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螺子信仰

作者: 相沢 洋孝


 「螺子を讃えよ!」

 大きな講堂を埋め尽くす聴衆。その目の前には熟練整備員らしい服装と腰などに多くの工具を装備した老人が指を高く掲げ、宣言してみせる。


 聴衆は皆、一心に祈りを聞くように静かに立っていた。

 「螺子の緩みは気の緩み。世界を構成する螺子を軽んずるものは螺子によって滅ぼされる」


 整備士であるように見えながら言っていることは宗教の説法そのものであった。


 「かのアルキメデスが生み出したスクリューによって水をくみ上げる技術を生み出した時から、螺旋は様々な可能性を秘めていた。音の記録の分野では蝋を筒とした蝋管レコードが生み出され、摩耗が激しいことにより、廃れ、円盤型のレコードが生まれ、手軽に音楽が楽しめるようになった。そして原理自体は変わることなく、CD、DVD、ブルーレイディスクという風に保存技術は進化していき、皆も楽しむことのできる映像ソフトが大量に出回ることとなった」


 「武器の世界では弓矢の矢羽根が回転を加え、直進性を与えている。それは銃になっても同じである。ライフリングが生み出されることで、それこそ2000メートルを超える長距離射撃を可能とした。螺旋の力は偉大である」


 「乗り物の世界では螺旋がなければ、そもそも走ることが出来るものが出来ず、動力という概念では飛行機、船舶、車両、すべてが生まれず、力を出せなかった」


 「ゆえに螺旋を、螺旋を讃えよ。そして皆の衆、ご一緒に!!」


 





 「「「「周囲確認!指さし呼称!今日も安全作業で!頑張ろう!ご安全に!!」」」」



 



 遠き昔、人々は宇宙を目指し、地球を巣立った。

 ある者は人工の生活圏、コロニーを作り、またある者は地球型の生息可能な惑星を見つけ、降り立った。


 人々は持っていた技術と物資を駆使したが、経年劣化という宿命に抗えず、物は朽ちていく。

 そんな中、世界に影響を与えたのは、やはり物流だった。数多くの貨物船が作られ、生活物資や製造機械がそれに乗って運ばれていく。


 例え、螺子一本でも緩んでいれば危険極まる真空の海に繰り出す船乗りを支える技術者は何時しか、工業の基礎となりうる螺子を信仰するようになった。


 そう、すべての工業製品を支える螺子。それ故に、まさに世界を支える神となったのだ。

 今日も螺子の一本の精度も狂わせないように精密な作業を繰り返す姿はまさに修行中の神官そのものであった。

 その螺子はまた工業製品を支え、世界を救っていく。


 もしかしたら君たちの目の前には、そんな彼らの作る螺子の塊があるんじゃないかな?

はい、螺子です。私たちの生活に欠かせない螺子です、

空を飛ぶヘリコプター、飛行機。海を行く船、大地を掛ける車。みんな螺子がないと存在しません。

この画面を見ているあなたの手元には?もちろんありますよね。大量の螺子の塊が

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― 新着の感想 ―
[良い点] >周囲確認!指さし呼称!今日も安全作業で!頑張ろう!ご安全に!! 安全第一。 ただ、螺子を形だけ称えるのではなく、それを作り出す人も大事にする姿勢ですよね。 [一言] >すべての工業製品…
[良い点] 危険極まる真空の海に繰り出す船 ものを書くって こーゆー事だ って思いました この物語で《宇宙》を字で表現する。嗚呼感銘 話の構成も螺旋構造  教祖→整備士→機械文明→螺子→信仰 …
[良い点] 確かに螺子がないと便利な機械は存在し得ないですし、それが世界を支えているといっても過言ではないですね。螺子は偉大なり! 面白かったです!
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