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52.女子高生(おっさん)の小説家デビュー Ⅱ-②


〈英傑出版社 7F 編集長オフィス〉


「初めまして、アタシが編集長の【(にのまえ)二三四(ふみよ)】よ~。よろしくね、波澄センセっ♪ んーCHUっ」


 俺の緊張を返してほしいと言いたくなる程に、編集長はおネエでフランクだった。(嘘みたいにカッコ良い名前的には元は女性……? いや、今も心は女性……? 身体つきは男っぽい……だけどおネエ……?)、とキャラの玉手箱に混乱したが、今は全て置いておくことにした。


「ほ、本日はよろしくお願いしますっ!」

「そんな緊張しなくていいのよぉ……んもぉヤコウちゃん、もっと緊張ほぐしておいてくれなきゃあ……」

「す、すみません……波澄先生、にのまえ編集長はフランクにしてほしいと仰っています」

「そうーー作家と編集は家族のようなものよ。アタシはみんなを家族だと思っている……家族に気なんか使わなくていいの」

「は……はぁ……」


 もっと殺伐としているかと思っていた俺のイメージは一気に崩れる。無論、良い意味ではあるんだけど……『社員みんな家族みたいなアットホームな会社です』という謳い文句を一切信用してない俺の緊張はまだほぐれない。


「それでね……アシュナちゃん。いえ、波澄先生……アナタの小説ーーとても気にいったわ。キャラクター、ストーリー、構成、世界観……これが処女作とは思えないほどに完成されているわ」

「は……はい、ありがとうございます!」


 前世の記憶から持ち込んだものなので、実質的には処女作ではないんだけど……説明しようがないのでとりあえずお礼を言った。


「ただ、今の世相にはそぐわない……とでも言うべきかしら……簡単に言うと斬新すぎるのがネックね。今すぐにこれを世に出しても受け入れられない可能性がある……人はーー特に日本人は前を誰かが歩かないと中々に未踏の地に踏み込めない性質があるのよ」


 にのまえ編集長は的確な点を指摘した。

 オファーを受けた小説のジャンルはこの時代にはまだ流行のしていない『異世界転生もの』。ネット小説すらまだ一般的ではない時代……編集長の懸念は頷ける。


「けど、アタシは常に先駆者でありたい……そんなアタシの直感が告げたわ。アナタの小説ジャンルが必ず一代ムーブメントを起こす未来が来る。アナタはその先駆けとなるの、そして不安要素をカバーできる『話題性』、いわゆる作品における付加価値ね。アナタはそれをもう持っている……ずばり聞くわね波澄先生。アナタのその『美』を売る気はあるのかを……」


 にのまえ編集長は至って真剣な表情で問う。つまり要約すると、『アイドル売り』をしてもいいか? を確認しているのだろう。

 考えるまでもないその問いに、俺は二つ返事で答えた。


「ーー勿論です」

「ふふ、わかった。改めてようこそ我が家へ、勝利は約束されたわ」


 編集長はニヤリと笑い、中二病っぽい言い回しでそれに応える。だけど中二っぽく感じず……むしろカッコ良く思える、おネエってお得だなって思った。


                    〈続く〉


 

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