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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
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4-3 恋バナ・・・?です

あれは 俺達が15の頃だ。


テンレイが誘拐された。


幼いながら人目を引く容姿をしていたのが仇になったのだという。

犯人は若い男だった。年齢26歳 職業・・・なに?詳細はいいだと?・・・いいかモモコ、犯罪者のデータは緻密な方が今後の・・・わかったわかった。確かに話に関係ないな。

その当時テンレイは5歳。

ホクガンやなぜかダイスにまで可愛がられていた。と思う。

その頃のテンレイについての記憶があやふやだ。どうでもよかったんだろう。

もう少し何か印象がないか?・・・そうだな・・・やたらと突っかかって来る小生意気な子供と言ったところか。今とあまり変わらんな。


誘拐された時たまたま用があってホクガンの実家にいた。

ホクガンは有事の際と催しものには昔から鼻が利く。すぐさま潜伏場所を特定。初動の遅い大人共を出し抜き俺達3人は救出に向かった。







「本当にここなんか。」


ダイスは普段のダラけた姿など微塵も感じさせない緊迫した顔でホクガンを睨みつけた。


「俺が間違えるわけねえだろ。ここしかない。」


ホクガンは犯人に対する怒りを抑えながら静かに答えた。

ガツクは普段と変わらぬ態度でテンレイと犯人が居るであろう建物を見上げた。

夕闇に浮かび上がるのはなんの変哲もない普通の高層マンションだ。

日常とかけ離れた事件が起きているとは考えられない程。


「では行くか。」


ガツクはそう言うとマンションの正面入り口に向かおうとしてダイスとホクガンに両腕をがっちりホールドされた。


「何をする。」

「何をするじゃねえよ!!」

「いきなり!しかも正面からとはお前こそ何考えとるんじゃ!テンレイの命がかかっとるんじゃぞ!!」


ガツクはしょうがないとばかりにため息をつき、


「では早く作戦なり考えろ。事は急を要する。」


偉そうにホクガンに命じた。


「こ、こいつ・・・」


ホクガンはかってない程イラついたが確かに今は急いだ方がいい。なんとかガツクの後頭部を殴りつけたい衝動を抑え(殴りつける事に成功したとしても倍にして返されるのがオチだが)来る途中で考えた救出作戦を2人に話す。


