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3.敵対するのは、権限持ち2

 手を引かれエスコートされる。

 その寄り添う姿だけならば、多少仲が良い夫婦に見えなくもない。

 相手は相変わらずの麗しの(かんばせ)で、その身を包む服装は、簡易的でありながらも、その魅力は衰えない美丈夫なのに対し、そのエスコート相手の奥様であるわたしは、服だけは更にランクが上がったが、見た目は多少ましになったレベルの女で、完全に不似合いな事間違いなしと言い切れる容姿。

 ただ、さすが公爵家の侍女。

 ぼさっとしたボロボロな容姿のわたしを多少マシ程度に変えてくれた。

 パサパサになっている髪をまとめて、青白い肌に化粧して、それだけでだいぶマシになった気がする。


「さて、何か聞きたいことがありそうな雰囲気だな」

「ええ、たっぷりと」


 本当ならば、このあと部屋に帰って惰眠を貪りたかった。

 お腹が満ち足りたあとのお布団は最高なのだ。

 

 しかし、問題が発生した。

 わたしに関わりのない問題なら、絶対無視した。知らんぷり一直線だ。

 

 少しずつ人気のない方向へ導く彼の真意は分かる。

 誰にも話を聞かれたくないという事だ。

 ならば、わたしも遠慮なく言う。

 というか、この男に言ってやらねばならない。


「あの()の魂胆は分かっていたのに、なぜ放置しているのですか? もしかして、お手付き(・・・・)だったりするんですか?」


 半目になりながら聞くと、旦那様は心底馬鹿にしたような顔でわたしを見下ろした。


「くだらない。私が手を付けるような女じゃない。それに、私があの女たちを招いたわけじゃない」

「ああ、前公爵様でしたね。志はご立派ですね。事故死した部下の寡婦を引き取るなんて」

「父は女性には甘いんだ。困窮している寡婦には同情的でね。それはとてもご立派な(・・・・)事だ」

 

 馬鹿にしたような言い様に、なるほどとわたしは理解した。

 つまり、ミリアム夫人は前公爵様の愛人で、その関係でこの家ではかなりの権利と権限を持っているという事だ。

 それが旦那様は気に食わないが、人道的に引き取った相手を追い出すこともできない、そういう事だ。

 しかも、口ぶり的に今でもお義父様の寵愛を受けているようにも感じた。

 おいそれと追い出す方が面倒なのだろう。


 だったら、今どこにいるかも分からないお義父様に引き取ってもらったほうがいいのではないかと思いながらも、そういえばと思い出す。


 かのお方は、まぎれもない女好きだったはず。

 わたし程度でもその事を知っているので、相当有名だ。


 つまり、若い愛人もいるところに、そこそこ年取った愛人など引き取りたくもなければ、楽しめもしないから、ここで面倒みろという事なのだろう。

 たんなる愛人なら、飽きたら手切れ金でも支払って追い出すこともできるけど、家政の実権を握られているので、外に追い出せば、公爵家の事情を表にされる可能性もある。

 しかも、相手は曲がりなりにも子爵夫人。

 財産のない女ではあるけど、一度保護したのだから、向こうに何か非がないと追い出すことは不可能だ。 


 たぶん、寵愛が離れていっていることをミリアム夫人も分かっている。

 今まで絶大な権力を持っていたのは、前公爵であるお義父様のおかげだ。

 しかし、代替わりして、その影響力も薄れていっていた。

 だからこそ、次なる手を考えていた。

 そして、きっと彼女の娘もそのつもりで、ここに居座っているのだろう。


 それを聞いてわたしは、隣の男の足を思い切り踏みたいくらいには、騙されたと感じていた。


 確かに旦那様は言っていた。

 公爵夫人として多少(・・)厄介事に巻き込まれる可能性もあると。


 それは外部的要因かと思いきや、内部的要因も示唆していたとは。


 この家の家政を取り仕切っているミリアム夫人は、明らかに娘を旦那様の嫁にしたがっていた。

 その野望を虎視眈々と狙っていた。自信もあったのかも知れない。

 それなのに、どこの馬の骨とも分からない女とスピード婚して、出し抜かれたわけだ。


 彼女の娘がどういう存在かは分からないけど、一つ言えることは、わたしはこの家の女王的女性を不可抗力的に敵に回し、今後熾烈な女性の主権争いに巻き込まれるという事だった。

 さらに、思い出したけど、わたしにつけられる侍女の人事権もミリアム夫人に明け渡されている。

 旦那様の手によって。

 とんだ嫌がらせを受ける羽目になった。

 旦那様は、全てを知っていて、わたしに丸投げしてきたのだ。



 わたしの夢見ていた堕落生活が遠のくのを感じた。

 そして、それは現実となって襲い掛かってきた。




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