26.女子高生(おっさん)vsDQN-⑤
さすがに三人の男子に押さえつけられた巽は為す術もなく、喚き散らす事しかできないようだった。
「てめぇらっ……!! こんな事してタダで済むと思うなよっ……!!? 俺様に怯えてたからっててめぇらもやった事は同罪だろうがっ……!!」
「んなもん百も承知だ、俺らはマサオとアシュナちゃんをイジメてた事実を全部打ち明けて自首する。停学だろうが退学だろうが受け入れてやらぁ」
(……そうか、今はまだ高一……こいつらのイジメの対象だったのはまだマサオと俺だけだったんだ)
前世での高校三年間の生活で標的になった人達はまだ被害を受けていない……つまりは、未来のイジメを未然に防げたのだ。それを知ってるのは俺だけだけど。
取り巻き達はバツが悪そうにこちらを見て言った。
「そ、そーいうわけだからよ……今まで悪かったな……これからは真っ当に生きるからよ……だから」
「いや、許さないけど」
「「「!?」」」
まぁ、それはそれとして俺は前世で三年間イジメを受けてたわけだから簡単には許さないけど、ね。
「そもそも……物にイタズラとかされただけでそんなに接してないよね私達……なのに惚れたって……」
「ア……アシュナちゃんの内履きとか教科書とかたまらなくいい匂いがしてよっ……嗅いでたらどんどん好きになっちまって……!」
最低だこいつら、馬鹿じゃないのか。そんな事を面と向かって言われてどうすればいいんだ。
すると再度、巽が騒ぎ出した。
「ふざけやがって……っ!! 俺様の親父が誰か忘れてんのかっ!!? 県議会議員だぞ!! 親父はこの高校の理事長とも懇意にしてるからこんなのすぐに揉み消して……っ!」
「馬鹿息子が。話は聞いているぞ」
突然、倉庫の扉が開き、ある人物が姿を現す。
俺が休日に出会った人物ーー【巽ミツダ】、話の渦中にいた県議会議員でありタツミチの実父だ。
「アシュナ君、どうやらキミの言った通りだったようだな……済まない……愚息が迷惑をかけた。この件はこちらで預かろう、キミは今まで通り学校生活を送ってほしい。息子は退学とし、厳重な処罰を与え更正させる。どうか許してほしい……」
ミツダさんはタツミチの頭を床に叩きつけ、自らも俺に頭を下げた。
『将を射んと欲すれば、先ず馬から』
親の権力の後ろ盾を振り翳すタツミチを叩くならばまずは親を懐柔させるのが俺の最優先事項だった、そして俺は前日に巽家に出向いてミツダさんに接触してイジメの事実を告げていた。
ミツダさんは親としても人としても至極まともな人物であり、俺の話を聞いてくれた。どうやら息子の素行には気づいていなかったようで作戦の話をしたら直ぐに確かめに来てくれた、という訳だった。
「謝るなら、まずはそこにいる彼からにしてください」
「……そうだな……マサオ君……だったかな……本当に申し訳ない事をしてしまった。私にできる精一杯の償いを愚息共々させてほしい」
頭を下げる二人にどうしたらいいかわからないといった様子のマサオだったが、俺と目が合うとにっこりと微笑んだ。ようやくマサオも普通の高校生活を送れそうだ、と俺も胸を撫で下ろす。
変わったーーいや、変えた未来がこれからどうなるかはわからないけど……きっとこの美少女なら大丈夫だろう。
だって、色々とチョロすぎるもん。
「ところでアシュナ君、私の秘書になる気はないかな? キミのような清廉且つ容姿端麗、品行方正な秘書が欲しかったのだよ。どうだろう、アルバイトでも時給10万ほど出せるが」
いや、本当、チョロすぎるでしょ。
〈第1部『女子高生のいともたやすく行われる日常生活と復讐』 終わり〉