「場所は48階4号室だ。間取り図はこれ。おそらくテンレイはここか、この部屋にいるだろう。ガツクとダイスは外側からここまで壁を登って来い。できるか?」


8階ではない。48階である。


「ああ。」

「了解した。」


了解できるものなのだろうか。本当に15歳か、こいつら。


「よし、ダイスはこの部屋、ガツクはここ。俺は犯人を引きつけておく。合図を送るから一気に突入しろ。」


3人はマンションの裏側に移動し、ホクガンが見張り役になって、ガツクとダイスは人目を気にしながら壁を登り始めた。

幸いにも軍校の制服は黒い。すぐ2人は闇に溶け込む。






「ガツク。」


ダイスはすぐ隣で壁を登るガツクに声を掛けた。


「なんだ。」


ダイスはためらってから懸念を口にした。


「お前の所にテンレイがいたらのう、テンレイに集中するんじゃぞ。絶対犯人をどうこうしようとするんじゃねぇ。」

「言われなくてもわかっている。そのために来たんだろうが。」

「・・・・お前、この前のテロリストに人質を取られた時の模擬演習の時どうした?」

「・・・・・・・。」

「犯人もろとも人質全員殺しよったじゃろォ? (あくまで演習です。本当に殺りそうだが演習)言いたくはねえがの。一応な。」

「・・・・・わかった。」


壁を半分ほど登った所でまたダイスが話しかけてきた。

ガツクはイラついてきた。


「なぁ ガツク。」

「・・・・なんだ。」

「テンレイ泣いとるかのう。怯えとるじゃろうなぁ。」

「・・・・さあな。」

「さあなって冷たい奴じゃな。テンレイはワシらの妹同然じゃろが。心配じゃねえんか。」

「あんなうるさい妹なぞ俺にはいない。・・・それにアレなら案外ケロッとしてるのではないか?」

「テンレイ大丈夫じゃろか。待っちょれよ テンレイ。今ワシが行くけぇ。」

「・・・俺の発言は無視か ダイス。」

「えっ?」

「・・・・・・もういい。」






目標地点に来た所でガツクは遥か階下のホクガンに合図を送り、それに頷いてホクガンは自身がなすべき事をしにエレベーターで48階に向かう。


テンレイは大丈夫だろうか。


普段は気の強いおしゃまな妹が顔を恐怖に引き攣らせ、泣いて怯える姿が振り払っても振り払っても脳裏に浮かぶ。

ホクガンは知らず力が入る体を意識してリラックスするようにした。


自然にだ。自然に。疑わせてはならない。

なんとか犯人に取り入り、隙をつかなければ。


チン、と軽い音を立ててエレベーターが止まり、ホクガンを希望の階まで降ろした。

薄暗い照明に浮かび上がる白い廊下には他の住民の気配はない。

ホクガンは静かな足取りで4号室まで来ると大きく深呼吸してインターホンを押した。


ここにテンレイがいる。

必ず助ける。

助けたらまた冗談でも言って笑わせてやるからな。


テンレイの笑顔だけを思い浮かべ、ホクガンが2度目の深呼吸をした時、急にドアが内側から大きく開いた。意表を突かれたホクガンだったがすぐに手でドアを抑え犯人だろう人影に拳を振り上げる。が、その手はガッチリと受け止められ、


「俺だ。ホクガン。」


犯人よりよっぽど恐ろしげなガツクがやや疲れた顔をしてホクガンを見ていた。







ア然としたホクガンだがすぐに我に返り、部屋に入りながらガツクに状況の説明を求めた。


「どういう事だよ。テンレイは?」

「奥でダイスと共にいる。犯人は捕縛し転がして置いた。」


ガツクが扉を開けると茫然として突っ立ったままのダイスとツンとしてソファに座っているテンレイがいた。

テンレイはホクガンに気づくと


「お兄様!」


と満面の笑顔で駆けより抱きつく。それを受け止めながらホクガンはガツクを見、固まったままのダイスを見た。


「いったい・・・・何がどうなってんだ?」







48階4号室に着いたガツクとダイスはまず無言でベランダに降り、中の様子を窺った。部屋は真っ暗で何も見えない。が、人の気配もないようだ。

2人は顔を見合わせた。

ホクガンの予測が違ったか、それとも不測の事態か。

ガツクは今にもガラスを突き破って出て行きそうなダイスを強い目線で抑えつけ、耳を澄ましながらホクガンの合図を待つ。


「ガツク。」


ダイスがやっと拾える声で話しかけてきた。

ガツクのイラつきが再燃する。


「後にしろ。」

「こっちにテンレイはおらん。お前はどうじゃ。」

「・・・・俺の所にもいない。ホクガンを待て。」

「もう待てん。テンレイが・・・・!」

「落ち着けこのバカタレが。」

「これが落ち着いてられるか!テンレイに何かあったらワシは・・・!」

「バカモノ!静かにしないか!」


つい大きな声を出した2人ははっとした。

ついで別の部屋だろう大きな音がして何かが倒れる音がする。

瞬間ダイスが動き、窓を破ろうとしてガツクが足払いを掛け、倒れたところを上から抑えつけた。

もがくダイスを抑えていると部屋に明かりがさし小さな人影がこちらに向かってくる。と思ったらベランダの掃き出し窓がカラカラと引かれた。


「あら、ダイスとガツクじゃない。久しぶりね。」


そこには普段と変わらないおしゃまな美少女が小生意気に微笑んでいた。





ガツク達はキッチンで気絶していた犯人だろう若い男を手近にあった紐で入念に縛り上げた時、インターホンが鳴り、ガツクが応対に出て行った。


「テンレイ・・・・お前がのしたんか?」

「のしたんかって何?」

「・・・・倒したんか?」

「ええ、そうよ。そこに大きなフライパンがあるでしょ?ご飯作ってあげるって嘘をついて殴ってやったのよ。その時貴方達の声が聞こえたの。もう少し早く来れなかったの?あんな重たいモノを持つはめになったのよ?」

「・・・・それはすまんかったのう・・・。そうか自分で・・・。」


ダイスは自分のプライドやら男としてのなにかが地の底まで沈んでいくのを感じた。





その後、警察に通報したり、事情徴収をされたり、警察署で説教をくらったりして、家に帰れば親達がこの危険なバカ息子共に説教をし、やっと解放され軍校の宿舎に帰ってきたら今度は教官たちが待ち構えていた・・・。


