない影響だったのではないかと思う。

 一切の影響がなく、ゴブリン殺す度に吐くような精神状況では到底生きていけない。ここはそういう環境だ。いつかは慣れる必要があるというのなら、それを加速してくれた蛮族棒は助けになったという事なのだ。

 尤も、これのせいで俺が蛮族になりつつあるというのなら今後の使用は考えないといけないが、今のところそこまでの影響はないと判断する。むしろ、もう少し戦闘意欲が湧いても構わないくらいだ。

 ここまでの事は予想に過ぎないが、まあ当たっているんだろう。




-4-




 と、すっきりしたところで、本日最初のガチャである。

 回数は四回。リフレッシュして悩みも解消出来た俺ならきっと何かいいものが出るに違いないと思い込む。ガチャにプラシーボ効果など影響はないだろうが、思い込み大事。

 物欲センサーなんて言葉があるくらいだ。そういうジンクスがある可能性だって絶対にないとは言い切れないのである!




[ ブレストプレート アンコモン イクイップ/アーマー ]


「……え、マジか」


 といってもどうせコモンコモンと考えていたところ、まさかの排出だった。まさか、本当に調子がいいのだろうか。ここまでほとんどお目にかかっていないコモン以外、それも装備が出てきた。

 ……いや、冷静に考えると枠がない。蛮族棒なしでのダンジョン・アタックは無理があるし、今のところ防御に難を抱えているわけでもない。

 というか、胸当てか。……全裸に胸当てだけってどうなんだろうか。変態度が増しているような気がしないでもないが……装備としては有効だろう。致命的な弱点である胸部を覆うのは大事だ。

 ええい、次だ、次。


[ アメリカ軍 MRE コモン ノーマル/アイテム ]


 一瞬MREってなんだと思ったが、確かレーションの事だ。カードの絵はただの袋にしか見えないが、要するに食い物である。

 あまりおいしくない事で有名な米軍のものより、出来れば自衛隊のもののほうが良かったが、食えるだけ全然マシだ。今の俺には超ありがたい代物である。

 なんだ、これは来ちゃってるのか。俺の時代が来てるのか?


[ ミネラルウォーター(500ml) コモン イクイップ/チャージ ]


 と思ったらまたもや水である。2L×8本の在庫すら用途がない状況で500ml追加されても困るだけ……。


「なんだ、これ」


 と思ったら、カード名の表示が違う事に気付いた。ノーマル/アイテムではなく、イクイップ/チャージだ。初見の分類である。

 チャージの意味をそのままとるなら……まさか、拠点に戻った時点で補充されるとか、そういう事なのか? 検証は必要だが、もしそうだとしたらダンジョンの探索時間に大きく影響する。

 いや……胸当てもそうだが、そもそも枠足りてないか。なんだろうか……すさまじく当たり気配のするガチャなのにどこか足りていない、そんな気持ち悪い感じを受ける。もどかしい。

 しかし、このままの調子が続くなら、最後だってきっといい物が出てくるだろう。そうだ、不安など覚えてはいけない。今の俺のガチャ運は上がり調子である、そう信じるのだ。


[ トランクス コモン イクイップ/アーマー ]


「おお……」


 そんな願いが通じたのか、待ち望んでやまなかったものが排出された。パンツである。枠が足りない事があるにしても、これは大きな一歩だ。すでに全裸で棒を振り回す事に慣れきっていた現状から大きく蛮族度を下げてくれる代物である。戦闘行動をとる事を前提に考えるのなら、ブラブラしないボクサーブリーフなどのほうがいいのかもしれないが、完全に露出するよりは遥かにマシだ。

 そして、俺の上り調子はここまでではなかった。


[ イクイップカード所持3枚達成 実績ボーナスを獲得しました! イクイップゾーン+1! ]


 ガチャが終わって、排出されたカードを受け取るタイミングでそんなアナウンスが流れた。


「え、ちょ……」


 なんだこれ。もしかして俺死ぬのか、と考えるほどに色々調子が良かった。望んでやまなかったパンツに加え、このガチャ排出率。そして枠追加と、すべてが良い方向へと転がっている気がする。

 良く考えてみたら、ゲームのチュートリアル直後って普通こんな風に無闇矢鱈に出来る事が増えていくもんだよな、とか考えたりしてしまったが気にしない。

 良く考えなくても装備品二個というのは強烈なパワーアップだ。元々五個ぐらい装備枠があって追加されたとしても喜ぶような要素である。それが一つから二つに増えたのは劇的な変化と言わざるを得ない。


