58.女子高生(おっさん)の悩みⅡ
〈校庭〉
「はぁ……」
グラウンドにて体育座りでため息を吐く。現在、体育の授業中……男子はサッカー、女子は別修でマラソンをしていたが早くに終了したために皆で男子の応援見学だ。
「どしたのさアシュナっち、元気ないじゃん」
「アアアアシュナちゃんっ、ななな悩み事!?」
ミクミクとエナの幼なじみコンビが俺の様子がなにか変だと察したのか両隣に座る。と、同時にサッカーしてる男子達と一部女子の元から歓声が聞こえた。
《スゲー! 天馬4点目じゃん!》
《天馬くーんっ!! こっち向いてーっ!!》
どうやらさっきから独壇場の鳳凰がゴールを決めたようだ、鳳凰は歓声に応えはせず……明らかに俺だけを注視してなんかドヤ顔している。
「あれだよ……悩みの原因……」
「あー……、アシュナっちずっと付きまとわれてっかんね。でもさーアシュナっち──成績優秀でスポーツ万能でイケメンで金持ちなんて超優良物件なんだから試しに付き合ってみればいーのに。意外と相性良いかもよ?」
「ミクちゃん本気で言ってるの!? アシュナちゃん自体が優良物件を飛び越えて大豪邸物件なのに付き合うわけないよっ!」
大豪邸物件ってなんなのと思いつつ、エナの言う通りで付き合えるわけがない。どれだけいい男だろうと、チ○コを持つ生態におっさんの俺が恋心を抱くわけがないのだ。百万歩譲っても男の娘が限界である。
「んー、じゃあはっきり断っちゃいなよ」
「何度もはっきり断ってるよ? けど聞く耳持たないっていうか……」
鳳凰以外に、これまで俺は男達に告白されてきた。けど一度断れば大抵諦めていった。それは最初から玉砕覚悟であったり、しつこくして俺に嫌われたくなかったりといった理由だと思うんだけど……だからこんなにもしつこくされた事はなかったのだ。
しかし、悩みの理由はそれではない。そして、それこそが悩みの理由でもあった。
(早くなんとかしないと……)
焦燥感を抱いていると、エナが妙案を思いついた。
「アシュナちゃんっ! じゃあこの前の合コンみたいにしたらいいんじゃないかなっ!?」
「あー、ね! おっさんっぽいとこ見せて幻滅させるやつやればぃんじゃね!?」
「──それだっ!」
鳳凰の家はとんでもない金持ち、それ故に、結婚相手にはそれなりの『美しさ』『清廉さ』『厳格さ』などを求めるしきたりがあるに違いない。(※偏見)
そんな家柄にそぐわない系女子だってわからせてあげればいいのだ。
「鳳凰天馬っ……くんっ! お……私とデートして!」
「勿論だっ! 俺も言おうと思っていた!!」
思い立ち、たまらず皆の前で叫んでいた。鳳凰は速攻で返事する。
その後──誤解されないよう、鳳凰以外に事情を説明して……休日に作戦は決行される事になった。