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#018 寝顔

 お腹が空いてきた。


 というわけで給食の時間。

 それぞれ園児たちが自前のランチョンマットを机の上に広げる。


 お気に入りのキャラクターや乗り物のイラストが描かれたものが圧倒的に多いだろうか。


 僕は他の男の子たちと被る気配のない濃紺ベースのチェック柄。

 母上たちと一緒に買いに行ったけど、キャラクターものを買うという発想がなかった。


 隣に座るスズカは、シンプルな淡いピンクのチェック柄のランチョンマットを広げる。僕の色違い。

 スズカは何かと選ぶものが僕に似て、シンプルなやつが多い。

 ミオさんにキャラクターものを勧められても、僕の選んだものを確認しに来て合わせようとする。

 ふへっ……。


 しほちゃんはキャラクターもの。あの超有名な白い二足歩行の子猫のやつが、色んな表情でたくさん画かれたランチョンマットだ。


 そこへ先生方がお皿を置いてく。そして年少さんはまだワンプレートを使う。学年が上がっていくにつれて普通のお皿に徐々になっていくとのこと。


「「「いたーだきます!」」」


 先生の挨拶に、園児たちが元気よく続く。


 ちなみに右手にスズカ、左手にしほちゃんが座っている。

 いつの間にか両サイドが固められてる。隅っこの席はあれ(入園式)から座らせてもらえない。落ち着かない。


 両サイドの二人は黙々と給食を食べる。

 おしゃべりとかしないのね? まぁそのおかげでか食べこぼしとか比較的少ないんだけどね。二人とも手のかからない良い子なことで。


 小動物のように二人とも口をもぐもぐする。

 ……見てないで僕も食べねば。


 スズカはすでに箸を使える。たまにミスって箸がクロスするときがあるが、おおむね問題ないだろう。

 ミニトマトをツルっとしたりとかは大人でもやるしね。

 僕とミオさんの英才教育……というかスズカが真似したがって幼稚園前にほぼマスターしている。


 反対にしほちゃん。まだ上手く持てないようで握るように持っている。

 だが、僕とスズカを見ながら徐々に頑張っている。

 箸の持ち方に戸惑っているときは、ちゃんと正しい持ち方を教えてあげる。この指はここだよ、と……。




――おっとスズカさん。


 なぜ箸の持ち方を握る形に変えるので?

 そしてなぜ僕の方に手を持ってくる?


「……」


 教えて欲しいと?

 さっきまで問題なかったよね?


「……」


 スズカが目を見て無言で訴えて来る。し、しょうがない娘だね。


 しほちゃんにやったのと同じように、スズカの小さな手を持ち指の位置をずらしていく。


「………………むふぅ」


 満足されたようでなにより。






 給食が終われば次はお昼寝。

 ちゃんとお昼寝の時間がある幼稚園なんて珍しいよね。

 でも年中からはなくなってしまうんだけどね。ずっと年少でいたい……。スズカの寝顔をずっと……。


 園児サイズの布団が所せましと敷かれているのだが、やはりというか両サイドはいつもの二人。


 一回試しに隅っこの布団に寝っ転がったのだが、「まーくんどいて」とスズカとしほちゃんの二人がかりで転がされて移動させられた。

 ちょっと楽しかったと思ったのはここだけの秘密。


 ときどき隅っこに陣取って転がされるのを楽しみにしようと思ったのだが、他の子たちも真似しだして寝ない子が続出したので自粛。



 そして――


 右を見ればスズカの寝顔。


 左をみればしほちゃんの寝顔。


 すやすやと無邪気に眠っている。


 なんと平和な時間なんだ……。

 こんな時間に寝てるなんてもったいないよね? 二人の寝顔をじっくりと……。くっ、でも脳が眠気を訴えてくる。……すぅ。











 起きた。


 なんだかやけに半身が暖かいと思ったら、スズカが抱き着いてきてる。


「…………むふぅ」


 一気に目が覚めた。

 寝ながら抱き着くスズカの頭を撫でながら、残りの昼寝の時間を堪能する。


 あぁ、癒される……。




 時間が来たら先生方が声を張って子どもたちを起こしていく。

 すでに起きて遊んでる子たちもいるけどね。その声に反応してつられて起きちゃう子もいて、ちゃんと時間まで寝てる子は半分くらい。


 僕も断腸の思いでスズカの肩を揺らす。と、その前にスズカのほっぺをムニムニ。か、可愛い……!


「おはよ、すーちゃん」

「むぅ。……? ……まーくん、おはよ」


 スズカは僕の顔を確認すると、にへらぁと相好を崩す。

 寝起きは淑女の教えを忘れてしまうんだね。いいと思うよ。


 そしてもう一人の方を。


「しほちゃんも起きて」

「うぅん……。すぅ……」


 しほちゃんは寝起きが弱い。

 肩をゆすって目を開けはするのだが、その後また夢の世界へ。


 寝顔は可愛らしいけど、そろそろ起きようね。

 というわけで、スズカ、ゴー!


「ゆけッ。すーちゃん」

「……おー」


 抑揚のない命令と応答で、スズカがしほちゃんに転がり攻撃。

 僕はその攻撃に巻き込まれないように退避済み。


 幼女がくんずほぐれつ。


 すまない、言葉を間違えた。え? 嫌いじゃない? いろいろと大丈夫か?


 寝ぼけまなこなしほちゃんの身体をペシペシとスズカが優しく叩く。


「……おきて」

「……うぅん」


 むずりながらもしほちゃんが上体を起こす。


「すーちゃん、まーくん、おはよ~」

「おはよ、しほちゃん」

「……おはよ」




 そしていつもの僕を挟んだ見つめあい。


 今回は僕の脇の下から顔を出すスズカ。

 ちょっとくすぐったいんだけど、あんまりにも可愛いから我慢するよね。


読んでいただきありがとうございます。


次回⇒#019(サブタイ未定) 2020/10/25 18:00更新予定


幼稚園児の話を考えるって難しいですね。記憶にないですから…。

なのでここ最近、幼稚園のホームページを見る回数がやけに多く…。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『表情豊か』な、超有名な白い二足歩行の子猫? 女の子もののキャラクターは詳しくないので、まれにウィンクする以外表情が変わらない 赤いリボンを着けた白い子猫しか思い浮かばない……… o…
[良い点] なんと言うか、こう、穏やかな気持ちなります(笑 [一言] 二足歩行の子猫……あぁ、コラボ相手と言うか、仕事を選ばない事で有名な子猫さんですね(笑
[良い点] 「ここ最近、幼稚園のホームページを見る回数がやけに多く…。」 ちょっと危ない人みたいw
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