71.女子高生(おっさん)の教育②
〈自室〉
えちを振り撒く地下ドルのキラちゃんを部屋に招き、俺は指導を開始する。
「キラちゃん、ちょっとその太ももで私の顔を挟んでみて」
「えっ!? し……師匠を…………わかりました」
恥ずかしそうにしながらも、キラちゃんは言われた通りにベッドに寝そべった俺の頭上から、むちむちの太ももを、優しく包み込むようにして頬から挟む。
まるで柔らかクッションに顔から埋まったような幸福感に誘われた。少し顔を上へ向ければ、そこはもう禁断のデルタゾーン。
だが、賢者タイム中の俺は極めて冷静に言った。
「キラちゃん、処女でしょ?」
「──っ!!? なっ……なんでですかっ!? ままままさかそんなななわけっ……」
キラちゃんは『どどどど童貞ちゃうわ!』のように分かりやすく慌てふためいた。フットサルの時から匂いで感じていた。この娘は見た目はえちで男達に愛想を振り撒いているが、未経験者だ──と。
狼狽しているキラちゃんに構わず追従する。
「キラちゃん、男達を手玉にしてファンを増やす手っ取り早い方法は……『ギャップ』だよ」
「ギャ……ギャップ……?」
この時代ではまだ概念化してはいないが処女ビ○チ、ツンデレやクーデレ、オラニャン……それらが用語事典に記載されるほどに人気を博したのは全て『ギャップ』が人々の心に強く衝撃を与えたからだ。
普段は冷たいのに二人きりだと甘い、不良が捨て猫を助ける、アホに見えるのに戦うと超強い──等。いつの時代でもそんなキャラクターは根強い支持を勝ち取る、映画ジャイ○ンの法則だ。
畳み掛けるように、俺は色々質問をぶつけることにした。
「話を戻すよ? キラちゃんが普段からぶりっ子っぽい仕草をしてたのはキャラ造り?」
「──っ……はい……事務所からアドバイスで『えっちな格好して媚びた方が売れる』って……だから……」
「つまり仕方なくやってたんだね、恥ずかしかった?」
「………は……はい……けどあたしは昔からアイドルになりたかったから……それで売れるなら……って……」
「みんなの反応は?」
「……そんなに……ファンはできたけど……みんなえっちな眼でしか見てくれなくて……」
「そっか、でも頑張ってきたんだよね」
確かに事務所の戦略は一部理解できなくもない。だが、肝心のキラちゃんがそれに順応しすぎていてこれではただのエロい女子高生。
この時代──これからやってくるアイドル戦国時代ではとても生き残れないだろう。ここは一つ、争乱の世を見てきた者としてアドバイスしてあげた方がいい。
何故か当のキラちゃんは呼吸が荒い。俺の顔を挟んだ太ももはほんのり湿り、たわわに実る胸から覗かせた顔は火照っていて瞳はトロンとしていた。
「師匠ぅ……あたし……言った通り経験ないからぁ……優しくしてくださぃ……」
「なにが!? なんで発情してるの!?」
「……え……? だって師匠……えっちなビデオの本番前みたいな質問してくるから……これから……師匠とあたしでするんですよね……?」
「する! いや、違うから! しないよ!」
思い返すと確かにAVみたいな質問してたことを反省する。この娘はどうやら雰囲気とか色々なものに呑まれやすいようだ。
「ギャ……ギャップの話に戻るよ? 今の質問で答えたことをできるだけ布告して。ブログでも雑誌のインタビューでもなんでもいいから。とにかくまずは実は経験なしアピールしていこ、そしたらこれを着てみて」
「え……これは……」
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その後、俺の指示通りに方向転換したキラちゃんはネット界隈でたちまち話題になった。今までエロを全面に押し出していた娘が実は純情で無理していた、という物語がドルオタにクリーンヒットし支持を得たのだ。
極めつけは、俺が自作した『童貞を殺す服』を着たことも相まって一躍、時の人となった。
しかし、仕事が増え忙しくなったはずなのにキラちゃんが俺の元に訪れる回数は何故か増した。