表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/447

1コマ目 各種設定

「………届いた!!!」


そう呟く彼女の手元には、ヘッドギアが収まっていた。

段ボールに詰められ厳重に敷き詰められた発泡スチロールや空気袋を押しのけ出てきたのは、非常に軽く高級感あふれるもの。


「さすがは、10万」


彼女、受験生なピッチピチの高校生(JK)画智是(がちぜ)伊奈野(いなの)は、届いたばかりのVRヘッドギアを装着し、自身のベッドへ横たわる。

するとすぐに体から力が抜け、




『ようこそいらっしゃいました。これより基本設定を行っていただきます』


「ん。なるほど。了解」


突然意識が落ちたかと思えば、すぐにやってくる白い世界。

そんな世界の先にいるのは、宙に浮いた小型の機械のような者。ゲームのコンセプトとはあまりあっていなさそうな設定専用の機械のようだった。

伊奈野の本命はこのゲームでかわいいキャラクターを作ることでも強いスキルとジョブの組み合わせを作ることでもなかったため、


「見た目は私より小柄な感じで、髪はショート。眼鏡もかけられるならかけさせといて。髪の色は黒で、目の色は赤。顔はリアルの私よりも無表情が似合う感じで」


まずは見た目を準備している間に考えていたため最低限伝えておく。

急にそういったことを並べたため相手も機械であるため把握はできるが、


『りょ、了解しました』


少し困惑の色がうかがえる。

だがすぐに、


『顔や体形のベースはお客様を基にいたします。お客様は大変美形でいらっしゃいますので他の方と並ばれても違和感などは、』

「あっ。それはなし。ネットリテラシー的にアウトだから、基にするのはサンプルの物にして。私の要素は一切混ぜなくていい」


話を進めようとして、すぐに伊奈野に却下される。

彼女は受験生真っただ中であり、ちょうど先日『情報』の復習をしたばかりなのだ。ネットリテラシーに関しては厳しくなっている。


『………で、ですがお客様は非常におきれいで』


「そういうの良いから早くして。キャラクターで私の個人的な細かい要素が分かる部分はできるだけ排除」


『………わ、分かりました』


しょんぼりしていますとでもいうような雰囲気を出して従う設定用のAI。だがそれを見ても彼女は一切心が痛まなかった。

なぜなら、その危険性は『情報』で勉強したのだから!


『で、では、次にジョブやスキルの各種設定を行っていただきます』


「了解。ジョブは魔法使いか神官」


『申し訳ありませんが、僧侶という職業はありますが神官という職業は初期選択できる中にございません』


「魔法使いは?」


『そちらはございます』


「じゃあ魔法使いで」


『かしこまりました』


何故魔法使いか神官なのか。

それは単純に、ゲーム的に言うと知能系統のステータスが高そうだからである。受験生として(げん)を担ぐ意味合いでも、知性の高い職業を選んでおきたかったのだ。


「スキルは職業に合いそうなのをおすすめで選んでもらえる?」


『かしこまりました。ではこちらなどいかがでしょう?』


そんな言葉と共に、伊奈野の前へウィンドウが表示される。

そこに書かれているのは、魔法使いの持っていそうなスキルの数々。とりあえず伊奈野としてはどれでも良かったので正直に、


「どれでもいいから、バランスよくこの中から選んでもらえる?もうそれで確定で良いから」


『了解しました。では取得スキルは『風魔法1』『MP増加1』『魔力障壁1』『詠唱短縮1』『魔法使いの心得1』の5つでよろしいでしょうか?』


「OK」


効果もあまり分かっていないが、伊奈野はそれで了承する。彼女にとって構成というものは非常にどうでもいい物なのだから。

というよりそろそろ時間を使い過ぎて(経過時間3分程度)、早く勉強をさせてほしいとイライラしているほどである。


『それでは最後に種族を決めていただきます』

「人間で」


『………かしこまりました』


即答だった。

エルフやらドワーフやら魔族やら、本当はいろいろとあったのだが、もし存在しないものを選んでロスが出てしまうとそれだけで勉強時間が減るということで彼女は無難な人間を選んだのだ。


さて、先ほどAIはこれが最後だと言っていた。

つまり、


『それではこれで各種設定は終了となります。これ以降はチュートリアルがありますので、まずはそちらのご確認をお願いします』


「了解」


『それでは良い人生を』


《称号『何度目?』を獲得しました》


視界が暗転する。()()()()()()()()すら決めることなく。

そして次の瞬間には、また周囲の風景が全く別のものに変わっていた。

そこは、


「邪魔だあああぁぁぁぁ!!!!」

「どけええぇぇぇぇ!!!!」

「俺に話をさせろぉぉぉぉ!!!!!」




「………ケイオスじゃん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
遊ぶためのゲームの中で勉強をしようというのはなかなか面白い発想ですねw でも確かに効率いいかも。 これからどうなるのかが楽しみー。
[良い点] これはガチ勢の鑑w [一言] 2000年代以降の生まれの方って 物心ついた時とか子どもの頃には タブレットとかスマホとか身の回りにあったからか SNSとかネット上でも割とオープンというか …
[気になる点] 画智是伊 奈野だと思ったら画智是 伊奈野とは恐れ入った
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ
OSZAR »