 とにかく、今の俺はついている。ここは気合入れてゴブリンを撲殺しないといけない。そして、この運が保持された状況でガチャを引きまくるのだ。

 そこは普通、新しい領域に足を伸ばすところだろと言われそうだが、まだ検証が足りてないのだ。三百体撲殺して実績解除狙うくらいのほうが俺には合っている。


 というわけで、早速検証である。蛮族棒を一旦外し、代わりにブレストプレートとトランクスをセットする。傍目から見たら異様な出で立ちではあるのだろうが、それでも全裸よりはマシだろう。

 そして、その状態で拠点から通路へと足を踏み出した。


「おお……これは意外と……」


 素肌に金属製の胸当てはバランスが悪いだろうと考えていたが、実際に装着してみるとそれほどでもなかった。

 イクイップカードの特性らしいサイズ調整がされているのか、非常にぴったりとした装着感は普通にこのまま戦闘できそうだ。もちろん、留め具が肌に当たってちょっと痛いし、金属部分が冷たかったりもするが許容範囲である。ブレストプレートは中々アリだ。そう……ブレストプレートは。


「これは一体、どういう事なんだ?」


 一方で、トランクスのほうが良く分からない事になっていた。二枠目にセットしたはずが、下半身を見ても相変わらず俺のエレファントが鎮座しているままだ。トランクスの社会の窓から飛び出しているというわけではなく、そのまま何も履いていないという意味である。……パンツはどこへ消えてしまったのか。

 ウインドウを表示させてみても、トランクスはちゃんとセットされている。なら、二枠目というのが駄目なのか。有効化されていないという可能性もあるが、用途によって枠が制限があるとか……。このシステムなら、枠そのものが変わってきそうではあるが……。


「……はっ!?」


 良く分からないと頭を悩ませているところで、微妙な違和感を感じた。なかったものがある感覚。……そうだ、ブレストプレートもそうだが、イクイップカードはバッチリフィットして装着されるから気付かない事は有り得た。

 ……頭にトランクスを被っていた。


「ふざけんなっ!!」


 脱いで叩き付けてやりたかったが、とれない。くそ、これもイクイップの特性か。脱げて下手にロストするよりはいいだろうが、やるせない気持ちはどうしようもない。

 いや待て……落ち着け。これはひょっとしたら枠の位置の問題では? 二枠目にセットすれば、装備位置が変わってたりとか……。

 しかし、一度拠点に戻って一枠目にトランクスをセット、再び通路へと出るがトランクスは頭に装着されたままだ。


「つまり……これはアレか? このトランクスは兜ないし、帽子的な頭装備だと?」


 まったく意味が分からない。どこの世界にパンツを頭に被って戦う戦士がいるというのか。

 ……良く考えてみたら結構いるな。真っ当なヒーローでは極めて稀だが、パンツ被ってるキャラクターって結構いる気がする。大抵は女性下着かつ変態だが。


「まあいい……落ち着け、加賀智弥太郎。何も取り乱すような事ではないじゃないか」


 口に出しているあたり全然落ち着けてない気もするが、これは単に思っていたよりも状況が変わっていないというだけの事だ。

 今までは全裸だったわけで、そこに下着と装備枠を手に入れた。そりゃ興奮するだろうし、文明開化の音がする。そして、それが頭に出現すればふざけんなって気にもなる。しかし、枠は増えた。装備も増えて選択肢は広がった。そこは変わらず好転材料なのだ。

 加えて、イクイップとして使えないのならマテリアライズしてしまえばいい。頭装備であろうとパンツである事は変わりないのだから、物質化して制限がなくなれば気にするような問題ではない。


 拠点に戻ってトランクスをマテリアライズ。当たり前だが、本来パンツであるそれは普通に履く事ができた。なんか釈然としない気持ちがこみ上げてくるが、これも経験だ。イクイップカードの保持数が実績に関係している以上、マテリアライズせずにおくという手もあったが、一切後悔しない。

 そしてどの道、ダンジョン内では枠に制限がある。加えて、イクイップのままでは結局拠点でチンコ晒したまま生活する事になるのは変わらない。どちらかではフルチンを強要されるのだ。だから、この経験はこういう事もあるという教訓として胸に仕舞っておくべきなのだろう。






「いや、パンツが頭装備扱いはねーよ」


 冷静に考えてみて、やっぱりこのシステムはおかしいと判断した。






文明開化の音がする。(*´∀`*)

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[一言] 昔、ジャンプで連載されていた変態を主人公として採用した漫画ではパンツを被って大活躍していたから、パンツを防具扱いとか有ると思いますよ。 まあ、すぐにPTAとか教育委員会が大騒ぎして連載を差し…
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