#026 家族の時間(後)
すみません、遅くなりました。
母上が昼食の準備でゲームから離脱。それに合わせて僕も離脱。
一人積み木で遊んでいると、昼食が出来上がるタイミングになったので片づけてキッチンへ。
今日の昼ご飯は豚しゃぶサラダ。
盛りつけられた皿を母上から受け取りテーブルまで運ぶ。
本当はもっとお手伝いしたいのだが、如何せん身長が足りずキッチン台に届かない。
踏み台を使えばいいのだろうが、テキパキ動く母上の足元を邪魔しないほうがいいと断念。母上的にも火とか包丁とか近づけたくないだろうし。
四人掛けのテーブルに母上と並んでいただきます。
「おいしい」
「ありがと、まーくん」
お昼を食べたら歯磨きして、ちょっと休憩してから母上と一緒にお昼寝タイム。
そしておやつを食べたら母上の運転で一緒に買い物。
車はミツヒサさんの知り合いが買い替えるということで安く譲ってもらった。
日本メーカーの黒い軽自動車だ。国産以外の軽自動車をよく知らないが。
前世で免許は持っていたけど、たまに社用車に乗るくらいしか運転する機会はなかった。
やっぱりあると便利だよね。ネット通販がこれからって時代だからね。
そして僕はチャイルドシート……を卒業してジュニアシートにすっぽりと収まる。
これ、よく考えたら子ども用のフルバケットシートだよね。超快適。
唯一の難点は夏場に蒸れる。
連休ということもあって、普段より長く車に揺られてスーパーに着いた。ただ駐車場はそれほど混んでいなくてラッキー。
少し前まではショッピングカートに乗れていたのだが、対象年齢2歳までということで、こちらは乗車拒否されている。
そういうわけで、はぐれないように母上の傍をテクテクと歩く。
母上が歩き辛くならないように上手くポジショニング。もう慣れたもんよ。母上の視線と買い物パターンと食材から予測すれば……、おっと入れ忘れですか。戻ります。
さて、今日の試食は何だろう。
定番のハム、ソーセージ系の肉か。はたまたちょっとしたデザート的なやつか。なんならジュースかもしれない。
「はい、マコトくん。今日はヨーグルトだよ~」
「ありがとうございます」
「マコトくんはお礼が言えて偉いね~」
試食のおばちゃんに顔を覚えられてしまっている。
そんなに食い意地張ってるかな。……しかしこのヨーグルト美味しいね。
「おいしかった」
「ありがと~。感想とかある?」
「……ツンとしないから食べやすい」
「そっかそっか。ありがとね~」
試食のおばちゃんはそう言うと、一拍おいて声を張り上げる。
「――――ヨーグルトはいかがですか~~! 酸味が抑えられていて、お子さんも食べやすいヨーグルトはいかが――――」
なんというか逞しいよね。ここまで明確にダシに使われるといっそすがすがしい。
もう一つ試食をもらって、僕は完全に見世物化してる。黙々とスプーンを口にする僕は良い宣伝になるのだろうか。スズカの方が良くない? 殺到するんじゃない?
「はいこれお礼。いつもありがとね~」
「いえ、こちらこそいつもありがとうございます~」
母上がヨーグルトを受け取りかごに入れる。こっそり値引きシールを付けてもらって。
そんなことしてしまっていいのか? このおばちゃんここではそれなりに偉い人らしいけど。
こちらとしては嬉しいので拒否することはないが。うん、労働には対価が必要だもんね。次も試食来ます。
他の客も集まってきたのでそそくさと退散。
前世ではいつの間にかネット通販に頼るようになっていたから、改めてスーパーマーケットに来ると面白いんだよね。
試食もそうだけど、食材の配置とか旬の食材が何かとか、面白いポップとか。
買い物から帰ってきたら親子でスキンシップ。
歩き疲れた母上の足をうんしょうんしょとマッサージ。……触りたいだけじゃないですよ? 感謝の方が圧倒的に大きいですからね。
そして今日の晩御飯は手作り手巻き寿司。
母上が熱いお米に寿司酢を入れてかき混ぜる。その間、僕は母上をうちわであおぐ。
母上がかき混ぜ終えると、今度は酢飯をあおぐ。うん、良い感じにつやつやになってきた。
具材の準備もできたようで、いつもより少し早めの晩御飯。
僕でも包めるようにと小さめに切られた海苔に酢飯と具材を乗せていく。
酢飯を乗せすぎて上手く巻けないというベタなのはやらない。何年生きてると思ってるん?
酢飯の上にきゅうりとレタスとサーモンを乗せて、ちょっとだけマヨネーズをつけてくるくると。
これは会心のできではなかろうか。綺麗な円錐。
「おかーさん、あーん」
「? あーん、…………うん、おいしいね!」
そして食べさせ合い。手巻き寿司パーティー楽しい。
「まーくん包むの上手だね? 将来はお寿司屋さんかな?」
「かんがえとく」
母上、たぶん寿司屋はこんな巻き方しない。まぁ冗談半分に言ってるだけだしね。頭の片隅に置いておくとしよう。
夕食後は母上の片づけを待ってから一緒にお風呂。
そして現在、ぬるめのお湯に浸かっている。母上の膝の上に座って後ろからハグ状態で。
「まーくん、今日は楽しかった?」
「うん、楽しかった。おかーさんは?」
「おかあさんも楽しかったよ」
そう言って僕をギュッと抱きしめてくれる。
湯の温もりと合わさって非常に心地好い。極楽だね。
風呂から上がって母上と一緒にテレビを見ていると、そろそろ眠くなってきた。
母上を手伝いながら布団を敷く。
「明日はどこか行きたい?」
母上が寝る間際に聞いてくる。戸塚家は明日の夜に帰ってくる予定なので、明日もまた母上と二人っきりだ。
「うーん……。…………おかーさんが行きたいところ」
「…………」
すまない母上。母上としては連れて行ってあげたい気持ちがあるのだろうが、本当に思いつかない。GWって外混んでるし。
そういうわけで明日も家でまったり遊ぶことになりそうだ。
そろそろマイボールとマイシューズと小手?が欲しいんだけど。あれさえあれば僕でも……。
読んでいただきありがとうございます。
次回⇒戸塚家帰宅して…
執筆スピード上げるにはどうしたら…。