#006 素晴らしき現代日本文化
注意)できるだけ人の目のないところで読んでください。
日が暮れ始める。
母が帰ってくるのは、だいたい19時前後。
それまで戸塚家にお世話になっている僕だが、ここからがなかなか辛い。
何が辛いかって?
この後のイベントだよ。
辛いのは肉体的にじゃない。いや、肉体的にもあるがちょっと違う。
精神的にね。
二歳児の精神的にじゃない。
三十歳児の精神的に。
もうね、一種の虐待じゃないかと。
僕は試されているんじゃないかと。
うん。
察しが良い人は気付いているだろう。
夜といえば、みんなは何をする?
晩御飯。
育ち盛りなので必須だ。
いやちゃんと用意してもらえるよ。
お腹が減って辛いのはちょっと違う。
晩飯抜きとか転生後はないから。前世はしょっちゅうしてたけど違う。
日本人なら必須かもしれません。
うん。
嫌いじゃない。
むしろ好き。大好きだ。僕は毎日入りたい派だから。
そこんところ、水資源が豊富な現代日本に転生できてよかった。
女神様ありがとう、と思ってる。
そろそろはっきり言えって?
欲しがるね。
仕方がない。
こっそり特別に、幸せをおすそ分けしよう。
今から僕は――――
お風呂タイムなのだ。
引っ張った割には普通か!……とでも思われただろうか。
うん、普通だよ。
風呂に入るのは普通だよ。日本人にとってはお馴染みの習慣だろう。
でもね、二歳児は一人で風呂に入らないのも普通なんだよ。
中身が三十歳でも関係ない。入らないんだよ。
母親と入ると思われるだろう。
うん、もちろん入るよ。週末は必ずね。
平日も母上の残り体力次第では入るよ。
でもね、最近ちょっと仕事量がキツいらしくてね。
疲労困憊で帰って来る母上には、ゆっくりお風呂に浸かってもらいたい。
そういうわけで、この後、戸塚家のお風呂タイムにご一緒する。
幼女天使とお風呂!
そしてナイスバディとお風呂!
僕も一応男なわけでして。
何も思わないわけではないんですよ。
もちろん母上も好きなので、あれですけど、母親ですから。
何というか、自分の中で言い訳というものができるんです。
でもここからは言い訳ができない。
というわけで、今から風呂、行ってきます。
ここからは僕だけのボーナスタイムである。
ふぅ、いい湯だった。
……どうされましたか?
実況があるとお思いで?
あるわけないだろ。
幼女の風呂はアウトだ。
だがまぁ、ここまで引っ張って何もないというのは申し訳ないので、ちょっとは教えよう。
まず服を脱ぐ。
当たり前だよね。
まず僕とスズカ。もうボタンだって一人で付け外しできる。
なんの羞恥心もないまますっぽんぽんだ。
当たり前だよ風呂なんだから。二歳児なんだから。
スズカは髪をお団子状にしている。また可愛らしい。
そして次。
ミオさん……いや、ミオ様ももちろん脱ぐ。様付けしないとこれは失礼だ。眼福。
一緒に風呂を済ませてしまう気のようだ。
当然バスタオルなんて巻かない。
自分の家でバスタオル巻くとか、何そのプレイ?
金持ちならバスローブとか着てそうだけど、我が家も戸塚家も庶民なのでそんなものはない。はず。
そしてお風呂へ突入。
僕らは普通の浴槽には入れないから小さいビニールプールみたいなのに入ってる。安全第一。
残念ながらミオ様とはご一緒できない。
だがしかし!
目の前では、ぽけーと見つめてにへらぁと笑いかけてくる天使様。
スズカと混浴 in ビニールプールもどき。
スズカは湯でぴちゃぴちゃ無邪気に遊んでる。
この時期の赤ちゃんは風呂嫌いだと聞いたことがあったけど、普通に入ってる。
え、あぁ、僕と入るときは素直に入る?
お、おぉぅ……
ミオ様からの情報でした。
可愛すぎるやろーーーーーーーー!
ポーカーフェイスが危ない。
とりあえず水に顔付けて叫んでみた。
おっとスズカが真似した……
叫んではないけど、水に顔付けた。
大丈夫か?
そして何事もなく顔上げてにへらぁと笑いかけてくる。
可愛すぎるやろーーーーーーーー!
そしてミオ様がスズカを褒める。
顔に水つけれるようになったと。プールもばっちりだねと。
うん、それが僕の狙い(嘘)。よくやったスズカ!
その後、体を洗う。
なんというか、そこはもう自分でできるので。
あ、頭は洗ってもらった。手が届きにくいから。気持ちよかった。
でも体は自分で!
ミオ様に体を撫でまわされるのは、少々攻撃力がヤバい。
二歳児の身体でよかったよ。ホント。
心は反応しても、体は反応しない。
あと十年経ってたらヤバかった。
おっと、スズカ様、泡だらけで抱き着いてこないで!
滑って危ないから! 転ぶと危ないから!
ホント危ない。
そして風呂から上がって体を拭き、現在。
ミオ様がスズカの髪を梳かしながらドライヤーで乾かしている。
スズカは気持ちよさそうに目を細めている。
パジャマに着替えたスズカは、それはもう可愛らしい。
薄いピンクのパジャマ。ミオ様とお揃い。
そしてミオ様のパジャマもなんか色っぽい。風呂上がりだからか。
「はい、終わったわよ」
「まま、あぃがと」
「どういたしまして」
いい母娘や……。
そう思っていると、スズカが僕に抱き着いてくる。
いつものトテテ→ギュッ→にへらぁのコンボだ。
そしてシャンプーのいい匂いが漂ってくる。ぐっどすめる。
日本の風呂文化、最高だね。
ね?
辛いでしょ?
読んでいただきありがとうございます。
次回⇒#007「別れと再会」 2020/10/16 18:00更新予定
変更履歴
2020/11/08 21:35 行間修正
2021/06/05 22:53 サブタイトル変更
2021/11/07 19:55 文章の見直し(物語の流れには影響なし)