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49.女子高生(おっさん)のタイムリープ問題-②


「るれれ~……おい! 邪魔だどけコラっ!!」


 怒号が車内に響き、周囲は騒然となる。酔っ払いが辺り構わず喚き散らしているのだ。

 それほどに混雑しているわけではないので、立っている乗客は酔っ払いを避け、座っている人達は顔を背けた。酔っ払いはふらふらとあちこちにもつれて歩きながらこちらへ向かってくる。


 と、そこで俺はようやく現状に気づく。

 もしかして、これ、【電車巫女男(でんシャーマン)】の始まりの出来事で、俺、立ち会っちゃってる? と。

 (うわー、本当に起きたことなんだー)とわくわくしながら伝説の場面を目の当たりにする高揚感を抑えきれない。


(このあと、酔っ払いは巫女さんに絡み始めて……そこにサラリーマンオタクが助けに入るんだ……その葛藤と振り絞った勇気は見る者を感動させ奮い立たせてーー)


 歴史の一ページに立ち会い、思わず作品へ没入せんとする衝動をなんとか抑えた。

 だが、これが【電車巫女男】の出来事だと知っていて逆に良かったかもしれないーーなにも知らずにいたら、ええ格好しいのおっさんが巫女さんを助けてしまうところだった。

 そうなると間違いなく歴史改変、おっさんと巫女さんのラブストーリーが始まってしまったかもしれない。正直、こんな可愛い巫女さんとならウェルカムではあるのだが……歴史改変は良くないとおばあちゃんも言っていたことだしね。


(危ない危ない……ここは傍観者に徹しよう。大丈夫巫女さん、ちょっと怖い思いをするかもしれないけど……勇敢なオタク青年が助けてくれるからーー)


「ぉおう~!? すげぇぺっぴんさんがいるじゃねぇかぁ~……おい、ちょっとお酌してくれお酌ぅ~」


 そう言って、酔っ払いは、『俺』に絡んできた。


(ーー!?!? 俺っ!? こっち!? ……何度間違えれば気が済むんだそうだおっさんは今絶賛美少女中でした!!)


 これはまずい、と思い……咄嗟に下を向く。いざとなれば酔っ払い中年くらい撃退できるけど、それをやるとオタクと巫女さんのラブストーリーが始まらない。


「ーーおっ!! おいやめりょっ!! こここ怖がってるだろぉっ!!」

「そっ、そうですよ!! こんな可愛い女の子を怖がらせて……迷惑ですっ!!」

 

 勇敢なオタク青年は、勇気を振り絞り、噛みまみたって感じで『俺』を助けようとしてくれる。それどころか、助けられるべき巫女さんまでもが俺を庇うようにして立ち塞がった。


(違う違うっ!! オタク青年!! その勇気は素晴らしいけど助けるべきは俺じゃないっ!! となりの巫女さんもっ! 君は助けられる側だから動かなくていいのっ! でもありがとねっ!!)


 歴史が変わろうとしていた。

     

                    〈続く〉

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