「あの緊張感はなんだったんだろうな。俺達迎えに来ただけ?」


懲罰として飯抜きのうえ中等部宿舎の清掃をしながらホクガンは疲れたようにモップにもたれた。


「まさに無駄骨だったな。」

「・・・・・・・・。」

「俺に似て優秀な奴だとは思っていたけどあそこまでとはな。将来とんでもない女傑になりそうだ。ははは。」

「軍部にスカウトするか。あれだけの胆力なら申し分なさそうだ。」

「・・・・・・・・。」

「本当に軍部一色だな、お前のド頭は。」

「軍人を目指す者が軍部の事を考えて何が悪い。」

「そういうことじゃなくてよ。・・・って昨日からやけに静かだな ダイス。」

「・・・・・・・・。」

「コレどうした。」


ホクガンが親指でダイスを指し示す。


「テンレイが自力で解決したのがショックなのではないか?ずいぶん心配していた。」


ガツクも床を拭く手を止めて呆れたように挫折感で充満している友を見る。





「ああ・・・まぁ、好きな女があそこまですごいと男として・・・・」





「!」

「何?」


ガツクがさえぎり、ダイスが目を剝いてホクガンを見た。

ホクガンは2人の反応にニヤッとして


「ただのカンだったが引っかかったなダイス。・・・お前のテンレイに対する態度はわずかだが違うものを感じてな、もしやと思ってたんだよ。」


ダイスが呻きながらしゃがみこむ。


「本当か。・・・・お前に幼女趣味があったとは・・・・」

「あるわけないじゃろ!人を変態みたいに言うんじゃねえ!」

「だが、テンレイは確か・・・いくつだったか?」

「5歳。」

「5歳だぞ?幼女ではないか。」

「テンレイだけじゃ!他の子供にはなんも感じんわい!」


人気ひとけがないとはいえ思いっきり幼女が好きだと叫ぶバカに2人は慌てて口を塞いだ。


「てめえ、このバカ。マジ通報されんぞ。」

「このバカタレが。そんな性癖があるとばれたら軍部に入れんぞ。」


普通に心配するホクガンとどこまでも軍部の事しか頭にないガツク。どこかがズレている。

ダイスが落ち着いたところで手を外す。


「・・・・ワシだってな、あんなちっこいの、好きだなんて思いたくはないんじゃ。・・・じゃがのう・・しょうがないじゃろ。好きなんじゃ。自分じゃどうしようもない。」


ため息をつきながらズルズルと壁にもたれるダイス。

そんなダイスにホクガンは肩を廻して


「まあ、兄としては複雑だけどよ、お前なら認めてやってもいいぜ。・・・・ただし、手ェ出すのは成人になってからだ。もちろんテンレイの承諾つきでな。」

「当たり前じゃ ボケェ!!ワシのこの感情はもっと純真なものなんじゃ!!」

「・・・しかし、よくわからん感情だな。あんなこうるさい子供を好くなどと・・・」

「うるっさいのう!!ほっとけ!!」



テンレイの印象など”やたらと突っかかってくるうるさい子供”ぐらいしかないガツクだが、将来もっとも周囲に理解されない感情を持つことになるとは夢にも思っていなかった。

まあ、主に被害を受けるのは周りの常識のある方々なんだが・・・・







と言う事でダイスはテンレイを・・・・あいつは今いくつだったか・・・・俺達より10は下だったか?では27,8か。実に22年ほど想い続けている。ダイスはあの事件の後、急に精進し始めてな、授業にも真面目に出るようになり、訓練も集中してやるようになった。ホクガンにいわせると「テンレイに釣り合う男になるため」なんだそうだ。

・・・モモコ、もう寝ないか?

・・・その後の進展か?・・・会話をしているのを見た事があるから、意思疎通はできているのではないか?(台風の様な口喧嘩をただの会話と言い切るガツク)

・・・正直どうでもいいんだがな。(ぶっちゃけすぎ)


さあ、明日も早い。風呂に入って寝るぞ モモコ。


私のなかでダイスは大人の余裕溢れるモテる男だったんですがね・・・急激にヘタれなうえ、幼女趣味の変態に変わりそうです。


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