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第96話

「ドラゴンがメリダに現れたのは偶然ではない。転移門はすぐそこにある」


 それはメリダと湖を見下ろす山の山頂付近にあるという。

 ゼノンはようやく観念し全てを話した。


「よいか、転移門そのものには絶対に触れてはならぬ。それに触れたものは物質ですらなくなるそうじゃ。魔法も当ててはならぬ。何が起こるか解らぬからな」


 ガードナーは四騎臣クワトロワが遺した『従者の鎧』を身につけようとしていた。


「デカ過ぎるよなあこれ……こんなの着て山登りとかウソだろ」


 サイズを合わせようと、ガードナーは様々な服を重ね着してパンパンに着膨れしている。そもそもそれで戦えるのか?


「ガードナーさん!」


 ハンナの声に振り向くとそこに……クワトロワが立っている!? 違う、中にハンナが居る?


「これ、中にすっぽり入れますよ!」


 クワトロワが前かがみになると……中が見えるようになった。ハンナは鎧の中に居て、鎧は空中に浮いている。ハンナもよく見れば鎧の中で浮いているではないか。


「なんか簡単に動きます!」


 ハンナのクワトロワが手を振り回す。こんな仕掛けだったのか。


「じゃあこんなに着膨れする必要ねえじゃん……」


 ガードナーはコートやらジャケットやらを脱ぎ出す。



「あーっ! 俺っちの鎧で何やってる!」


 五人の山賊亭のリビングに飾ってあった四対の鎧。俺とハンナとガードナーはそれをテラスに持ち出していじっていた。


「元々お前のじゃねーだろポンコツ猫……」

 ガードナーは呟く。


「出掛けるのか……? 出掛けるんだな! また俺っち抜きで! やいベイト! お前俺っちを子分にしてくれたんじゃなかったのかー!! 今度はガードナーと組んでまた俺っちを仲間外れに……」

「お前も早く着ろよボケ猫」


 ガードナーは俺に食ってかかるビリーを引き剥がす。


「えっ……?」


「今日行くのは俺とブレイド、ハンナちゃんとお前だ」


「ええっ!? 俺!? 俺っちが!? 勇者パーティに!?」

「嫌なら置いてくぞ」

「行く!! 絶対行く!! 俺っち勇者パーティに入る!!」


 ガードナーの判断は、今回の敵に対しては俺とガードナー以外は戦力にならないという事だった。ソニアさんとマリオンさんは俺達が駄目だった時、戦力を立て直すのに必要になると。


「しかし馬が二頭しか居ないな」


「馬なぞ要らん。その鎧を着れば馬より速く移動出来る」


 ゼノンの説明によれば、クワトロワの鎧はほとんどどんな物理攻撃も通さないという。ただし衝撃を全て吸収出来る訳ではないので、敵の攻撃はなるべく避けるようにとの事だ。



「面白いなこれ。本当に少し空を飛べるぞ!」


 俺はちょっと不謹慎にも、この『従者の鎧』の機能に夢中になっていた。

 あの日クワトロワがそうして来たように、この鎧、念じるだけで短い距離をすっ飛んで移動出来る。移動する方向もかなり自由に操作出来る。


「あはははー! 面白いぞこれ! 俺っちめっちゃ強そうじゃないか!!」


 そしてこの鎧の能力はビリーの能力と相性抜群だった。元々の飛行魔法と鎧の能力で、相当自由に、かつ猛スピードで空を飛べるようになったらしい。

 あれなら、あの斧を持って体当たりするだけで相当な攻撃力があるんじゃないか? それでビリーの体が大丈夫かどうかは解らないが……


「私も何か出来るかな……」


 ハンナも鎧の移動動作を確かめていた。この鎧、体が大きくないと着られないと思っていたけれど、全く問題無いようだ。


「ロブロトロスの角と、アントランテアの宝珠はガードナーか?」


 ゼノンの問いに、ガードナーが答える。


「ロブロトロスの角は俺が持って、奴の攻撃を引きつける。その間にブレイドが攻撃する。ポンコツ猫に何をして貰うかは奴を見てから考える。アントランテアの宝珠は……ハンナちゃんが持つのが正しい気がする」


 俺はあの六尺棒を握りしめていた。こいつとは余程縁があったのかな。ガードナーが大変な思いをして取り戻してきてくれたという、正真正銘の伝説の武器だ。


「ブレイド!」


 ゼノンが俺を見て言う。婆さんだよな……? うん、婆さんだ。


「運命なんかぶち壊して来い! ハンナもお主も! 必ず生き延びるんじゃ!」

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